小説恋愛小説

音楽を通して~短編恋愛小説


(上田美加)「沙弓、またまぶたにマスカラ付いてる」

そう言ってメイク落としシートを取り出した。

(笹枝沙弓)「ありがとうー。美加、どうもうまく出来ないんだよね~」

(上田美加)「沙弓はそのままでいいのよ。私が面倒見てあげる」

そう言って頬笑む上田美加。私の一番の友人。茶髪に巻き髪。クールな性格だけど私には何故か優しい。


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私は笹枝沙弓。あまり目立たない性格。がさつで、黒髪ロングストレート。

突然教室に黄色い悲鳴が響きわたる。

(上田美加)「相変わらずの人気ね」

(笹枝沙弓)「そうだね、私も心のなかで悲鳴あげてるけどね」

(上田美加)「そんなこと言って、思ってもいないでしょ?」

(笹枝沙弓)「ばれてた?」

へへと笑う私に困ったように笑う彼女。
だって私とは別世界の人達だもの。

(上田美加)「でも、沙弓はその辺の子とは違うから、同じことしなくていいのよ」

突然の悲鳴の原因は…。

(女子1)「おはよ!小玉くん!」

(小玉真咲義)「おはよう」

優しく頬笑む彼は小玉真咲義。優しくて、笑顔が素敵な小玉くん茶髪にゆるパーマ。

(女子2)「雪くん!おはようございます!」

(木野田雪)「…おはよ」

木野田雪。彼はクール。長めの黒髪に眼鏡。

(女子3)「今日も素敵です!亮くん!」

(桜田亮)「気安く名前で呼ぶな!」

桜田亮。女嫌いで有名。金髪の短髪。

(女子4)「戸田くん、おはよ!今日クッキー焼いてきたのー!」

(戸田龍斗)「わぁうさぎさんだ!ありがとう!」

戸田龍斗。可愛い系。茶髪に外はねパーマ。4人とも整った顔立ち。モテ男子達だ。

(笹枝沙弓)「格好いいよね、私とは別世界」

(上田美加)「そんなことないわ、ほら、こっち見てるわ」

そう言って目線を向けた先を追うと小玉くんがこっちを見ていた。そして席を立って歩き出した。え、こっちくる?!

(小玉真咲義)「笹枝さん、これ書いたの笹枝さん?」

そう言って渡されたのは前に私が書いた歌詞だった。放課後、美加が職員室で用があって待っているあいだに暇潰しに書いたもの。私の趣味。無くしたと思ってた。…恥ずかしい。

(笹枝沙弓)「ちが」

(上田美加)「そうよ」

(笹枝沙弓)「美加!」

(小玉真咲義)「やっぱり、話があるんだ、放課後、第二音楽室に来てくれないかな?」

(笹枝沙弓)「え…」

(上田美加)「分かったわ、かしてあげる。でも、変なことしたら許さないわよ」

(小玉真咲義)「ありがとう上田さん」

でた、王子さまスマイル…。

小玉くんが去ったあと

(笹枝沙弓)「美加!何で引き受けちゃったの!」

(上田美加)「面白そうだと思ったから。ふふ。それにがさつな沙弓はきっと変わるわ、綺麗になる。恋でね、私てきには今までで充分だけど、これからの沙弓のことを考えるとね…」

(笹枝沙弓)「え?」

(上田美加)「とにかく!あなたのためよ」

そう言って目を細めて優しく微笑んだ。

放課後

第二音楽室

(上田美加)「これ、持ってて防犯ブザー。何かあったら使うのよ」

何かあってからじゃ遅くない?

覚悟を決めドアを開けた。そこには…ギターを持った小玉くん。たぶんベースを持った木野田くん。ドラムのイスに座っている桜田くん。キーボードに触れている戸田くん。

(小玉真咲義)「待ってたよ、笹枝さん。俺達バンド組んでるんだ。それで本題に入るんだけど、笹枝さんに俺達の曲に歌詞を書いてほしいんだ」

展開についていけない!

