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モテない奥手な男のホワイトデーしどろもどろ告白「だって好きだから」


貰ってしまった。
義理チョコを。

義理、チョコを。

でも、義理チョコだって、チョコはチョコだ。

そうだ、僕はチョコを貰ったんだ。

たかが義理チョコなのに始終顔がニヤけてしまい、僕が彼女に想いを寄せていると知っている友人は僕を小突いてからかった。

友人も僕と全く同じチョコをその彼女から貰っていた。

それだっていいんだ。

僕は、実にひっそりと彼女に想いを寄せているだけなんだから。

特に何かアプローチするわけでもなく、告白する勇気もなく、ただ好きという気持ちを大切に胸の中で転がしているだけで幸せだった。

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ホワイトデーには何をお返ししよう。

彼女の喜ぶ顔が見たい。たかが義理チョコだけれど、それ以上のお返しをプレゼントしたい、そんな熱意を燃やした。

「義理チョコのお返しが本気だったらキモイとか思われるかなぁ」
真剣な顔で友人に尋ねると、「うん、相当キモイね」とバッサリ切られた。

「っていうかさ、そんなに好きなら告っちゃえばいいじゃん、いっそ。そうすればどんな豪華なお返しでもキモイとは思われないだろうよ」
友人は冷静にそう突っ込む。

そんな簡単に言うけど、だったらとっくに告白のひとつもしていたよ、と僕は反論した。

僕はどうも自分に自信がもてず、特に好きな彼女を前にすると手も足も出せなくなり、あがってしまって何も喋れなくなる始末だった。

本当はすぐにでもこの想いを伝えたいくらいほとばしっているのに、いざとなると、足がすくんで口をつぐんでしまうのだった。

それでも、いつかはこの気持ちを伝えないと、僕は後悔すると思っていたし、きっと彼女の方から僕を好きになってくれるようなことはないだろうから、タイミングをはかって、いつか僕から告白しなければならないという自覚はあった。

このまま諦めるか、「あたって砕けろ」を選ぶかと言われたら、あたって砕け散るのは怖いが、何もせずに尻尾を巻いて逃げ出すよりは、後悔は残らないだろう。

そういうわけで、僕は告白するタイミングを探っていた。

ホワイトデーというタイミングは、確かに良い機会である事に間違いなさそうだった。

しかし、友人が軽いノリで提案してきた「告白しちゃえば」という勧めに、僕はホイホイと乗るほど楽観的な人間ではなかった。

僕はしかし、他の友人たちにも彼女に告白すべきかどうか、そしてホワイトデーのプレゼントに何を渡したら良いか相談する事にした。

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男性のノリが軽い友人は口をそろえて「告白しちゃえよ!」と言い、プレゼントは高級なブランドもののバッグか財布か、そのあたりで良いんじゃないか、という意見だった。ノリだけで生きているような奴は「いきなり婚約指輪とかで良いんじゃね?」などと言いだしたので、それはストーカーと思われるからやめろよ、となだめておいた。

女性の友人たちも、告白した方が良いという意見は同じだった。僕が奥手なのをよく知っているため「きっかけがないと告白できないタイプでしょ」と全てお見通しのような口調で言われた時には図星すぎて女性は怖いなぁと思ってしまった。

プレゼントは男性たちとは違い「変にブランドもので釣ろうとするのはよくない。彼女のことを想って、あまり背伸びしない範囲で選んだら良いよ」という事だった。親切な友人は、具体的に彼女が今何に興味があって、何が好きで、どんなものを欲しいと言っていた、などの情報を教えてくれたりもした。

男女問わず、この機会に告白してしまえ、という勧めがほとんどだったにも関らず、僕はなかなか決心がつかなかった。振られるのが怖いというか、それを通り越して嫌われたり、気まずい関係になって避けられたりするのが怖かった。

そう、彼女との関係を壊してしまうくらいなら、まだ告白したりしないで、しばらくは平和で良好な、当たり障りのない関係性を保ったまま、自分の胸の中だけで幸せを噛み締めていたかった。

