スキル・仕事・お金

パワーストーンに夢かける出世運アップの願い


楽して稼ぐ方法なんてそうそうない。
それは分かっている。
でも僕はどうにも納得がいかないのだ。
同じ時間労働しても、なぜこうも稼げるお金に雲泥の差があるのか、ということに。

今の会社に勤めはじめて3年が経過したが、未だ出世の道は険しく、未来が見えないままグズグズと平社員の道をひた走りに走っていた。周りの同期たちは次々に出世しはじめる頃で、昇進して給料が上がった者が複数でてきた。うちの会社で上り詰められないと早々に判断した者の中には、さっさと見切りをつけて転職するために離職した者もいた。

そんな中で僕は、転職する気力もなく、かといって出世欲がギラギラでいかなる手を使ってものし上がろうというほどの熱意も持てず、現状に妥協していた。

それでも同期たちの羽振りが良くなるのを近くで見ていると、羨ましいと思ってしまうのが人間というものだ。
自分も出世すれば給料が上がって貯金も楽にできるようになるのにな、と思う。
そして、何よりも、時給換算した時の金額に圧倒的な差が出ると考えると、どうにもやるせなくなるのだった。

同じ時間働いても金額が変わるなんて、世知辛いなぁと苦虫を噛み潰す。

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そんな日々が続いていた僕に、実家からニュースが飛び込んできた。
母が、入院したという。

青天の霹靂に驚いて、どんな重大な病だろう、まさかガンとか…?
と不安にかられたが、よくよく聞いてみると「急性虫垂炎」つまり「急性盲腸」というやつだった。

なぁんだ、と安心したが、放っておくわけにもいかず、とりあえず手術が終わって安静にしている母のもとに見舞いに行くことにした。
少し離れたところで一人暮らししている妹も行くと言ったので、時間を合わせて一緒に行くことになった。

何か見舞い品を持って行こうという事で、俺は菓子折りを買ったが、妹はパワーストーンを持っていきたいから病院に行く前に店に寄って行くと言い出した。

時間に余裕があったので、一緒に待ち合わせて僕も付いていくことにした。
店内に入ると、妹はまっさきに「ヒーリング」とか「健康運」とか、そんなポップが出ているコーナーに向かって行き、店員と何か話し込みながら商品を物色しはじめた。

手持ち無沙汰になった僕は、店内をぐるぐると見て回った。

ふと、そういえば、金運アップなんていうのも、絶対あるはずだよな、と思い立つ。
店内を一瞥すると、分かりやすいことにキンキラ光っている一角が目についた。
あそこに違いないと確信して近づくと、ポップには「金運アップ!!」と書かれていた。

金運は、流石、イメージのままどれもこれも金色に輝くパワーストーンばかりだったが、ひとくちに「金」といっても、黄色っぽいもの、茶色に近いもの、ラメみたいなものからややくすんだ色合いのものまで、それぞれのパワーストーンが個性を主張していた。

と、まるで金箔のような輝きを放っているパワーストーンが目についた。
説明書きを読んでみる。

シトリンクォーツを名付けられたそのパワーストーンは、「クォーツ」の属性で、つまり水晶の一種。
鉄分を多く含んでいるため、全体的に黄色に輝いているのだそうだ。
太陽の象徴とされ、正財運をアップさせてくれるらしい。

確かに成金っぽいイメージのパワーストーンだな、と思う。
こういうのを身につけたら本当に運が向いてくるのかなぁとぼんやり思いながら、一体いくらするものかと思って値札に目を落とすと、それほど高い値段ではなく、僕にも気軽に手が届く金額だった。

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へぇ、こんなもんだったら、おまじない気分で願掛けして持ち歩いても良いよな、と思いながら他のパワーストーンにも目をやる。

シトリンクォーツの隣にはタイガーアイが並んでいた。タイガーアイは、名前くらいは聞いた事があった。
縞模様がトラの目に見えるのが特徴の、渋めな金色と黒っぽいこげ茶色のマーブル縞模様のパワーストーン。

「アイ」という名前から連想されるように、先を見通す目の力があると言われていて、仕事運や金運を呼び込むそうだ。そしてその力はギャンブルでも効力を発揮するらしい。
ゴクリと生唾を飲むが、一攫千金を狙いに行く度胸は、まだ今の僕には備わっていなかった。