(笹枝沙弓)「何で私?!無理だよ!」

(小玉真咲義)「じゃぁ今歌う曲聞いて、皆準備いい?1、2、3」

“寒い夜星が一つも見えもしない
照らしてくれるのは街灯だけ

何もない空に手を伸ばした
自然と涙がこぼれた

一人取り残された気分だ
叫びたくなったここにいることを

示したくなった喉が痛くなるまで
枯れるまで叫んだここにいる

気づいてほしい気づいてほしい
冷たい雨の中傘もささずたちつくす

声をかける人はだれ一人いない
寒さで震えが止まらない

疲れてしまった強がることが
嫌になった誰からも認めてくれない

ああ、星が見たい月が見たい
照らしてほしい気づいてほしい

一人だと息がつまる悲しくなる
叫べ、泣き叫べ

一人だと息がつまる苦しくなる
吠えろ捨て犬のように

強く生きろどん底からはい上がれ゛

これ、私が書いた歌詞だ。

(小玉真咲義)「ごめんね勝手に使って、でも、これ見た瞬間気に入っちゃって、それでライブで歌いたいんだけど、他にも書いてほしい」

(笹枝沙弓)「何で私が書いたって分かったの?」

(戸田龍斗)「えーとね、それわね、前に放課後忘れ物して教室に戻ったら笹枝ちゃんの机の上に置いてあったの!だからもしかしてと思って」

ニコニコと笑顔を向ける戸田くん。

(桜田亮)「俺は反対だ」

(笹枝沙弓)「私も。まだ死にたくない」

(小玉真咲義)「え?」

(木野田雪)「何故だ」

(戸田龍斗)「え~?」

(笹枝沙弓)「モテてる自覚あるでしょ?ファンに殺されたくないし、面倒なことは避けたいの。バンド組んでたことは知らなかったけど、余計関わりたくない。ごめんなさい。」

そう言って部屋を出ようとしたとき、笑い声が聞こえた。

(戸田龍斗)「はは!笹枝ちゃん変わってるね!こんな美味しい話断るなんて!僕達と一緒にいられるなんて自慢ものなのに!」

(小玉真咲)「大丈夫だよ、望むならおおやけにしないから。普段は今まで通り、放課後はここで歌詞書いてくれればいいし、どうかな?」

突然の話でついていけない。

(木野田雪)「…明日の放課後まで待つ」

(桜田亮)「俺は女が入るのは納得いかないがお前が書いた歌詞は気に入ってる」

(笹枝沙弓)「…わかった、明日の放課後またここに来るよ。その時返事する」

そう言って部屋を出た。

翌朝学校

私は美加に昨日の出来事を話した。

(上田美加)「…そう、引き受けてみたら?沙弓の歌詞力は私もすごいと思うもの、前に見せてくれたことあったでしょ?実力試すいい機会じゃないかしら、あのメンバーの中に沙弓が入るのはちょっと…凄くやきもち焼くけど、放課後以外はいつもどおりなんでしょ?やってみる価値はあると思うわ」

(笹枝沙弓)「うん、やってみようかな」

そう言うと美加は私の頭を優しく撫でて、目を細めて優しく微笑んだ。

放課後

第二音楽室ドアを開く

もう皆揃っていた。

(小玉真咲義)「ちゃんと来てくれたんだね」

(笹枝沙弓)「私、やってみようと思う、だからよろしくお願いします」

(戸田龍斗)「やった!こちらこそ!笹枝ちゃん」

突然私に飛びつく戸田くん。

(笹枝沙弓)「わ?!」

(木野田雪)「…セクハラ」

そう言って木野田くんは戸田くんをひょいと持ち上げた…力持ち。

(小玉真咲義)「亮もいいよね?」

(桜田亮)「必要以上に関わらなければな」

(小玉真咲義)「亮…」

(笹枝沙弓)「それなら大丈夫。必要なのは歌詞でしょう?余計なことはしないから。それに嬉しいんだ。私の歌詞が誰かが歌ってくれて曲をつけてくれることが。ふふ、昨日の凄く良かった。小玉くん歌うと甘くささやいてるみたいな歌い方なんだね」

突然静まり返った。私…変なこと言った?