自分は臆病なだけなのか、勇気が持てないだけなのか、そう自問しながらも、どうしても「告白するぞ!」という気持ちになれず、悩んでいた。

お返しのプレゼントは、女性の友人たちからの助言のおかげで、探すのにさほど難航はしなかった。

まずチョコレートのお返しとして、焼き菓子の小さなギフトセットを用意して、あまり仰々しくならないように彼女の好きなキャラクターを用いた文房具を添えることにした。

いきなり高価なものをプレゼントするのはやめたほうが良いという意見も多かったので、参考になった。

絶対に、何が何でも告白するという強い意気込みがあれば別だけど、という意見もあったが、いずれにせよ彼女にその気が無い場合はただの「重い男」になってしまうし、上手くいったら、付き合ってからそういう高価なプレゼントをしたらよろしい、というところに着地した。

無事お返しのプレゼントは決まり、用意もできたので、そこは一安心だったが、僕はまだ告白するかどうするか迷っていた。

色々と情報を収集したり、友人に相談する中で、なんとなく決め手になるような話を聞く事ができた。

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それは、自分が告白するかどうかで悩んでいるだけでなくて、相手が自分か、もしくは自分に限らず誰かに告白された場合にどのような反応をするか予想すれば、「今はしない方が良い」とか「こういうタイミングは避けた方が良い」など、告白するタイミングやチャンスが分かってくるというのだ。

彼女はどうだろうか。

確かに僕は、僕が振られたら、とか、僕が嫌われたら、とか、自分の事しか考えていなかったような気がする。

彼女は、突然僕みたいな奴に告白されたらどんな気持ちになって、どういう反応をするだろう。

誰かに好意を持たれるというのは、決して嫌な気分にはならないはずだ。それが、自分が嫌悪感を抱いている相手でなければ。

その点彼女は僕に義理チョコをくれたし、嫌々、しぶしぶ、付き合いだから、という雰囲気で渡してくれたわけでもなさそうだった。

僕と話している時にも、僕に対してマイナスの感情を抱いているとは思えなかった。

僕はわりと人の目を気にする方だから、なんとなく「この人に自分はあまり好かれていないらしい」というのは察する事ができた。

一応彼女からそのような態度や雰囲気は感じ取れず、僕とも楽しそうに話してくれるところを見ると、おそらく突然僕に告白されても嫌とは想わないだろう。

そして彼女の性格も考えた。

彼女はいつも明るく、ニコニコ笑う子だった。

表裏が無く、誰にでも親切だった。

別にストーカーというわけではなく、たまたま駅で彼女を見かけて、つい彼女の方に視線を送ってしまったことが何度かあったが、回りに誰も知人がいなくても、彼女は彼女だった。

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ある時、白い杖をついた目の見えない方の補助を自ら進んで自然に実行している彼女の姿を見て、それで僕は彼女に恋をした。

なんて優しい良い子だろう。

そう思った。

素の自分になって豹変する人間もいる中で、彼女は本当に、根っからの「良い子」だった。

誰の目を気にするでもなく、彼女は常に自分というものを持っていて、その自分は決してぶれることはなく、優しさと温かさで溢れていた。

そんな温かい彼女の心を知って、僕は彼女を尊敬するとともに、好きになったんだ。

義理チョコを配る彼女も、渡す相手みんなに笑顔を向けて、しかもひと言ひと言きちんと目を見て声をかけて、チョコレートを渡していた。

きっと、彼女ならば、僕から突然好きだと言われても、ひどい反応は返さないだろう。

振られたとしても、きっと「気持ちは嬉しいけど・・・」と、やんわりと気を遣って振ってくれるだろう。

そしてその後もなるべく気まずくならないように彼女なりのやり方で僕に接してくれるだろう。

だから、僕は彼女に惚れたのだし、そんな彼女に告白する事を恐れる必要はないはずだった。

言うか、言わないか。

伝えるか、伝えないか。

それが問題だった。

そうこうしているうちに、ホワイトデーは目前まで迫っていた。

ただお返しを渡すだけならば、皆の目がある前でポンと渡せば良いだけの事で、呼び出すほどのものではない。

しかし、告白するとなると、気軽にチョイチョイと手招いて「好きです」などと言うわけにはいくまい。

それなりに、きちんとしたシチュエーションを作らないと。

そういう意味でも僕は自分の心が決まらずにやきもきしていた。

不甲斐ないなぁと自らを嘲笑しながら、どうしても勇気の出ない自分を呪った。

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心が決まらないまま迎えてしまったホワイトデー当日、僕は結局彼女に事前に約束を取り付ける事ができなかった。

