恋愛小説

私の恋は不良君にささげます~短編恋愛小説


響き渡る声。響き渡る鉄の鈍い音。そして口に広がる血の味、私はひたすら足を振り回した。…昔の、十代の頃の話

(安外勇也)「瀬田、この前の企画書良かった。今回1人でやってみるか?」

(瀬田麻実)「はい、やらせてください」

私、瀬田麻実。雑誌や、CMの広告会社に勤めて3年目、私は主にチラシの広告の仕事をしている。

安外勇也。安外マネージャーは入社の時からお世話になっている上司。言葉遣いは冷たいけれど必要な言葉をくれる。アドバイスもくれる。切れ長の瞳にサラサラの黒髪。私は長い黒髪を後ろで束ねている。

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自分のデスクについた時、

(浮崎絢斗)「瀬田いいなぁ、お前は仕事できて」

(瀬田麻実)「あら、いたの、浮崎くんは営業がむいてるものね」

浮崎絢斗。同期。営業先に行って説得するのが上手いと評判の彼は爽やかで、茶髪に柔らかなパーマ。笑うとたれ目になるのがまた良いらしい。私とは飲み仲間。

(浮崎絢斗)「営業も大変なんだよ、そんなことより今日、飲み行こうぜ」

(瀬田麻実)「また?この前も行ったじゃない…まぁいいけど」

(浮崎絢斗)「じゃぁいつものところで!決まりな!」

そう言って仕事に戻って行った。

退社時間

(浮崎絢斗)「瀬田ー、行くぞう」

(瀬田麻実)「うん」

(飛戸村もみじ)「浮崎さーん!どこか飲みに行くんですか?私も連れてってくださいよー」

(浮崎絢斗)「…」

(瀬田麻実)「浮崎くん?えーと、飛戸村さん、お疲れ様。これから飲みに行くところだったの、良かったら一緒にどう?」

(飛戸村もみじ)「いいんですかー?いきますー」

飛戸村もみじ。後輩。派手なネイルに巻き髪。私は少し苦手なタイプ。でも、どうやら浮崎君のことがお気に入りのよう。…何も言わない浮崎くん。気付いているのだろうか、飛戸村さんの気持ち。

居酒屋

(瀬田麻実)「とりあえずビールでいい?」

(飛戸村もみじ)「私、ビール飲めないんですけどー」

(瀬田麻実)「あ、ごめんね、何飲める?」

(飛戸村もみじ)「カシスオレンジでー」

(浮崎絢斗)「すいませんビール2つにカシオレ1つ」

(店員)「ありがとうございまーす!」

浮崎くんと 向かい合わせに座った私たちにたいして、飛戸村さんは当たり前のように浮崎くんの隣に座った。二人のときは盛り上がる会話も今日は一方的に飛戸村さんが喋ってる。

…正直退屈。

帰ろうかな、でも今帰ったら嫌な感じだよね。

結局、飲み放題の時間まで二人といた。

お店を出て

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(飛戸村もみじ)「浮崎さーん、私酔っちゃいましたー。」

(浮崎絢斗)「はぁ…瀬田、俺、飛戸村さんタクシーで送っていくけど一緒に送ろうか?」

飛戸村さんの腕が浮崎くんの腕に絡み付いていて、私を睨み付けている。うん、見てるんじゃなくて間違いなく、その目は睨み付けている。二人の時間を邪魔するなと言っているかのように。

(瀬田麻実)「大丈夫よ、私はそこまで酔ってないし、明日会社休みだしね。じゃぁ、お疲れ様」

(浮崎絢斗)「…そうか、気を付けて帰れよ」

風が気持ちいい。ちょっと寄り道でもしようか。まだそこまで遅い時間でもないし。…飲み足りない。
コンビニへ寄って缶ビールでも買おうかな。歩いた先にちょうどコンビニがあった。