(戸田龍斗)「可愛い笑顔、抱きついても…」

(木野田雪)「駄目だ」

(笹枝沙弓)「え?」

(小玉真咲義)「はは、なんでもないよ」

(笹枝沙弓)「あ、そうだ、おやつ持ってきたんだ」

パンパンに膨らんだ鞄からチョコレート、せん餅、スナック菓子を取り出した。

(桜田亮)「菓子だ…」

桜田くんが食いついた!

(笹枝沙弓)「好きなの食べていいよ!私、甘いのとかおやつ口にしながらの方が書けるんだよね。歌詞が浮かぶの。ダイエットの天敵だけどね」

(戸田龍斗)「僕お煎餅食べるー。」

意外。あ、

(笹枝沙弓)「皆の分の飲み物も用意してるんだ。パックのだけど」

(小玉真咲義)「お金払うよ、結構かかったでしょ?どうりで鞄パンパンだなって思ったよ」

(笹枝沙弓)「いいよ、いいよ、私が勝手にしたことだから」

(小玉真咲義)「でも…」

(笹枝沙弓)「じゃぁ今度おやつ買ってくれたら嬉しいな」

(小玉真咲義)「うん、美味しいの買ってあげる」

お互い目を合わせ微笑んだ。

(木野田雪)「…笹枝はよく笑うんだな、意外だ」

(桜田亮)「確かに、目立つタイプじゃねーよな」

(笹枝沙弓)「うーん、ほとんど美加としか話さないからかな」

(小玉真咲義)「上田さん?」

(笹枝沙弓)「うん、性格は真逆なんだけどね、気が合うの」

(戸田龍斗)「あー!今、片想いしてる女の子の顔してたー、うっとりしてて、顔赤くしてて、色っぽくってー、ね!雪くん!」

(木野田雪)「ああ、美しかった」

(笹枝沙弓)「え?!私が?!」

うなずく木野田くん。美しいって初めて言われた…。

(笹枝沙弓)「そ、そろそろ本題はいろ!私歌詞書かなきゃ」

(小玉真咲義)「それについてお願いがあるんだけど、俺達のこと書いてくれないかな?」

(笹枝沙弓)「え?」

(小玉真咲義)「俺達、かけてるんだ。俺達の爪痕を残したい。」

強い眼差し。皆も同じ瞳をしていた。

(笹枝沙弓)「分かった。いつまで?」

(小玉真咲義)「2ヶ月まで、それまでに俺達を知ってほしい。でもそうなると最初約束したここだけで会うのは難しい。自然体の俺達も見てほしいから教室でも話しかけたりするかもしれないし、話しかけてほしい」

