恋愛小説

幼なじみの二人~短編恋愛小説


私には顔が格好いい幼馴染みがいる。
名前は篠原 祐太郎。顔も格好良いし、頭もいい。万能なやつだ。
勿論本人に「格好いいね!」なんて言ったことはない。

え?何故かって?
それは、恥ずかしいから。

1歳の頃隣に越してきたのがきっかけで私達の親同士が仲良くなり、毎日遊ぶうち子供も仲良くなって、小中高とたまたま同じ学校という所謂典型的な幼馴染みの例で。

だんだんと格好よくなる幼馴染みに意識しなかった訳じゃない。寧ろ逆、意識しまくりで毎日一緒に行ってる登下校の道中なんて心臓バクバク、ヘモグロビンの活躍あって毎日過ごせているってだけ。
ドキドキ胸を鳴らしながら隣を歩いてる。


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「ゆず、どうかした?」
上の空の私に祐太郎は心配したのか鼻と鼻が触れるほど近くに寄せるから、驚いて私は腰を抜かす。

恥ずかしくて顔真っ赤にしてると祐太郎は私が発熱していると勘違いして私を抱えると急いで学校へ連れていく。

これ程恥ずかしいことはあるだろうか。
選りに選って保健室の先生は熱なんかないと言いやがるし、祐太郎は安心してるし、その話を聞いたこの目の前に座ってる女は大声で笑いやがるし。

「笑い事じゃないっつーの!」

私が声を荒らげると「まあ、最近篠原くん更に格好良くなったもんね。なんて言うーの磨きがかかったって言うか」なんて慰めにもならないことを言うんだ。
この女、本当に親友なのだろうか。

「でもさ、ゆず。うかうかしてられないんじゃない?」

親友の指差す方を見ると祐太郎の取り巻きっぽい子達が私を睨んでいる。その取り巻きのリーダーっぽい子とたまたま目が合うとその子は大きな声で私の悪口を言い出す。

「あんな女が篠原先輩の彼女?めっちゃブスじゃん!」
ケタケタと笑う女の子達の声は大きな声だから嫌でも耳に入る。

親友は無視しなよと言うけれど私はどうしても我慢ならなくて女の子の前に立ち「その大好きな篠原先輩と私は付き合ってないの!ただの友達だっつの!」とわざと至近距離なのに大声で言ってみる。

勿論大声で悪口を言われたから仕返しなんだけど。

「そうですよねぇ!篠原先輩は彼女居ますもんね〜柚季先輩なんか目に入るわけないですよね〜!!」

祐太郎に彼女がいるなんて私、知らない。

幼馴染み歴16年の私が知らなかったのになんでこの子達が知ってるの、祐太郎なんで私にだけ言ってくれないの?

よろよろと席に戻り親友に「知ってた?」と聞くとうん。と当然のように頷く。

やはり教えられていないのは私だけのよう。
なんだろう、凄く恥ずかしい。

私自惚れてた、祐太郎の事小さい頃から知ってるし、なんでも話してたから、祐太郎もなんでも話してくれるって、自分勝手に自惚れてた。
恥ずかしい。

私が俯いていると頭上から声が掛かる。

「大丈夫?」

その声と同時に教室が色めき立つ。

黄色い声援に驚いて私は上を向く。

目の前に立ってたのは
「ゆず、どうかした?顔青いよ?」
と言う見知った男の人。

「涼ちゃん」
私が涼ちゃんの名前を呼ぶだけで教室がどよめく、本当にあの人気俳優の?!と。

涼ちゃんは昔私の家の近所に住んでてよく遊んでくれるお兄ちゃん的存在の人、初恋の人だったりする。

その涼ちゃんは今、話題を攫う超人気俳優。

そんな涼ちゃんが一体何の用なんだろう。

「今度この学校で撮影するから、その下見に。」

「そうなんだ、頑張ってね」

私が言葉を言い切る前にスタッフらしき人が「涼くん困るよ〜勝手にいなくなっちゃ」と涼ちゃんを連れていく。

去り際涼ちゃんは私に何か言って行ってしまった。
だけどその言葉は、遠すぎて私には届かなかった。


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「あれって涼平さん?人気の涼って俳優あのお兄さんなの?!」
と慌てる親友にそうだよと呟きまた机に伏せる。

