恋愛小説

幼馴染~短編恋愛小説


深夜十二時。颯真(そうま)は、ベッドに寝転んでスマホをいじっていた。何かをしているというわけではなく、ただいろんなページやアプリを開いては閉じてということをくり返しているだけだった。

そんな時、突然手に持っていたスマホが震えだし、画面に名前が映し出される。

「ったく・・・・こんな時間になんなんだよ・・・。」

颯真は表示された名前を見て表情を曇らせた。そしていやいや電話の通話ボタンを押して耳に当てる。すると、電話の向こうから颯真の第一声を待たずに女性の声が聞こえてきた。

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「あー、颯真ー?よかった、まだ起きてたんだー。ねぇねぇ、今暇?何してんの?」

次々と紡ぎだされる言葉に、颯真はうるさそうに顔をしかめながらスマホから耳を少しだけ遠ざけた。

「なんだよ、結(ゆい)・・・・。一体今何時だと思ってるんだ。こんな時間にどんなテンションしてんだよ。」

「えー、別にいいじゃん!!それよりもさ、今から颯真のところに行ってもいい?」

「・・・・・は?おいおい、急に何を言い出すんだよ。早く家に帰らないとおばさん心配するだろ。」

「うーん・・・本当はそうしたいところなんだけど、実はもう終電行っちゃってて・・・。」

「はぁ・・・・ったく、タクシーで帰りにくいところいんのかよ。」

「そうなのー。だから、今日一晩泊めてくれないかな?」

「あー・・・。まぁ、しょうがねぇなぁ。今どこにいんだよ。」

「えっとね・・・、駅前のカラオケの近く。」

「あぁ、あそこか。それじゃあ、ちょっとそこで待ってろ。」

「え?いいよ、私が颯真のところに行くから。」

「バーカ。こんな時間に女を一人で歩かせられるかよ。なるべく人通りがあるところに出てろよ。」

「え・・・うん・・・分かった。」

「それじゃあ、ちょっと待ってろよ。」

そう言うと、颯真は電話を切った。颯真はスマホの画面を見つめて盛大にため息をついて立ち上がった。そこらへんに適当に放り投げていたジャージの上着に袖を通すと、気持ち急ぎ足で外へ出た。

結と颯真は物心ついた時から一緒に遊んでいた幼馴染で、今は二人とも大学三年になっていた。大学は別々なので、颯真は家を出て大学の近くのアパートを借りて一人暮らしをしている。

今まで何度もお互いの家を行き来したことはあるが、颯真が一人暮らしをしている部屋に結を呼んだことはなかった。異性ということもあり、中学生から高校生になるにつれて、だんだんと颯真の中に恥ずかしさが出てきたせいで幼いころよりは二人が一緒に過ごす時間は短くなっていたのだが、颯真の気持ちを全く気にすることなく、結はいつでも変わらずに颯真に接してきていた。

颯真が自分から結に話しかけることに気まずさを覚えだしてからは、そんな結の変わらない態度に少し救われていたが、それと同時に颯真の中にはもやもやとした感情が渦巻いているのだった。

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颯真が結から聞いたところへたどり着くと、そこにはスマホを触りながら道端にしゃがみこんでいる結の姿があった。