(笹枝沙弓)「わかった。私もやるからには全力で頑張りたいもの」

(戸田龍斗)「やったー!明日からお昼一緒に食べよー」

(木野田雪)「それは駄目だ。邪魔になる」

(戸田龍斗)「えー!」

(笹枝沙弓)「ふふ、美加も一緒にいい?」

(戸田龍斗)「もちろん!とりあえずこっちのお煎餅食べていい?」

(笹枝沙弓)「ふふ、いいよ、戸田くん、クッキーよりお煎餅の方が好き?」

(戸田龍斗)「うん!飲み物もジュースよりお茶が好き!」

(笹枝沙弓)「そっか、覚えておくね」

(小玉真咲義)「もうこんな時間か…笹枝さん、家まで送るよ」

(笹枝沙弓)「大丈夫!家近くだから!」

(小玉真咲義)「でも、もう暗いし…」

(木野田雪)「俺、バイクで送る」

(笹枝沙弓)「本当に大丈夫だから」

(木野田雪)「送る」

目が怖い。

(笹枝沙弓)「じゃぁ、お願いします…」

帰る支度をし、皆に声をかけた。

(笹枝沙弓)「皆また明日!」

木野田くんからヘルメットを渡され、かぶった。

(木野田雪)「家どこ」

(笹枝沙弓)「大手スーパーの裏のマンション」

(木野田雪)「…わかった、腰に手をまわして」

(笹枝沙弓)「うん」

ゆっくりバイクが走り出した。 バイクで約10分。着いた。

(笹枝沙弓)「ありがとう」

(木野田雪)「いや、…笹枝、金持ちか」

そう木野田くんが言ったすぐあと、

(父)「沙弓?」

(沙弓)「パパ?」

向こう側から街灯の光とマンションの光で照らされたパパが歩いてきた。

(木野田雪)「…gato?」

やっぱり…気づかれた。

(父)「彼氏か?」

(沙弓)「ち、違うよ!パパ!クラスメートの木野田くん。送ってくれたの」

(父)「そうか!わざわざありがとう、木野田くん」

(木野田雪)「いえ、それじゃ俺はこれで」

(沙弓)「本当にありがとう、気をつけて帰ってね」

(木野田雪)「ああ」

彼が走り去って行った後。

(父)「気づかれたか?」

(沙弓)「うん、気付いてた、パパ、タイミング悪いよ」

(父)「はは、ごめん、ごめん」

(沙弓)「パパ自分の立場自覚してよね、有名人なんだから」

(父)「沙弓は大げさだな」

そう言って大きな手が私の頭を撫でた。


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翌朝学校

(上田美加)「昨日は濃い一日だったのね」

私は美加に昨日のことを話した。もちろんパパのことは知っている。

(笹枝沙弓)「木野田くんのことだから誰にも言ってないと思うけど…」

(戸田龍斗)「笹枝ちゃん!おはよー!」

ざわつく教室。

(クラスメート女子1)「笹枝さんと戸田くんって仲良かった?!」

(クラスメート女子2)「笹枝さんていつも上田さんといる子だよね?」

ああ…早速目立ってる。顔がひきつる。

(笹枝沙弓)「おはよ、戸田くん」

(戸田龍斗)「へへ、早速挨拶しちゃった」

可愛い笑顔を向ける彼に悪気はない。

(上田美加)「戸田くん、おはよ」

(戸田龍斗)「上田さんもおはよ!」

二人並ぶと絵になる。

(クラスメート女子3)「木野田くん!おはよ!」

(木野田雪)「…うん」

あれ…こっちに向かってる?

(笹枝沙弓)「木野田くん、おはよ」

(木野田雪)「gato…」!