…止めておこう。

コンビニの前で不良たちがいる。そしてなにかもめている。通りすぎようとした時。1人の男子が不良三人に絡まれているようだった。

(不良男子1)「なぁ、さっきから黙ってないでさ、財布だせよ」

(幸タ)「…」

(不良男子2)「なんだよ!その目は!」

今にも殴りかかりそうな勢い。…面倒なことは避けたいんだけどな。でも、周りは見て見ぬふり。…仕方ない

(瀬田麻実)「ちょっと、探したよ、こんなところにいたのね。ごめんね、この子私の弟なの。これで許してくれる?」

取り敢えず財布から2万を渡す。

(不良男子3)「こいつのお姉さん?美人じゃん!俺らと遊ばない?」

(瀬田麻実)「ごめんね、このあと用事あるの」

じろじろ見られてる、居心地悪い…。でもここはどうにかやり過ごさないと。

(幸タ)「…行くよ」

(瀬田麻実)「え?」

手を引かれ、歩き出した。

(不良男子1)「!おい!逃げんな!」

(幸タ)「面倒くさい…走るよ」

(瀬田麻実)「わっ、」

ぐぃっとスピードが上がった。裏路地を抜けて、公園に着いたところで手がはなれた。

(幸タ)「あんた、何勝手なことしてんの」

(瀬田麻実)「だって困ってたじゃない、違った?」

(幸タ)「確かにあそこで素性ばれるとまずかったから助かったけど」

(瀬田麻実)「…ああ、でもお礼はまだ早いわね。意外としつこい人たち」

不良達の叫び声が近くまで聞こえてきた。そして、バイクの爆音。

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(不良男子1)「いたぞ!」

(幸タ)「…この人数まずいな…」

(瀬田麻実)「私、少なくとも足手まといにはならないと思うわよ」

(幸タ)「どういう意味」

(瀬田麻実)「そのままの意味よ」

むこうは高校生よね、この子も。…昔を思い出す。大丈夫。この人数ならなんとかなる。ヒールを脱ぐ。

(幸タ)「何してんの」

(瀬田麻実)「戦闘モードに入ってるところ。だって逃げ切れないでしょ」

(不良男子2)「男は手加減なしだ!」

(幸タ)「…面倒くさい、…なるべく俺から離れるな」

まっすぐな瞳に私はゆっくりうなずいた。

不良達はバイクからおり、殴りかかってきた。…私をかばいながら相手の拳をかわしてる。この子、強い。でも、流石に三人相手だと無理がある。息切れしてる…。救いなのは向こうも素手なこと…。

(不良男子1)「ラッキー、こんなところにパイプあるし!」

鉄パイプ!!

(瀬田麻実)「危ない!」

とっさに男の子の前に出た。ガッ、右肩に激痛が走る。

(瀬田麻実)「痛っ」

(幸タ)「!なに前にでてんの!大丈夫か?!」

不良が振り上げた鉄パイプは私の右肩に強くあたった。痛い…。痛い。

(瀬田麻実)「痛いじゃない!子供がそんなもの振り回さないでよ!」

不良に向かって回し蹴りをかます。腹部に命中した蹴りで不良は咳き込みうずくまった。

(瀬田麻実)「…君、あとは二人よろしくね」

唖然とする不良二人。

(幸タ)「ああ、そこで休んでて、後で手当てするから」

痛さで意識が遠のく。まともにくらっちゃった…。鈍っちゃったかな。昔だったら…もっと…上手くかわせたのに…。

う…ん。肩冷たくて気持ちいい。

(幸タ)「気づいたか」

(瀬田麻実)「ん、ここは?」

(幸タ)「俺のたまり場、肩冷やしといた」

あ、氷水。

(瀬田麻実)「ありがとう、私意識失っちゃったのね…情けないわ。君は怪我ない?」

(幸タ)「幸タ」

(瀬田麻実)「え?」

(幸タ)「俺の名前、あんたは」

さっきは暗くて気づかなかった。銀色の髪、綺麗な青い瞳…

(瀬田麻実)「麻実よ」

(幸タ)「麻実…あんた、何者。肩見るのに服脱がした。古傷の跡、普通に出来るものじゃない。」

(瀬田麻実)「昔の話よ、今は普通の会社員」


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ベッドの上、気がつけば上はTシャツ。男物だろう、大きい…。

(幸タ)「ところで危機感ないわけ?この状況」

(瀬田麻実)「そうね…取り敢えず下は全部はいてるから襲われてないわね」

(幸タ)「ふ、あんた面白い、怖くないわけ?」

あ、笑うと目尻下がる。こう見るとやっぱり子供ね。

(瀬田麻実)「だって君…幸タ、高校生でしょ?子供は怖くないわ」

(幸タ)「麻実、男をなめるな、今無理やり抱くことだってできる」

真剣な瞳…。

(瀬田麻実)「でも、幸タはそんなことしない。するならとっくにしてるでしょ?ここまで運んでくれて、手当てまでしてくれてありがとう。そろそろ帰るわ」

(幸タ)「仕事か?」

(瀬田麻実)「休みよ」

(幸タ)「じゃぁもう少しここにいろ」

そう言って彼はベッドに腰かけた。さっきまでベッド斜め横のソファーに腰かけていたそこが、妙に広く見えた。

(幸タ)「髪長いな」

意外と大きな手が優しく私の髪に触れ、束ねていた髪をほどいた。

(瀬田麻実)「どうしたの?」

(幸タ)「なんとなく触れたくなった…女の匂いがする」

髪を鼻に近づける。

(瀬田麻実)「ふふ、一応女ですから」

何だかむずがゆい。

(幸タ)「家まで送る」

(瀬田麻実)「大丈夫、タクシーで帰るから」

(幸タ)「送る」

まただ、真っ直ぐな瞳。そらせなくなる。

(瀬田麻実)「じゃぁお願いします。」

…バイクで家まで送ってもらった。

お腹に腕を回したとき久々の人の温もりを感じた。幸タ…。もう会うことはないだろう。少し寂しく感じるのは気のせい。

昼頃、右肩まだ少しズキズキする。…お腹すいた。冷蔵庫に何もない。コンビニ行こうかな。あ、Tシャツ返しそびれちゃったな。

着替えてマンションをでたら

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(瀬田麻実)「どうして…」

(幸タ)「なんとなく」

彼がいた。マンション前にしゃがみこんで。いつからいたの?私が部屋から出なかったらどうしてたの?