お値段を見てみると、シトリンクォーツよりもさらに手が出しやすいお手ごろ価格だった。

色々見て回っていると、妹が買い物を済ませて僕のところに戻ってきた。

「でたー!金運だって!まぁたお金のことばっかり考えてるの?」

そう言われて、思わずムキになって「恋愛とか興味ないし。お前だって知ってるだろ?俺が平社員で薄給の中あくせく働いてるの」と言い返す。

「だったら、金運よりも出世運の方が良さそうだねぇ」
妹はニヤニヤとこっちを見てくる。

出世運のパワーストーンなんてあるんだ、と「へぇ」と感心してしまって、「出世運?」と聞き返してしまった。

「お、興味津々?じゃあ私がお兄ちゃんのために特別に良い石見繕ってあげようか?」

実際のところ、興味津々だった僕は、素直に妹に出世運のパワーストーンも教えてもらうことにした。

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パワーストーンには複数の効力がある場合が多く、例えばさきほどのタイガーアイは「金運」と「出世運」どちらも兼ね備えている。説明書きにも「仕事運」と表記してあった。

「出世で言えば、ラピスラズリは今の仕事を成功させたいときに持っておくと良いよ。良い仕事仲間と出会えるし、正しい判断能力を授けてくれるんだ。魔よけのパワーもあるから、不運に見舞われたり邪魔が入ったりするのを防いでくれるし。

それから、翡翠だね。ビジネスを成功させるお守りなんだって。翡翠にも魔よけの効果があって、あらゆる障害から持主を守ってくれるんだよ。
あとは、そうだね~、カイヤナイトとか?これも判断力を磨いてくれるパワーストーンなの。人生の岐路に立ったり、大きな決断が必要な時にパワーを発揮してくれるんだよ」
これだけの事を一気に語られ、正直、僕は引いてしまった。

「く…詳しいな」

「最近はまっててね。私は恋愛成就なんだけどね!そっちの方が詳しいから、興味があれば、恋愛の方もレクチャーしてあげるよ」

さっき恋愛は興味ないと言ったはずだ、とちょっと呆れながらも「とりあえず、仕事運と金運、お願いしまーす」と言っておいた。

2人で少し相談して、仕事の方は、別に転職したり起業したりしたいわけではなく、ビジネスをするという感じでもないから、出世のパワーストーンはラピスラズリにしようという事になった。
色も、深い青が気に入った。

それから金運はあまり迷わずにタイガーアイに決めた。
手ごろな価格だったし、仕事運にも効力があり、組み合わせた時のラピスラズリとの色合いもバランスが良かった。

「ギャンブルに強くなるって言われてるけど、あんまり手を出さない方が良いよ~」
と妹に忠告されたが、「ギャンブルはしないから大丈夫」と軽く受け流した。

ラピスラズリとタイガーアイの2種類のパワーストーンを使って、携帯電話につけておけるストラップを作ってもらう。
ここの店は、自分で好きなパワーストーンを選んで、好きな組み合わせでアクセサリーや雑貨を作ってくれるオーダーメイドの店なのだ。

価格はそれぞれのパワーストーン単価と、パーツなどの価格で決まる。
ストラップぐらいならば、割と気軽に買えてしまう価格だった。

作ってもらったストラップを手に店を出た。

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病院で母に顔を見せて、それぞれ菓子折りと妹チョイスのパワーストーンのペンダントを渡し、近況報告などをしながら、今度は元気になって退院してから実家に帰るよ、と約束して、1時間程度の訪問を終えた。

妹と別れて帰宅して、改めてまじまじとパワーストーンを見つめる。
効果があるのかどうなのか。
でも、そう、信じる者は救われるのだ、と信じて願掛けしてみることにした。

ラピスラズリとタイガーアイの落ち着いた深い色味が、不思議と心を落ち着かせてくれるような、それでいて「がんばれよ」と応援してくれているような、そんな気分にさせた。

このパワーストーンの力を信じて、がんばってみようかな、そう思った。

と、その時、妹から電話がかかってきた。
「パワーストーンの力を本当に信じるならね、ちゃんと浄化してあげなきゃと思って」

浄化?
なんだか急に宗教っぽくなってきたぞ・・・と思いながらも、耳を傾けることにした。

浄化の方法は、簡単だった。
・流しっぱなしにした水道水に1分以上さらす
・月光の下に置いておいて、月光浴させる
・塩水に漬けておく
・乾燥セージやインセンスを焚いて煙でいぶす