とっさにポケットに入れてたチョコレートの包みを開けて彼の口に突っ込んだ。

(木野田雪)「好きだ…もご」

キャーと悲鳴が上がる。でも私には分かる

“好き゛

“gato゛

パパのこと。

(戸田龍斗)「えー?なになに?」

(笹枝沙弓)「落ち着いて、木野田くん。お昼休みにちゃんと説明するから」

(木野田雪)「わかった。じゃぁ、昼休みに」

そう言って席に向かっていった。待ってよーと戸田くんがあとを追っていった。

昼休み

(木野田雪)「笹枝さん」

私の席の目の前に立つ彼。

(笹枝沙弓)「うん、美加ごめん」

(上田美加)「大丈夫よ、行ってらっしゃい」

優しく頬笑む美加。

(笹枝沙弓)「ありがとう、行ってきます。行こう、木野田くん。」

屋上に向かった。

(木野田雪)「gatoは笹枝さんの」

(笹枝沙弓)「うん、パパ。グレーハートのベース。gatoは私のパパ、秘密なんだ。」

(木野田雪)「…ずっと好きだった。あこがれて、ベース始めたんだ。こんな気持ち初めてだ。本当に好き」

(笹枝沙弓)「ありがとう、私も嬉しい。大好き。パパのこと」

嬉しそうに話す彼を見ていて何故か胸がきゅうと苦しくなった。

二人で教室へ戻ると…。視線が痛い。何?美加が走ってきた。

(上田美加)「沙弓!今ここにいないほうがいい、皆勘違いしてる」

(笹枝沙弓)「え?」

(クラスメート女子1)「木野田くん!屋上で笹枝さんに告白したってほんとう?!」

(クラスメート女子2)「嘘だよね?!好きなんていってないよね?!」

誰かに聞かれてたんだ…。

(木野田雪)「…」

(笹枝沙弓)「何か勘違いしてない?告白したのは私の方だよ。そして振られたよ」

(クラスメート女子1)「そ、そうだよね!木野田くんが笹枝さんに告白するわけないよね」

(クラスメート女子2)「だから言ったじゃん!嘘だって!」

恥をかくのはなれてる。

(上田美加)「沙弓…」

美加、そんな顔しないで、私は平気だよ。

(笹枝沙弓)「美加、私なら大丈夫だよ」

(上田美加)「あなたは本当に嘘が下手ね…」

彼女は困ったように笑った。

(木野田雪)「違う、おれは」

(笹枝沙弓)「これでいいのだから何も言わないで」

(木野田雪)「…笹枝さんは優しいな」

彼は困ったように微笑んだ。

放課後

私はある決意をした。

(木野田雪)「俺のせいで笹枝さん恥かかせた」

(小玉真咲義)「笹枝さんが雪に告白したって言う話し?」

木野田くんが私をまっすぐな瞳で見つめた。

私はうなずいて口を開いた

(笹枝沙弓)「皆には本当のこと話すね」

パパのことを全て話した。

(桜田亮)「…マジかよ」

驚いた顔をする桜田くん。

(小玉真咲義)「なるほどね、雪憧れてたからね、気持ちが高まるのも分かる。でもけいそつだよ、言葉を選ばないと。誰が聞いてるか分からないんだから」

(木野田雪)「…ごめん」

(笹枝沙弓)「ううん、私、ああ言ったの後悔してない。パパのこと大好きだから、木野田くんが好きって言ってくれたこと本当に嬉しかった。ありがとう」

ほほが緩む。

木野田くんが目を見開いたあと目をそらして

(木野田雪)「ありがとう」

そう小さく呟いた。

(戸田龍斗)「あー!雪くん照れてる!顔真っ赤だよー」

(木野田雪)「…龍斗うるさい」

皆でこうして集まって話してるのが楽しい。少し前の私だったら予想も出来なかった。

(桜田亮)「お前は何か弾けるのか?」

(笹枝沙弓)「ちょっとなら一通り」

突然静まり返る。言ったこと後悔した。

(小玉真咲義)「ギター弾ける?」

(戸田龍斗)「キーボードも弾けるのー?」

(桜田亮)「ドラムも出来るのかよ」

(木野田雪)「…ベース聴きたい」

(笹枝沙弓)「防音の部屋があるの。そこでパパたちがよく練習してて物心ついたときから楽器に触れてきて自然と覚えたの。だから弾けるよ」

小玉くんがギターを持ち私の前まで来て

(小玉真咲義)「ちょっとでいいから弾いてくれないかな」

笑顔でギターを渡された。反射的に受け取ってしまった。

(笹枝沙弓)「分かった。でも最近はほとんど弾いてないから期待しないでね」

有名な映画のオープニング主題歌にしようか…。たしか音は…。うん。指が覚えてる、思わずくちぐさむ。

弾き終わると。

(小玉真咲義)「凄い…」

(笹枝沙弓)「そんなことないよ、何度か音外しちゃったし、それに私、音楽を憎んだ頃があったの。だから本当は皆の前で弾く資格なんてないんだ。」

(戸田龍斗)「どういうこと?」

(笹枝沙弓)「音楽がきっかけでパパとママは離婚したの。喧嘩もたえなかった。私はママに捨てられた。いらないって言われたの。音楽の血が流れてる子なんていらないって…」

(木野田雪)「笹枝さんは何も悪くない」

(笹枝沙弓)「ありがとう、でも事実だから、受け止めてる。でも、無意識に音楽から避けて生きてきたのかもしれないね。今、ここにいるのは奇跡に近いもの」

そう言って笑った。

あっという間に日がくれた

(戸田龍斗)「今日は僕が送るよ!」

(笹枝沙弓)「でも…」

(小玉真咲義)「もう俺達のなかで遠慮は無しだよ」

(笹枝沙弓)「うん、分かった」

(桜田亮)「龍斗には気を付けた方がいい。せいぜい飛ばされないようにな」

どういう意味だろう?