(瀬田麻実)「…会いたかった」

…私、何言ってるの。彼は真っ直ぐ私を見つめ、

(幸タ)「俺も」

そう言った。

(瀬田麻実)「いつからいたの」

(幸タ)「送った時から。帰る気にならなかった」

この時期でも送ってくれたあの時間は肌寒かった。

(瀬田麻実)「家上がって、寒かったでしょ」

お風呂を沸かして温かいコーヒーを入れた。

(幸タ)「甘い…」

(瀬田麻実)「あ、ブラックが良かった?私、いつも砂糖とミルク入れてるからついくせで」

(幸タ)「いい、美味い」

(瀬田麻実)「良かった、あ、お風呂お湯たまったから入って、身体冷えてるでしょ?」

(幸タ)「麻実…」

え…

(瀬田麻実)「きゃっ」

急に抱き寄せられたとおもえば、抱えられバスルームへ運ばれた。

(瀬田麻実)「幸タ?」

(幸タ)「一緒に入る」

そう言って服のまま湯ぶねへ私を抱えたまま入った。服が体にはりつく。彼はゆっくりと私の身体に触れ、服を脱がしていった。大きな手に夢中になった。触れられる度に身体が反応した。その時腰の“印”に気づきこう言った。

(幸タ)「イルカ?」

そう、右側の腰の所にイルカのタトゥー。

(瀬田麻実)「暴走族の総長だったの。昔の話ね、もう存在しないけど…イルカ。その時入れたのタトゥー」

(幸タ)「…聞いたことある“回し蹴りのイルカ”麻実のことだったんだな」

(瀬田麻実)「幸タも入ってるんでしょ?もしかして総長?」

(幸タ)「一応、今一番大きい。ブルーアイの総長。だからあの時、コンビニで大事にできなかった。総長が1人でいるのはまずいからな」

(瀬田麻実)「そうだったのね、…ところでいつまでお風呂に入ってるの?」

(幸タ)「もう少し麻実を感じていたい」

お風呂から出て、幸タの服を乾燥機にかけ、二人で布団に入って抱きしめ合って気がつけば眠っていた。

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翌朝
彼は居なかった。

会社

(瀬田麻実)「おはようございます」

(浮崎絢斗)「おう、瀬田おはよ」

(瀬田麻実)「おはよう」

(浮崎絢斗)「話あるんだ、今日空いてる?」

(瀬田麻実)「話?うん、じゃぁ二人で飲みに行こうか」

今日も仕事は順調に進んだ。

退社時間
(浮崎絢斗)「瀬田ー、飲むぞー」

(瀬田麻実)「いつものところよね」

居酒屋

(瀬田麻実)「お疲れ様」

(浮崎絢斗)「お疲れー」

乾杯した。

(瀬田麻実)「ところで話って何?」

すると彼の真剣な瞳が私を映した。

(浮崎絢斗)「瀬田って付き合ってるやついるのか」

(瀬田麻実)「いないわよ」

(浮崎絢斗)「俺じゃ駄目か」

え…。私たちは飲み仲間でしょ?

(瀬田麻実)「飛戸村さんは?」

(浮崎絢斗)「ああ、告白されたけど断った。前からお前が好きだったから。…」

そのあとはお互い無言で食べて飲んだ。

(浮崎絢斗)「タクシーで送る」

(瀬田麻実)「うん」

浮崎くんの気持ちは嬉しい。でも、ときめかない。

マンションに着いた時

(浮崎絢斗)「今日泊めて」

(瀬田麻実)「え…」

(浮崎絢斗)「瀬田を抱きたい」

そう言ってタクシーをおりた。

(瀬田麻実)「ごめん、浮崎くんの気持ちには答えられない」

(浮崎絢斗)「そんなの寝てみないと分からないだろ、優しくするから」

彼は強引に手を引いて私の部屋まで向かおうとしたとき、

(幸タ)「何してんの」

(瀬田麻実)「幸タ…」

(幸タ)「おかえり麻実、その男誰」

(瀬田麻実)「仕事仲間よ」

(幸タ)「そっちはそうは思ってないみたいだけど」

(浮崎絢斗)「男いないって言ってたじゃんか!」

(瀬田麻実)「っ!痛…」

つかまれた手首が痛い。

(幸タ)「まだ麻実の男じゃない、でもお前には渡さない。」

(浮崎絢斗)「瀬田…お前、こいつのこと好きなのか?」

好き?…うん。幸タが好き。

(瀬田麻実)「うん、ごめん…」

(浮崎絢斗)「そっか…乱暴にしてごめん」

そう言って背を向けて歩いていった。

(瀬田麻実)「幸タ…私、幸タのこと好きみたい」

何故か涙がこぼれた。でも嬉しさも込み上げた。笑顔で泣いていた。

(幸タ)「俺も麻実か好き」

そう言って手を引いて強く抱きしめた。


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