結婚・婚活

バレンタインデーのお返し。本命へホワイトデーにサプライズのプロポーズ


寒空が広がる2月の中ごろ、僕は彼女にチョコレートと、それからブランドもののネクタイをもらった。
チョコレートはくれるだろうとは思っていたが、まさかネクタイまでプレゼントされるなど、つゆほども思わず、面食らってしまったが、とても嬉しかった。

「チョコレートは食べたらなくなっちゃうけど、ネクタイなら、ずっと残るものだし、身につけてももらえるし、それに、ほら、何本あっても良いから」
と照れくさそうにはにかみながら、僕に手渡したネクタイには、なんと僕が好きな映画のキャラクターがとても目立たないように隠れていた。

「普段使いができて、好きなもののモチーフが取り込んであって、かつ話題のネタにもなりそうだったから」
と彼女は少し誇らしげにそう言った。

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確かに、彼女が言う通りだった。普段使いするのにも申し分ないシンプルさで、まじまじとよく見て探せば分かるところに密かに身を潜めているキャラクターは、自分だけの秘密を胸に飾っているような気分にしてくれて、それだけで楽しかった。
そして、このキャラクターは、超有名な映画の登場キャラクターなので、話題のネタになるのも容易に想像できた。

会話に詰まった時などに「そういえば、このネクタイ、よく見るとここに・・・」などと相手に見せれば、それだけでツナギの役を果たしてくれるだろう。

僕はこのプレゼントをとても気に入って、愛用するに違いないと確信した。大切にしようとも思った。
そして、同時に、ホワイトデーのお返しに、僕と同じくらい喜んでもらえるようなプレゼントがしたいと考えた。

バレンタインのプレゼントをもらった時は「あと1ヶ月もあるし、余裕で見つかるだろう」と思っていたのだが、1ヶ月というのは、思っているよりもずっとずっと短く、気付けばもう3月の声が聞こえはじめるようになっていた。

まだ何も彼女へのプレゼントが決まっていなかった僕は焦った。

彼女の事は本当に大好きで、そろそろ結婚かなぁ、と思っていた。結婚を真剣に考えるくらい心から愛して、生涯を共に歩もうと思える人は彼女しかいなかった。
そんな大切な彼女だから、本当に喜んでもらいたかったし、大好きな笑顔が見たかった。

女性へのプレゼントは何が喜ばれるだろう。
高級ブランドのバッグや洋服?アクセサリー?宝石?

普段は食い意地が張っている彼女だから、何か美味しいスイーツやお酒をプレゼントすれば喜んでくれたが、今回は僕なりにネクタイのお礼という事で、食べたら無くなってしまう食べ物ではなく、残るものを、と希望していた。

具体的なものが思い浮かばず、普段はしげしげと見ることもないような街中のショウウィンドウを眺めながらゆっくりと歩を進める。

ふと、小奇麗なショウウィンドウの中でキラキラと輝くものが目にとまった。

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指輪、か。

いつもは意識すらしたことがなく、通り過ぎるだけの店だったが、この日、なぜか僕の目は指輪販売店のショウウィンドウに釘付けになった。

指輪をプレゼントするなんて、まるでプロポーズだな。
そんな事を考えて、思わずクスリと笑ってしまった。

が、次の瞬間僕は思い直した。

いや、今「まだ早い」と思って笑っちゃったけど、まだ早いって、じゃあいつなら良いと思ってるんだ、自分は・・・。
結婚したいと思っていて、結婚できる年齢で、それなりに安定した勤め先もあって、特に結婚を妨げている条件も無いのに、なにをグズグズしているんだ。

そして僕は、これから先、彼女にプロポーズができそうなタイミングについて考えてみた。

彼女の誕生日は11月だったので、まだまだ先の話だ。
クリスマスは12月だから更にその先になってしまう。

5月に付き合った日記念があるので、そこでも良いかな、とも思ったが、もともと僕も彼女も、そういった記念には疎い方で、確か彼女がその時期短期で海外に出向するという話を聞いていたので、それも却下だ。

すると、このホワイトデーにバレンタインデーのお返しに、というタイミングは申し分ないチャンスなのでは、と思えてきた。

そうなってくると、ショウウィンドウで輝いている指輪は、もはや彼女への贈り物にしか見えなくなってきた。
「私を買って貴方の大事な彼女さんにプレゼントして」という声まで指輪から聞こえてきそうだった。