クラス中の視線が痛い、ただでさえ傷心のところに女の子達からの視線とどういうこと?!という問いかけは大分メンタルが削られる。

だってその後に必ず「なんであの子ばっかりっ」て言われるから。
祐太郎の幼馴染みってだけで今までこのメンタル攻撃受けてきたのに、涼ちゃんも知り合いってなると…。

「柚季さんどういうこと?!知り合いなの?!」

ほんとにテンプレ通り言いますか…、仕方ない。
「昔からの知り合いで」
普通の質問に普通に答えるとへぇーいいなって皆羨む。

だけど、羨む気持ちはいずれ変わっちゃって、私へのいじめへ繋がる。

私はそれが1番嫌だ。だって喧嘩なら受けて立つけどいじめは陰湿でタイマンなんて絶対やらない。大勢で1人をいじめるから。

涼ちゃんが有名になって祐太郎が格好良くなるのは、鼻が高いし、正直嬉しいけど、でも、反面いじめられたくないから。

涼ちゃんを素直に応援出来なくなって、あんまり連絡も取らなくなった。
その後ろめたさがあるから私はどうしても涼ちゃんに会えたことを素直に喜べずにいた。

その後も放課後祐太郎が教室に迎えに来てくれるまで、涼ちゃんのことを質問しに女の子達が大勢私の元へ来ては「どうして?」と聞き続け私はもうノックアウト寸前。
今朝の恥ずかしかった出来事なんか吹き飛んで、ヨレヨレのまま祐太郎と帰路につく。

「随分ヨレヨレだけどなんかあったのか?」

「太郎くんよ、聞いてくれるのかい?」

冗談混じりに祐太郎に飛びつくと笑いながらおぶられる。私重いから降ろしてくれと言ってもヨレヨレだから元気になるまで降ろさねえと笑って歩いてく。

いつも疲れてくれると祐太郎はこうやっておぶってくれる。嬉しいような恥ずかしいような。

だけど私の頭を不意に「彼女」という今朝聞いたばかりのワードが過ぎる。

また自惚れそうになるから。
こんなところ見られたらカノジョさんに心配かけちゃう。
本当に好きになっちゃうから。

夕焼けに染まる祐太郎の綺麗な黒髪に触れたくなる衝動を抑えて、私は息を吸う。

「祐太郎、降ろして。」

言ってしまったら今までの楽しかった関係が壊れてしまいそうで、今日まで言えなかった。
だっておぶられて二人で家まで帰るのは、今まで私が元気になるためのルーティンみたいなものだったから。

「ごめん、元気になったから走って帰るわ!」
そう言って走る最中、なんだか胸がきゅって苦しなって無我夢中で走って帰った。

祐太郎はお隣さんだから、幼馴染みになっただけで。
幼馴染みだから、優しいだけなんだ。

わかってた、だけど私は幼馴染みって関係に甘えて、優しい祐太郎を利用してたんだ。
もうやめよう、傷つくのは目に見えてるから。

玄関の扉を開けて鍵を閉め、靴を脱ぎながらただいまーと言うと、
「涼平くん来てるよ〜」。

お母さんの声がして、驚いて廊下をバタバタと走ってリビングのドアを開けると涼ちゃんがおかえりって笑ってる。

さっきまで悩まされてた元凶なのになんだかつられちゃって私も笑う。

「涼ちゃんお仕事もう終わったの?」

「うん、今日は下見だけだったからね。久々に今日は暇になったから、ゆずに会いに来た」

ニコリと笑う顔はCMに出てる涼ちゃんそのもので、まあそうなんだけど、
なんだろう、現実感がない。

「あら涼平くんおばさんに会いに来たんじゃないの〜?」
なんて笑うお母さんに涼ちゃんはすみませんって笑ってて、なんかさっきまでの胸のギュッて感覚はいつの間にか和んだからかどこか行っちゃって、帰ってきたお父さんと、ご飯に誘われた涼ちゃんとご飯に誘ったお母さんと一緒に四人で食べる。

食べてる最中お母さんが「涼平くんお婿さんに来たらいいのに」なんて冗談を言って涼ちゃんもじゃー結婚する?ってニコニコしながら意地悪を言う。私が昔好きって言ったから知ってるはずなのに。