意味が分かった…

(笹枝沙弓)「ぎゃー!死ぬー!」

(戸田龍斗)「やっほーい!」

戸田くんのバイクの運転荒い!必死で戸田くんにしがみついた。

(戸田龍斗)「着いたよー」

(笹枝沙弓)「はぁ…ありがとう」

(戸田龍斗)「僕ね、本当は女の子ってバカで単純だなって思ってるの。亮よりたちが悪いの。軽蔑した?後ろに女の子乗せたのも初めてなの。でも、笹枝ちゃんは、誰かに媚びることしないし、でもどこか放っておけなくて…笑うと可愛くて。好きだよ…笹枝…沙弓ちゃん」

(笹枝沙弓)「え…」

(戸田龍斗)「僕初めて好きな子に告白しちゃった!」

(笹枝沙弓)「私は…」

(戸田龍斗)「返事はまだいらない!2か月後!沙弓ちゃんが僕たちの歌詞を完成させた時に返事ちょうだい!もっと僕を知って欲しいから」

彼は今までにない大人びた微笑みを浮かべていた。

(笹枝沙弓)「うん、わかった。」

翌朝学校

(桜田亮)「笹枝」

(笹枝沙弓)「え…」

昨日のことをぼ~っと思い出していたら、桜田くんが私を見下ろしていた。

(桜田亮)「ついてこい」

そう言ってすたすたと歩き出した。

(笹枝沙弓)「え、ちょっと待って!」

着いた先は第二音楽室だった。

(桜田亮)「叩いてみろ」

そう言って指さした先は、ドラム?

(笹枝沙弓)「あの…」

(桜田亮)「実力が見たくなった」

久しぶりに触れるドラム。でも…

(笹枝沙弓)「ひかない?」

(桜田亮)「は?」

(笹枝沙弓)「私、本気で叩くと人が変わるみたいなの」

(桜田亮)「いいから叩け」

すぅ。大きく息を吸い込んだ。1、2、3、スティクから響く音。この振動がたまらなく好き。激しく、もっと。もっと。リズムに合わせて身体がはずむ。やっぱりドラムは気持ちがいい。

(桜田亮)「…すげぇ」

手を止めたあと小さく彼の声が聞こえた。

(桜田亮)「俺のアレンジ出来るか?ここなんだけど、」

そう言って席を代わった。彼の音は安定感がある。でも、スリル感がない。迫力が足りない気がした。

(笹枝沙弓)「ドラムはもっとはじけていいと思う。その分、ベースとギターがなんとかしてくれるから。うん、桜田くんのドラム安定感抜群だからそこは生かしていけばいいと思う。例えばここはこう、叩くとか」