僕は、しかし、突然思いついたこの閃きの衝動にまかせてお店のドアを開かなかった。
もう少しきちんと計画を立ててから改めて戻ってこよう、そう決めたからだ。

かくして、僕の壮大なホワイトデーにバレンタインデーお返しサプライズプロポーズ大作戦がスタートした。

まず、第一歩は彼女の指輪のサイズを知ることから、と思い、意気込んで「彼女 指輪 サイズ」や「プロポーズ 指輪 サイズ こっそり」などのキーワードでインターネット検索してみたが、色々な情報を見ていく中で「最近は、一旦作った婚約指輪がもしサイズが合わなかったりしたら、後から無料でサイズ変更してくれる店舗も増えている」というものを目にして、それならそういう店で探せば良いか、と一気に問題解決してしまった。

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また、後からサイズ変更する事を前提に指輪を贈る際には、自分が想像するよりも少し大きめに見繕ってもらった方が良いという情報もちらっと目にして記憶に書き留めておいた。

理由は大方想像がついたが、一応きちんと読んでみると、指輪を差し出して薬指にはめようとしてはまらないよりは、ちょっとブカブカの方が、女性としても嬉しいといった内容だった。

おそらくその通りだろう。
ガラスの靴がピッタリはまったシンデレラに、誰もがあこがれるものだ。ちっとも入らず無理やり足をねじ込ませた義理の姉のようにはなりたくないだろう。

折角のプロポーズで指輪が入らず彼女に恥をかかせるわけにはいかないよな、と僕は「もっともだ」と納得した。

サイズをこっそり調べる必要が無くなったという事で、僕はかなりラクな気持ちで指輪探しにとりかかった。

ひとまず、先日思わず足を止めてしまった専門店に行ってみることにした。

店内に足を踏み入れると、僕なんか場違いなのでは、というレベルでピカピカに磨かれた床と壁と天上とショーケースが迎え入れてくれた。
そして、いかにも品が良さそうな女性スタッフが「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。

「ご予約されていらっしゃいますでしょうか」
そう聞かれて、そうか、こういうところは予約して来るところなのか、と早くも恥ずかしさで赤面した。

「いや・・・予約は・・・してないです」
恥じ入ってそう答えると、スタッフは眩い笑顔で「大丈夫でございます、本日は空きがございますのですぐご案内いたしますね。こちらへどうぞ」と案内してくれた。

緊張しながら席につくと、メニューを持ってきたスタッフが「お飲み物、お選びください」とニッコリ笑った。

ヒィ!の・・・飲物だって・・・!?
不意を突かれて面食らってしまった僕に、ニコニコと優しい微笑を向ける女性スタッフ。

「コ・・・コーヒーを」
どもりながらそう答えると「かしこまりました」と優雅にその場を離れた。

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そしてまた別のスタッフが現れ、僕の前に立ち、挨拶をしてきた。

案内された椅子が2人がけだったので、「男1人で来るっていうのは、珍しいものなんですかね」と挙動不審になりながら尋ねると「いえいえ、そんな事はございません。そうですね、カップルでいらっしゃる方と男性の方だけいらっしゃる場合と、半々くらいです」と言ってくれたので幾分か安心した。

ついでに「あの、実は彼女の指輪のサイズが分からなくて」と相談してみると、ここの店では後からサイズ変更に対応してくれるという返答があり、ますます安心した。

とはいえ、予約もしないでフラッと立ち寄った僕のことで、婚約指輪の何たるかもよく知らず、相場がいくらかも分からず、給料3ヵ月分というぼんやりした昔のステレオタイプイメージがあるくらいだった。

スタッフと色々話して分かったことが沢山あった。

給料3ヵ月分は、最近の相場ではないが、そのくらい、もしくはそれ以上出す人もいるし、数万円程度で抑える場合もあるという。
「あくまで平均、最近の傾向という事でお伝えしますが」という前置きをして、スタッフが教えてくれたのは20~40万の間、30万前後、といったぐらいが相場という事だった。
30万前後ならば、給料3ヵ月分とまではいかない。正直僕は給料3ヵ月分でもドンと来いと覚悟していたのでホッとした。

また、最近では、先に彼女にデザインの希望を聞いておいて、ダイヤモンドを男性が選ぶというパターンも多いらしい。やはり身につけるものだから、気に入ったデザインのものが良いという事で、好きなデザインを選んでもらうのだという。そして、大きさや品質で値段が決まるダイヤモンドは男性がチョイスして、愛の大きさをここに込めるのだそうだ。