「おい、帰るぞ。」
そういって、颯真は結の頭を軽く小突いた。

「痛っ・・・。ちょっと、何すんのよー。」

「それはこっちのセリフだ。こんな時間までふらふら飲み歩いてんじゃねーよ。」

「だってぇ・・・・。」
そう言いながら、結はうつむいた。そんな結を見て、颯真は何も言わずに歩き出した。

「ほら、早く帰るぞ。」

「・・・・うん。」

家にたどり着くと、結はバタンと颯真のベッドに倒れこんだ。

「はぁぁぁぁぁ・・・・・。」

「おいおい、人んちに入ってきた途端なんだよ。お前のベッドじゃないんだからな。」

「だってぇ・・・。」

「はぁ、何があったんだよ。どうせ話聞くまで寝かせてくれないんだろ。」

颯真の言葉に、結は目を輝かせて飛び起きた。

「え・・・・聞いてくれるの?」

「なんでもいいから、さっさと話せよ。」

「うん・・・。実はね、付き合ってた彼氏と別れちゃってさ・・・。」

結の言葉に、颯真はジト目で結を見た。

「はぁ・・・どうせそんなことだろうと思ったよ。」

「もぉ、どうせって言わないでよ!」

「だってさ、お前が終電逃すまで飲むなんてだいたい男がらみだろうが。」

「え?そ、そうだったっけ・・・・・?」

「いつも泊めさせてくれる友達はどうしたんだよ?」

「うん・・・今日は都合が悪かったみたいで・・・。」

「お前なぁ、もし俺が近くに住んでいなかったらどうしてたんだよ。」

「え、えっと・・・・。」

颯真の言葉に、結は急に視線をそらした。

「なんだよ。お前の態度はバレバレなんだよ。怒らないからはっきり言えよ。」

結はちらりと颯真をうかがうように見ると、颯真にかろうじて聞こえるくらいの声で話し始めた。

「あの・・・・。颯真のアパートってここらへんだったよなぁって思って、お店を探しました・・・。」

「・・・・・って言うことは、お前は最初から俺の部屋に泊まるの前提で飲んでたってことか?」

「はい・・・。」

結の言葉に、颯真はさっき自分が言った言葉を覆したくなったが、かろうじてそれをこらえた。

「だったら、最初から一言言っとけよな。もし俺がたまたまいなかったらどうしてたんだよ。」

「んん・・・・ごめん。」

「ま、別にいいけどよ。なんか飲むか?」

「えっと、じゃあお水ちょうだい。」

「はいよ。」

そして、結はひたすら元カレの愚痴を言い続けながらいつの間にか眠ってしまった。

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颯真は窓から差し込むまぶしい太陽の日差しに手をかざしながらぼんやりと目を開けた。

「うーん・・・いってててて・・・。」

結が寝てしまい、どうすることもできずにそのまま床で一晩寝てしまった颯真はバキバキに固まった背中や腰を伸ばしながら起き上がった。そして、本当は自分のものであるはずのベッドに堂々と寝ている幼馴染を見て、颯真は昨晩のことを思い出した。

「あぁ、そうだった・・・。はぁ。」

颯真はぐっすりと寝ている結の肩に手を置いてゆすった。

「おい、結ー。起きろよ。今何時だと思ってるんだよ。」

「うーん・・・・。まだ眠いよ・・・・。」

「おい、いい加減にしろよ。ったく、人んちをなんだと思ってるんだよ。今日が休みだからいいけどさ。」
そう言ったところで、結はようやく目を開けた。

「あ、あれ・・・・?そうま・・・・?なんで?」

「はぁ?もしかして、お前昨日のこと覚えてないのかよ。」

「昨日のこと・・・?私、昨日は・・・・。あっ!そうだ!思い出した。飲みに行って終電逃しちゃったんだ。」

「やっと思い出したかよ。」

「うん。昨日はごめんね。」

「はぁ、謝るくらいなら今度から終電逃すまで飲むんじゃねぇよ。」

「だってぇ・・・。」

「あー、もうわかったわかった。その話は昨日たっぷり聞いたから。」

「・・・・・・・・。」

結は、急に黙り込んでうつむいた。そんな結に、颯真ははっと慌てて結の顔を覗き込む。

「お、おい?わ、悪かった。そんなお前が傷つくことを言ってるつもりはなかったんだけど・・・。」

「颯真!!!」

「は、はいっ!?!?」

急に結がパッと顔を上げて自分の名前を呼んだことに驚き、颯真も反射的に返事をしてしまう。

「私、決めたよ!!もっと女磨いて、あいつに別れたことを後悔させてやる!!」

「・・・・・・・は?」

「そうと決めたからには、さっそく行動をしなくちゃね!それじゃあ、私家に帰るね!おじゃましましたー。」

そういうと、結はまだ状況をよく理解していない颯真をそこに残してあっというまに出て行ってしまった。

「今のは一体・・・・何だったんだ?」

結が帰宅して、颯真はようやく落ち着いた休日を迎えることができた。

「ふぅ・・・・。ったく、あいつ・・・。急に電話かけて来たかと思えば家まで押しかけてくるなんて、ほんとなに考えてんだよ。幼馴染だとは言え、俺も男だっての。酔っぱらった状態で来るんじゃねぇよ。」

颯真はぶつぶつ文句を言いながらベッドに転がった。そして、少しイライラした気持ちをかかえながら目を閉じて、ゆっくりともうひと眠りするのだった。

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それから数日後、颯真は授業を終えて大学から帰宅していた。その時、向こうから走ってくる人物にふと視線を向けた。その人物と目が合った瞬間、颯真は顔を上げたことをひどく後悔した。