(桜田亮)「そうか!じゃぁここもこう叩いていいのか?」

(笹枝沙弓)「うん!いいとおもう!さっきよりいいと思う!」

(桜田亮)「…ありがとな」

そう言ってわしゃわしゃとぶっきらぼうに私の頭をなで回した。

(笹枝沙弓)「もう!ぐちゃぐちゃになっちゃう!…はは」

(桜田亮)「お前とこうしてると落ち着く」

(笹枝沙弓)「え?なんか言った?」

(桜田亮)「なんでねーよ」そう言って目を細めた。

授業サボっちゃった。

昼休み

(上田美加)「あ、やっと戻ってきた。沙弓どこに行ってたの?あら、桜田くんと一緒だった?」

(笹枝沙弓)「うん、ドラム叩いてた。」

(上田美加)「そう、私も見たかったわ。ドラム叩いてる沙弓格好いいもの」

(笹枝沙弓)「もう封印したつもりだったんだけどね。」

(戸田龍斗)「沙弓ちゃん!ごはん一緒食べよー!上田ちゃんもー。」

ぴょんと現れた戸田くん。

鞄からお昼のごはんを取り出す。美加はパンとイチゴミルク。私は手作りお弁当とパックのお茶。戸田くんは女子から貰ったらしく沢山の菓子パンとジュース。

(笹枝沙弓)「戸田くん、私ジュース飲みたい!お茶と交換してもらえる?」

確かお茶の方が好きって言ってたよね。

言葉の意味を戸田くんも分かったらしく、

(戸田龍斗)「うん、交換しよー。…ありがとう」

小さくお礼を言ってくれた。

(戸田龍斗)「沙弓ちゃんのお弁当自分で作ってるのー?」

(笹枝沙弓)「うん、パパの作るついで。」

(小玉真咲義)「いいなぁ美味しそう」

真後ろで声が聞こえた。

(笹枝沙弓)「小玉くん、よかったら明日から皆の分作ってこようか?もちろん美加の分もね!」

(上田美加)「ふふ、ありがとう、楽しみにしてるわ。沙弓、料理上手なのよ、甘えてみたら?」

(小玉真咲義)「じゃぁお願いしようかな」

(戸田龍斗)「僕も楽しみー!」

何気ない毎日が刺激的な毎日に変わった。真咲義くんと呼ぶようになった。雪くんと呼ぶようになった。亮くんと呼ぶようになった。龍斗くんと呼ぶようになった。2ヶ月があっという間にやって来た。

2ヶ月後

放課後第二音楽室

(笹枝沙弓)「皆、約束の2ヶ月が経ったね、5曲作りした。本当は歌詞だけのつもりだったんだけど皆と一緒に過ごしてくうちにメロディが浮かんできたの。4曲今、ここで聞いてもらいます。5曲目は私の家で聞いてほしいの、パパ含めグレートハートが曲弾いて私が歌います。」

私はギターを持った。

そして深呼吸してから

(笹枝沙弓)「一曲目は真咲義へ、聞いてください」

まっすぐで真が強くて、でも自分に厳しくて完璧を求め過ぎて壊れてしまいそうで放っておけない。側で支えていたくなる。それを歌詞に込めた。力強くそして優しいゆっくりなゆっくりなリズムの曲を作った。

(笹枝沙弓)「2曲目は、雪くん。聞いてください」

始まりはクールに。でも中身は違う。温かくて思いやりがあって、心配性で、冷たく見えて全然違う熱い人。それを歌詞に込めた。激しいテンポとユックリをこうごに組み合わせた曲を作った。

(笹枝沙弓)「3曲目は、亮くん。聞いてください」

ノリの良い、単純で素直で、自分に足りないものをすぐに吸収しようと努力する裏表のないところを歌詞に込めた。テンポの良い安定した曲を作った。

(笹枝沙弓)「4曲目は、龍斗くん。聞いてください」

嘘をついたことで人を傷つけない優しさをもつことのできる力をもつ人。笑顔で癒すことのできる力をもつ。そこを歌詞に込めた。耳に残る心地良いテンポの曲を作った。

4人は黙ったまま。

そのまま、私の家に向かった。

(沙弓)「パパ、ただいま」

(父)「沙弓お帰り」

(小玉真咲義)「はじめまして、お邪魔します」

(木野田雪)「お邪魔します」

(桜田亮)「どうも」

(戸田龍斗)「失礼します」

防音室

(沙弓)「グレートハートのメンバーが5曲目を弾いてくれるの。私は歌うだけ、今までのお礼を込めて歌います、聞いてください」

今までのことを思い出しながら心を込めて歌った。

約4分間、皆は私を真っ直ぐ見つめてくれていた。

(笹枝沙弓)「…これで終わります。皆今までありがとう!とっても楽しかった。忘れない思い出になった。」

(小玉真咲義)「思い出にしちゃっていいの?」

(木野田雪)「俺達は明日からまた他人か?」

(桜田亮)「もう関わりたくないのか?」

(戸田龍斗)「寂しくないの?」

(笹枝沙弓)「…終わりにしたいわけないじゃん!寂しいに決まってる…もっと一緒にいたいよ!龍斗くんの返事まだしてないし!」

(小玉真咲義)「じゃぁこれからもこのままで良いんじゃない?」

(木野田雪)「まだ側にいたい」

(桜田亮)「言われなくても分かるだろ」

(戸田龍斗)「僕の気持ちは変わってないよー」

(父)「さすが俺の自慢の娘だ。モテモテだな。」

音楽の力は凄い。

私はこれからも4人と音楽で繋がっていきたい。


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