私が頬をぷくと膨らませて変な顔をすると涼ちゃんは「でもゆずには祐太郎くんがいるもんな」って私の膨らんだ頬をつつく。

「祐太郎には彼女居るから」と言いかけた言葉をご飯と一緒に飲み込む。そんなこと言ったら変な空気になるって目に見えてるから。

私は愛想笑いで、えへへってこの場をやり過ごす。

食事が終わって、涼ちゃんが帰るからそこまで送るとドアを開けて外に出ると、
丁度、隣で祐太郎と女の人が話してて祐太郎が笑ってた。

それを見るだけでなんだろう、胸がチクチクする、今日はすごく色んな思いになる。

一瞬、祐太郎と目が合う、だけどすぐに逸らされて
何かわからないけど視界が涙で歪む。

少し潤んだ視界が見えなくなる、それは涼ちゃんが被せてくれた帽子で。

「俺被んないから、ゆず被ってて。」

うんと小さく呟くように言うとじゃ、行こっかって手を引いて少し歩く。

ゆっくり私の歩幅に合わせてくれる涼ちゃんは他愛のない話をしながら気を使ってくれてる。

「じゃあ、ここで。」

「え、でもまだほんの少ししか送ってないよ」

「ゆず、本当に結婚する?」
あまりに突拍子もない言葉に驚いて私は、何も言えなかった。

涼ちゃんは、私の知ってる涼ちゃんはあんまり冗談言わなかったのに
私がぐるぐる考えを巡らせていると頬に触れる柔らかい感触に目を丸くする。

「気をつけてね、おやすみ」

そう言って歩いてく涼ちゃんは私に比べて少し年上、それなのに凄く大人に感じる。


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帰り道、自分の部屋の扉を開けるまで私の頭の中は涼ちゃんで一杯だった。

勿論祐太郎が誰かに笑ってたこと、その誰かが女の人だったことも忘れてないけれど、ほっぺにチューされたし結婚する?なんて冗談も言われたから。
今は少し胸のチクチクはどこかに行った、代わりに涼ちゃんのせいでドキドキが止まらない。

自分の部屋の扉を開けると丁度スマホが鳴る。
メッセージアプリの通知が出てて、誰からだろうとタップ。

そこに書かれてたのは祐太郎からで、私は何が書かれているのか、もし明日から他人だとか書かれたらどうしよう。想像したら怖くなって、一度見るのをやめてベッドに突っ伏した。

数十分後やっぱり、見ないと後悔しそうで目を薄くしながら恐る恐る見る。

yutaro”いつもの公園に来て、話したいことがある”

話したいことって、もしかしてとさっきの考えが戻ってくる。

急いで階段降りて小さい頃遊んだ二人の家の目の前にある小さな公園に走っていく。

すると気温2度の中耳を真っ赤にして待ってる祐太郎が立ってた。

「ゆず、好きだ」

真正面に立って白い息しながら、何言ってるんだ。
祐太郎彼女居るじゃん。

言って祐太郎の想いが変わったらどうするんだって思ってるのに私の口は勝手に動いてた。

「なんで。だって祐太郎彼女居るんでしょ?何言ってんの、」

「え?俺彼女なんて居ないけど?」

「だって皆噂してたし、さっきの人だって!」

「さっきのは従兄弟、みんな噂してんのは俺は知らん」

なんか拍子抜け。一気に体から力が抜けて、祐太郎が支えてくれたおかげ倒れなかったけど、支えてくれる祐太郎の手があまりにも冷たくて、どれだけ待ったんだろうと考えるとその冷たささえ愛おしく思える。

「ゆずこそ、涼平さんとなにしてたんだよ」

祐太郎に言われて頬に触れた涼ちゃんの感触を思い出して、やましいわけじゃないけど目が泳ぐ。やはりどこか後ろめたい。

「べ、べべ別に」

吃る言葉が焦躁りを露わにして祐太郎の目が疑いの目になる。

「なんで目泳いでんだよ」

「別に、」

私の言葉をかき消す様に電話が鳴る。

出なよと言う祐太郎に私は何気無い仕草を装って電話にでる。

『祐太郎呼び出して来たでしょ?』
声の主は勿論涼ちゃん。

『ゆず、食事の時変だったからもしかして祐太郎となんかあったんじゃないかなと思って。そしたら祐太郎が家の前につっ立ってるからちょっとアイツに意地悪したんだよ。ゆずになんかすれば進展あるかなーと思ってさ、案の定アイツ俺がゆずの手引いた時点ですごい顔だったよ』

くすくすと笑う涼ちゃん、確かに涼ちゃんの愛情表現は祐太郎にだけ歪んでいた。昔も祐太郎をいじめては可愛いと言っていた程クレイジー。

私はまんまと涼ちゃんの手のひらの上で転がされてたわけか。

「ひどいよ涼ちゃん。」

『ごめんごめん、ゆずは大好きだけど祐太郎も大好きだから。大好きな二人が仲良くしてくれるなら兄ちゃんなんだってするさ。騙してごめんな、ゆず。』

「ありがと!涼ちゃん」

涼ちゃんが居なかったらきっと祐太郎の事無かったことにして好きって気持ちも棺桶に葬り去る所だった。

ほんとに終わってしまう所だった。

電話が切れる寸前、涼ちゃんは私に幸せになれって言ってた。

本当の幸せがなんなのか、祐太郎と一緒にいるのが幸せなのか分からないけど。
私は祐太郎と一緒に居たいって思いを優先する。

「私も大好きだよ、祐太郎」
笑顔でよかったって言う祐太郎に抱きしめられた時に確かに感じた。
幸せだって。

交わした口付けは、
きっと、永遠のものだって。


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