友人たちからは「あーあ」などと言われ、「もうこのチャンスを逃したらきっとこのまま儚く終わりゆくんだろうな・・・」と嘆かれもした。

そんな事言われたって仕方ない。結局ダメなものはダメだったんだ。

僕は自分を情けなく思いながらも、普通に彼女にお返しのプレゼントを渡すことにした。

仕事が終わると、社内は一気に「お返し」モードになる。

男性社員たちがこぞって自分が持ってきた「お返し」を女性社員たちに配って歩く。

女性社員たちはキャッキャとはしゃぎながら男性からお返しをもらって嬉しそうに笑う。

僕の視界には、そんな女性社員たちに混ざって笑顔を零す彼女の姿が映っていた。

僕も結局は彼女の笑顔の一端を担う「お返しをくれた男性社員のひとり」になっちまうんだな・・・
そんな風にアンニュイな気分になりながら、ふっと悲しい笑みを零して、僕は彼女のもとへ足を運んだ。

「バレンタインのチョコレート、ありがとう」
そう言ってプレゼントの包みを渡す。

「わぁ!ありがとうございます!」
彼女はそう言ってとびきりの笑顔を僕に向けた。

ああ、もうこれで十分だ。

僕はとても満足な気持ちになった。

彼女の笑顔が僕に向けられた。それだけで、僕はただただ幸せだった。

結局何も伝えられずに僕のホワイトデーは幕を閉じるのか。

そう思いながら帰途についたら、背後から名前を呼ばれた。僕の名前を呼んだその声は、信じられないような、しかし夢にまで見た彼女のものだった。

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「おつかれさまです!たまたま!駅までご一緒しましょう」
彼女はニコッと笑って隣に並んだ。

そして「さっき、チラッといただいたもの、開けさせていただいたんですが、まさかお菓子だけじゃなくて、あんな可愛いステーショナリーまで入ってたなんて、ビックリしました!」と言った。

彼女が喜んでくれた!

僕は舞い上がった。

「私があのキャラクター好きだってご存知だったんですねー!まぁ、デスク回り見ればバレバレ、か」
そう言ってふふっと笑って「ちゃんと見てくれてるんだなーと思って嬉しかったです」と続けた。

このひと言で僕が完全にやられてしまったのは言うまでもない。

「だって好きだから」

意図せず、言葉が勝手に口からこぼれた。

「え?」
彼女が聞き返す。

そこでハッと我に返り、慌てながらも、言ってしまったものはしょうがないと腹を括って、告白した。

「ずっと好きでした。だから、喜んでもらいたくて。良ければ付き合ってほしいけれど、なんていうか、ただ、好きって伝えたかっただけだから、その・・・」

全然かっこよくないなぁ、と自覚しながらも必死にそこまで伝えると、彼女の方から「ありがとう」と遮られた。

「ええと、なんていうか、とても嬉しいです。でも、私は、その、今誰かが好きとか、そういうのが無くて、ちょっとだけ時間をもらっても良いかな。考えてみる」

振られることばかり考えていた僕には勿体ないくらいの返答に、僕は、信じられないような目で彼女を見た。

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「いつまで待ってくれる?」
彼女はちょっと上目遣いで僕を見て聞いた。

「そんなのは、いつまでも。だって俺はずっと好きだから。ずっと待ってるよ」
そう答えたら彼女はニコリと笑って「ありがとう」と言ってから「1ヶ月以内には、かな」と少し考えながらつぶやいた。

「でも、私たち、よく考えてみたら2人で食事とか行ったりしたことないよね?そこから始めても良いですか?」
彼女からの提案を僕が断る理由がなかった。

それから僕たちは2人で食事に行ったり、休日出かけたりした。

2人の距離はどんどん近くなり、少なくとも僕は、彼女のことをますます好きになった。

1ヶ月と少し経ち、僕は改めて彼女に告白した。

今度はきちんと、落ち着いて、付き合ってほしいという事を伝えた。

彼女からの返事は「こちらこそ、よろしくお願いします」というものだった。

1ヶ月間の間に「この人と付き合ったら楽しそうだな」と思ってくれたというのだ。

僕は盛大にガッツポーズを決めて、彼女はそんな僕を見てあははと笑顔の花を咲かせた。

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