「あー、颯真!!こんなところで何してるの?」

案の定、颯真の姿に気が付いた結は走るスピードを落として颯真のところへとやってきた。

「何してるのって、それはこっちのセリフだ。俺は今学校から帰ってるところだよ。お前こそこんなところで何してんだよ。家からはだいぶ遠いだろ?」

話しかけられてはどうすることもできず、颯真も渋々足を止めた。

「私は、バイトまでちょっと時間が空いちゃったからランニングしてたところだよ。」

「お前、バイト前にわざわざ疲れるようなことするのか?それはさすがにアホだろ。」

「えー、ひどい!ちょっとは褒めてくれたっていいじゃない。」

「知るかよそんなこと。俺だったら疲れた状態でバイトなんて全く行く気起きないと思うからな。」

「うーん、まぁ、そうなんだけど・・・。バイト終わりだと時間も遅くなるからどうしても時間を取ってランニングできないんだよね。」

「そんなに張り切ってしなくてもいいんじゃねぇの?お前の場合、間食なくせば簡単に痩せるだろ。」

「それができたら苦労しないよー!!」

「はぁ?俺だったらランニングの方が絶対嫌だね。疲れたくない。」

「そんなこと言ってるから、颯真もちょっと太ってきたんじゃないの?」

「俺は別に太ってねぇよ!?」

慌てて言う颯真に、結はじっと颯真の体を上から下までじっくりと見る。

「いやいや、高校の時に比べたら締まりが無くなってるよ。」

「それは、高校の時が現役で一番運動してた時だからな・・・。それはしょうがねぇだろ。」

「あっ!それじゃあさ、」

「いや、もういい。俺帰るから。」

結が急に目を輝かせて何かを言おうとしたが、颯真はそれを遮るように言うと、さっさとその場から離れようとした。だが、その手を結に掴まれてしまい逃げることができなくなる。

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「ちょっと、人の話は最後まで聞きなさいよ。」

「嫌だ。なんか嫌な予感がするから俺もう帰る。」

「何よ、話くらい聞いてくれてもいいでしょ。」

こうなった結は、もう何を言っても動かないということを、長い付き合いの中で颯真は痛いほどに理解をしていたため、しぶしぶ颯真は結の方に向き直った。

「ったく、しょうがねぇなぁ。なんだよ。」

「あのね、どうせなら、颯真も一緒に走らないかなって思って。」

「絶対そう来ると思った・・・・。俺は嫌だからな。もう疲れることはしたくないの。」

「えー、いいじゃん。一緒に走ろうよ。実はね、私この近くの公園でよく走ってるんだけど、そこ、けっこう可愛い女の子が走ってるんだよ。だからさ、颯真もそこで走ったらなんかいい出会いとかあるんじゃないかな?」