など色々方法はあるが、妹に言わせると「水と月光がもっともスタンダードな浄化方法だから、とりあえず流水にさらすのと、その後月光浴させてあげれば大丈夫!毎日やる必要もないから、思い出した時や、力を借りたいと思ったときにやってみて!」との事だった。

僕は、半信半疑になりかけつつも、いや、折角パワーストーンの力を信じると決めたのだから、こうなったらとことんその力を引き出してやろうではないかと思う事にした。

親切な妹に礼を述べて「もし本当に出世して金持ちになったらたらふくおごってやるよ」と軽口を叩いて電話を切った。
そして早速試しにやってみようという事で、流水と月光で浄化してみた。

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そうやって、浄化をこまめに行い、ことあるごとに願掛けしていると、不思議なものでパワーストーンに愛着すら湧いてくるようだった。

そして大切にしようと思えてくるのだ。これが、パワーストーンがそんな気持ちにさせているのか、はたまた僕が勝手にそんな気になっているだけなのか分からないが、とにかく、僕はパワーストーンの力を信じて熱心に浄化などもおこない、願掛けする日々を送る事になった。

それから数週間して、まさかと思ったが、本当に僕の身に出世話が持ち上がった。

にわかには信じられなかったが、この上司が居座り続けているせいで出世の道が阻まれているんだよな、という上司が昇進したのだ。

これはしかし素直に嬉しいことだった。

僕が座るべき椅子にずっと居られるのは少し気に食わなかったが、とても良い上司と評判だったし、僕にも良くしてくれていたので、僕は彼の事を邪険に「目の上のたんこぶ」と思うこともできずに、どちらかというと慕っていたからだ。

そんな上司がめでたく昇進し、彼のいたポジションに空きができた。

勤務年数や業務内容などから察するに、自分でもそろそろ僕の番が着たのでは、と浮き足たつ。
そして、昇進した上司に呼び出された時には心臓が勝手に高鳴るのを止められなかった。

上司は、ついに僕が待ち望んでいた言葉を告げた。
そして自分が推薦したという事もこっそり教えてくれた。

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この時ほど上司に感謝したことはない。
僕はただ嬉しくて、昇進したことはもちろん、上司に認められたことに思わず涙をながした。

そして、ふとパワーストーンの事を思い出した。

さっそく効果があったのかな?

自分の実力が認められたのは素直に嬉しかったが、しかし、たまたま上司が昇進してその椅子が空いたとなって、そこに自分に白羽の矢が当たったのだとすると、これには強運が必要だったのかもしれない。

と考えると、これはもうパワーストーンのおかげということで良いのではないか。

毎日のように浄化して、願掛けした、この信心深さのたまものだな、と僕はにんまり笑った。

それからも僕の出世劇は続く。

可愛がってもらっていた上司に推薦されたという事もあり、僕への期待は最初から高かったのだが、僕はそれに次々応えてみせた。

いつでもパワーストーンがそばにいてくれると信じるだけで、力が湧いてきた。

任される仕事の量も、責任感も増してきたが、僕はパワーストーンの浄化と、パワーストーンと向き合う時間を大切にし続けた。それは、僕自身と向き合う時間でもあった。

おかげで精神状態が常に安定していたように思う。

僕の口座は気付けばとんでもない預金額になっていて、僕はただ一生懸命パワーストーンの力を信じ、自分の力を信じ、真摯に仕事に取り組んでいただけで、こんなに出世できた事に驚き、そして感謝した。

このラピスラズリとタイガーアイを見繕ってくれ、そして浄化の方法を教えてくれた妹にいよいよ感謝するときがやってきたな、そう思って僕は妹に高級フレンチコースをご馳走した。

パワーストーンをきちんと浄化し、信じて、がんばった結果ここまで来たぞ、と伝えると、妹は驚きながらも喜んでくれて「私のおかげだけど、お兄ちゃんもがんばったね~」と言いながらフレンチコースの高級料理をほおばって満足げに笑った。

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