僕はそもそも、デザインとダイヤモンドを別で選ぶ仕組みだった事を知らなかったので、そこから驚いた。
そして男性がダイヤモンドを選ぶというのは、なんとなく納得できるような気がした。
女性から「良いダイヤモンドを・・・」とはなかなか言い出しづらいだろうし、ここにプロポーズへの強い決意を込めるという意味では、男性が一肌脱げるチャンスなのだろう。

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「当店ではそれぞれお選びいただくというシステムをとっていますが、もちろん、最初から組み合わされた状態で販売しているお店も沢山ありますよ」とも言われたので、全ての店がデザインとダイヤモンドを別々に選ぶわけではなさそうだったが、僕は折角だからある程度良いダイヤで彼女への婚約指輪を作りたかったので、この店で選ぶことにした。

デザインも豊富にあって、確かに彼女の好みで選んでもらった方が良いような気もしたが、長年一緒に過ごしてきて、彼女の好きそうなデザインと、それから自分で思う「彼女に似合う」デザインを選ぼうと決め、スタッフにも彼女の写真や手の特徴を伝えてデザイン選びに協力してもらう事にした。

どうやら指輪のデザインそれぞれに名前がついているらしく、その名前にも意味があり、僕はそんな話も聞きながら、彼女にピッタリの指輪を探した。
気付けば僕の隣には結婚を控えたであろうカップルが来店しており、仲良さげにデザイン選びをしている。彼女の方が試しに指につけてみて、鏡と自分の指を見比べながら彼氏の意見に耳を傾けている。

僕は、自分の彼女が指にしたところを一生懸命想像して、デザイン選びに集中した。

そして、照れ屋で優しく、可愛らしい彼女によく似合いそうなデザインを選んだ。
手があまり大きくなく、指が短く見えるのを気にしていた事があったので、指が長く見えるようなV字型のスッキリしたデザインで、しかしあまり大人っぽくなりすぎないよう、アシンメトリーではなく、シンメトリーのストーン配置で、それでいながら歳を重ねてもつけ続けられるようなデザインだと思ったものがあった。
シンプルすぎず、少し遊びもあるような、メインになるストーンの横に小さなストーンを配置してあるような、そんなデザインだった。

ダイヤモンドは「一番良いものを!」と言えるほど大盤振る舞いはできなかったが、大きさを少しだけ抑えた代わりに、質の高いものを選んだ。これも店員さんと相談しながら決めて、自分なりに納得、満足できるものだった。

これでホワイトデーお返しサプライズプロポーズ大作戦の準備が整った。

バレンタインデーのお返しという名目だったから、彼女にはスイーツもプレゼントする事にした。
普通に「お返しだよ」といって彼女の好きなフィナンシェを渡し、その後サプライズでエンゲージリングをプレゼントしてプロポーズするという手はずだ。

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作戦決行当日のホワイトデーの日に、彼女と待ち合わせてフィナンシェを手渡した。
喜ぶ彼女の顔を見て、一生この笑顔をそばで見ていたいと改めて思った。

「ね、このネクタイ、バレンタインの時くれたでしょ」
そう言うと「わ、それ!つけてくれてるんだねー!嬉しい」と顔をほころばせた。

「だから俺からもお返しをしようと思って、考えたんだけど」
そう切り出すと「いいよ、いいよ。このフィナンシェ大好きだもん」と遠慮する彼女。

きっと驚くだろうなぁと思いながら、僕は、小さな箱を差し出した。

「ずっと一緒にいたいなと思ったら、このお返ししか浮かんでこなくて。僕と、結婚してください」

彼女は目を見開いて、僕の顔を見つめた。
「え・・・」
とだけ零して、口を両手で覆って、「うそ・・・ほんとに・・・?」と呟いた。

僕は無言で彼女の目を見つめて頷いた。

「信じられない・・・!え、わわわ・・・信じられない・・・うそー・・・全然心の準備が、できてなかったよ・・・」と言いながら彼女の目が徐々に潤んできた。

「一生そばにいる。絶対に幸せにする。一緒に人生を歩んでいこう」
僕はそう改めて伝えた。そして彼女の肩を抱き寄せた。

彼女はしばらくの間僕の肩にもたれていたが、少し経ってから僕から離れて、僕の顔を見つめてから

「こちらこそ、末永くよろしくお願いします」
と、ペコリと頭を下げた。

かくして僕のプロポーズは無事成功し、僕はこれ以上にないくらいの幸せを噛みしめた。

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