「そんなの求めてません。余計なお世話だっての。」

「颯真って、普通にしてたら結構モテると思うんだけどなー。何で彼女作らないの?」

「は?別にお前には関係ないだろ。って言うか、もしかして、お前が走ってるのって出会いを探してるからなのかよ。」

颯真からの問いに、結は腕を組んで考え込んだ。

「うーん、あったらいいなぁとは思うけど、別にそのために走ってるんじゃないよ。」

「・・・・・そうかよ。」

「え?もしかして、走るの興味出て来たの?」

「そんなんじゃねぇよ!」

「まぁまぁ、隠さなくてもいいよ。私も走ってるんだし、せっかくだから一緒に走ろうよー。」

「あー、もう、分かったよ!走ればいいんだろ、走れば!!」

「やったぁ!じゃあ、私が走るときに連絡するね!!」

そう言うと、結は嬉しそうにまた走り始めた。その後姿を見送りながら、颯真は一人盛大にため息をついた。

「くっそ・・・・。あの鈍感野郎。さっきはあからさまに反応しちまったと思ったけど、全く心配する必要なかったな。普通、ここまで協力的になるわけないだろうが。」

颯真は複雑な気持ちを抱えたまま、帰路へとつくのだった。

「よーし!それじゃあさっそく頑張りますか!!」

結から連絡を受けて颯真が集合場所に着くと、そこにはやる気満々の様子で準備運動をしている結の姿があった。

「頑張るぞー、おー!!」

「・・・・・おー。」

「ちょっと、颯真元気ないよ?やるからには元気よく行かないとね!それに、何事も最初が肝心よ。」

「あー、はいはい。わかったから。じゃあ、とっとと行くぞ。」

まだ何かを言いたそうにしていた結を置いて、颯真は一人先に走り出した。二人はしばらく並んで走っていたが、途中でふと結が颯真の方をちらりと見た。

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「颯真って、やっぱり体力あるよね。」

「急になんだよ。」

「だって、私、最初に走り始めたとき、十五分も走れなかったもん。」

「おいおい、それはお前が体力なさすぎなだけだろ。」

「で、でもっ、今は三十分走れるようになったんだからね!!」

「へぇー、それはすごいな。俺も、今は三十分がやっとかなー。」

そうポツリと言った颯真に、結は悔しそうな表情をした。

「んんーーー・・・。そんな余裕そうなとこむかつくー!私の方が、颯真よりも余裕なんだからね!!途中で疲れたって言っても待ってあげないからね!!」

そう言うと、結は急に走るスピードを上げた。

「え、ちょ、ちょっと、急になんだよ!」

仕方なく、颯真もスピードを上げて結に追いつく。

そして三十分後。二人は、結がいつも走っているコースを走り終えた。

「っはぁ、っはぁ、っはぁ・・・・。」

結は膝に手を当てて、肩で大きく息をしていた。その横で、颯真も乱れた息を整えながら汗をぬぐっていた。

「ったく、あんなスピードで走り続けるからだ。ちょっとそこで待ってろ。」

そう言うと、颯真はその場から離れた。そして再び戻ってくると、結の頬によく冷えたペットボトルを当てる。

「きゃっ!な、何!?」

「ほら、飲めよ。このままだと脱水になっちまうぞ。」

「あ、ありがと・・・・。」

結は少し驚いたような表情を見せながらも、颯真が差し出しているペットボトルを受け取った。キャップを開けて結はごくごくと勢いよく飲む。

「はぁー、おいしーい。生き返った!!はい、颯真。」

そういって、結は颯真にペットボトルを差し出した。

「ん?」

颯真は、そのペットボトルを見て一瞬きょとんとした顔をした。

「颯真も飲みなよ。汗かいてるじゃない。」

「い、いや、俺は・・・・。」

「もぉ、脱水になるって言ったのは颯真でしょ。ほら、飲んで飲んで。」

そういってぐいぐいと結に押し付けられたペットボトルを、颯真はしぶしぶ受け取った。そして、颯真は一瞬ためらったがそのペットボトルに口をつけた。

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「はぁー。確かに生き返るな。」

「でしょ?やっぱり颯真ものどが渇いてたんじゃない。」

したり顔をしている結に、颯真はずっと気になっていたことを尋ねる。

「あのさ・・・お前、なんでここまで頑張ってるわけ。」

「え?別に、そこまで頑張ってるつもりはないんだけど・・・。どうしてそんなこと聞くの?」

「だってさ、お前言ってたじゃん。元カレに後悔させてやるって。でも、そんなの必要なくね?何でそんなお前を振るようなやつのために頑張るんだよ。」

「何でって・・・。まぁ、それは口実っていうか・・・。そうやって理由をつけないと自分のためってだけじゃ続かない様な気がしたから。てか、颯真急にどうしちゃったの?なんか今日変だよ?」

「変なのはもとからだよ。じゃあな。気をつけて帰れよ。」

颯真は、これ以上結のそばにいるのが耐えられなくなり、逃げるようにその場を後にした。

だが、歩いている途中にさっきの会話を思い出して颯真は頭を抱えて叫びだしたくなった。
(あーーー、くっそ。あんな態度とってたらバレバレだろ。あいつに気づかれないようにって今まで思ってきたのが台無しじゃねぇか。・・・・・・でも、何も言わないのも、つらいんだな・・・。いっそのこと自分の気持ちを全部ぶちまけて楽になってしまいたい。でも、そしたらもう、あいつは今までのように俺に接してくれなくなるんじゃないだろうか・・・。)

颯真は、永遠に続く自問自答を繰り返しながらぼんやりと歩いていた。そのとき、急に誰かに呼び止められた。

「颯真!!」

その声に颯真が振り返ると、そこには息を切らしながら颯真を引き留めるように腕をつかむ結の姿があった。

「結!?どうしたんだよ・・・。」

「あ、あの・・・非常に言いにくいんですが・・・。」

「なんだよ。さっさと言えよ。」

「実は、さっきいつもよりハイペースで走ってたからか、ポケットに入れてた家の鍵を落としちゃって・・・。」

「・・・・・・それで?」

「お母さんが帰ってくるまでの間、家にいさせてくださいっ!!」

そういって結は勢いよく颯真に頭を下げる。

「あー、もうこんなところで頭なんて下げるんじゃねぇよ。俺が変な目で見られるだろうが。しょうがねぇ。来るなら勝手についてこい。」

「え、いいの?」

「勝手にしろよ。来ないなら別にいいけどよ。」

「あぁ、待って。行くからー!」

一人歩き始めた颯真の後を、結は急ぎ足で追いかけた。

「あー、汗でべとべとだな・・・。ちょっと、シャワー浴びてくるから、結、この部屋から出るんじゃねぇぞ。」

「オッケー。」

「まぁ、あんまないだろうけど冷蔵庫勝手に開けていいから。」

そういうと、颯真は着替えを手に取って部屋をでた。

颯真が戻ってくると、そこには座ったままの状態で眠ってしまっている結の姿があった。

「おい、結。ゆーい。なんだよ、いつの間に寝ちまったんだよ・・・。」

結はいつの間にか、疲れで寝落ちしてしまっていた。ベッドを背もたれにして寝てしまった結の体がぐらりと横に揺れた。そのまま、結の頭が颯真の肩に当たる。颯真は、そんな結の頭にそっと手を乗せた。

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「ったく、こんな無防備に寝やがって。危機感とか無いのかよ。それか、俺が男として見られていないのか・・・・。まぁ、確実に後者だろうな・・・。くそっ・・・。人の気も知らねぇで・・・。これくらい・・・されても文句言うなよ。」

颯真はぼそっとつぶやくと、結の頭を自分の方に引き寄せて額にキスをした。颯真が顔を離すと、頬を真っ赤にした結と目が合った。

「あ・・・・あの・・・・颯真?い、今の・・・・。」

「お、おまっ、起きて・・・。はぁ・・・、お前が無防備に寝てるのが悪いんだからな。俺じゃなかったらもっと大変なことに・・。」

「颯真なら・・・・別に、嫌じゃない・・・。」

結はぼそっと、颯真に聞き取れるか聞き取れないかくらいの声で言った。颯真は自分の頭をガシガシと掻いた。

「お前なぁ、そんなこと言ったら男は簡単に勘違いするんだからな。」

「・・・・勘違い、してもいいよ?」

結がそういって颯真のことをじっと見た。その視線に、颯真は一気に頬を赤くした。

「ば、ばかっ!お前、なんてことを・・・。そ、それじゃ・・・。」

急に焦りだした颯真に、結も頬を赤くしながらぷくっと頬を膨らませる。

「もぉ・・・。ねぇ、ちゃんと・・・言ってよ。」

「うっ・・・。あぁ、もう、くそっ!」

颯真は覚悟を決めて結の方に向き直った。

「結・・・俺、お前のことがずっと・・・好きだった。小さいときからずっと。」

「わ、私、颯真に好かれてるなんて、思ってなかった。なんて言うか、ずっと一緒にいるのが当たり前で、そんな風に思ってくれるなんてありえないって・・・。だから、好きになったら、今まで通りの関係でいられないって思ってた・・・。だから・・・・。」

結はそこまで言うと、言葉を紡げなくなった。そんな結に、颯真は優しく頭をなでる。

「ばか、なんでお前が泣くんだよ。」

そう言うと、颯真は結の腕をとって自分の方へと引き寄せた。そのまま結を自分の腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。

「颯真!?」

「結・・・・。もう、ほかの男のところになんて行くなよ。ずっと、ここにいろ。」

「うん・・・。」

「なぁ、まだ、お前からちゃんと聞いてないんだけど?」

「え・・・・。わ、私も、颯真のことが好き。」

颯真の腕の中で、結はふとあることに気が付いた。

「そっか、颯真が最近私がランニングするのにイライラしてたのって、もしかして嫉妬・・・?」

結のその言葉に、颯真は驚くとともに盛大に肩を落とした。

「お前なぁ・・・・。もしかして、今まで気づいてなかったのか?俺、かなりわかりやすく態度に出てた思ってたんだけど・・・。」

「え・・・・気づかなかった・・・。」

「はぁ・・・。いや、お前ってそういうやつだもんな。知ってたよ。今更驚くようなことではないんだけど・・・やっぱり改めてその現実を突きつけられるのは、なんか刺さるものがあるな・・・。」

「あ、あの・・・なんかごめん。」

急に落ち込む結に、颯真はやれやれといった表情を浮かべて結の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき乱す。

「ちょ、ちょっと!?」

「ま、お前が気にすることじゃねぇよ。それに、俺はそんなお前を好きになったんだしな。」

にかっと颯真が笑顔を浮かべると、結は顔を真っ赤にしてうつむいた。

「へぇ、結でもそんな反応してくれるんだ。なんか意外だわ。」

「だ、だって・・・意識したら急に・・・恥ずかしくなってきた・・・。」

「へへっ、今まで意識してなかった分、これからたっぷり俺の事意識してもらうからな。」

そういうと、颯真は結の肩を引き寄せて唇にキスを落とした。

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