恋愛小説

それぞれの思いを胸に~短編恋愛小説


何かを諦めたような冷たい瞳。
そんな彼に私は恋をした。

(クラスメート男子1)「泥道おはー」

(クラスメート男子2)「お前寝癖ついてんぞー」

(泥道雪子)「え?!うそ?!」

(クラスメート男子2)「嘘だし、はは!」

(泥道雪子)「もう!次、宿題忘れても見せてあげないからねー!」

教室に入っていく男子二人に言葉を浴びせた。

私は泥道雪子。高校二年生。

(クラスメート女子1)「雪子ちゃんおはよ!」

(クラスメート女子2)「泥っちおはー」

(泥道雪子)「おはよ!」

クラスメートとそれなりに仲が良い。髪が肩にかかるのがうっとうしくていつもショートヘアー。髪が痛むのが嫌で一度も染めてない真っ黒の髪。

(笹本恵美夏) 「雪子」

後ろから透き通る聞きなれた声が耳に届いた。

振り返ると

(泥道雪子)「恵美夏おはよ」

(笹本恵美夏)「おはよ。今日、体育あるわね、憂鬱だわ」

そう言って長い艶のある髪を耳にかけ、ふわりとシャンプーの香りが微かに鼻にかすめた。


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笹本恵美夏。美人でクールな彼女は私の親友。茶色い髪に巻き髪がとても似合う。性格は私と正反対だけど恵美夏は私を否定したりしない。ちゃんとすべてを受け止めてから自分の意見を話してくれる。ただ合わせるのではなく主張してくれるから私は恵美夏が好きだ。

(泥道雪子)「そう?ストレス発散出来るよ?」

(笹本恵美夏)「体育の時間楽しみにしてるの雪子くらいよ。ふふ、でもあなたらしい」

目を細めて微笑む恵美夏は誰よりも綺麗だと思う。

席につき椅子に腰かける。机に影が出来てふと上を見上げた。

(北川孝人)「よ、」

(泥道雪子)「図体でかいのでた」

(北川孝人)「お前が小さいんだよ。それから人を指差すんじゃありません」

そう言って私の指をギュウと握った。

(泥道雪子)「痛い!乙女に何すんの!」

(北川孝人)「乙女はそんなに足を開きません」

(泥道雪子)「中にジャージ履いてるしー」

(北川孝人)「そう言う問題じゃないんだけど雪子には分からないか」

そう言って隣の席に腰かけた。北川孝人。明るい性格で男女とも仲が良い。黒髪の短髪が爽やかでよく似合っている。私には意地悪なこと言ってくるけどなれって怖い。今はそれが普通というかやり取りが楽しい。

(茶菓友吉)「…うるせぇ」

孝人の後ろに腰かけた彼は

(北川孝人)「お、茶菓!今日は遅刻なしだな」

茶菓友吉。無口で誰とも群れない。金髪の髪がよく似合う整った顔立ち。

(泥道雪子)「茶菓くんおはよう」

(茶菓友吉)「…」

今日もダメか…。茶菓くんは私が嫌いなのか、毎日声をかけても無視されてしまう。目も合わせてくれない。それでも私が茶菓くんに声をかけるのには理由がある。

ある日の放課後

(クラスメート男子1)「泥道誰とでも相手してくれるらしいよ」

忘れ物をして教室に戻ろうとした時、中から男子の声が聞こえて私の名前があがってとったさに身を隠した。

(クラスメート男子2)「へぇー、でも俺、泥道みたいな軽い女無理」

…私軽くない。まだしたことない。

(クラスメート男子1)「あー、確かに!女扱い出来ないよな!あはは!」

勝手なことばかり!悔しいのに膝を抱えてしゃがみこんで泣くことしか出来なかった。
その時、足音が私の前を通りすぎた。

(茶菓友吉)「あんたら、毎日鏡見てんの?見た目も中身も腐ってんじゃねーの」

(クラスメート男子1)「茶菓!」

茶菓くん?

(茶菓友吉)「泥道はそんな女じゃねーよ」
そう言って教室を出ていった。

教室は静まり返っているようだった。

しゃがみこんでる私に温かい大きな手がポンと頭に触れてからスタスタと背を向けて帰っていった。

私は茶菓くんの優しい一面を知っている。あの時、嬉しくて胸がポカポカした。それからなんだかもっと茶菓くんを知りたくなった。


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(木ノ下樹)「泥道さん、友吉は照れてるんだよ。だから明日もめげずに挨拶してあげてね」

(泥道雪子)「木ノ下くん、ふふ。ありがとう、うん。明日も挨拶するよ」

(茶菓友吉)「樹、余計なこと言うな」

木ノ下樹。優しくて大人っぽくてお兄ちゃんみたいな存在。黒ぶちメガネに落ち着いた茶色い髪。

(茶菓友吉)「さっさと自分のクラスに戻れ」

(木ノ下樹)「はいはい、泥道さんまたあとでね」

(泥道雪子)「うん、またね!」

(茶菓友吉)「誰にでもへらへらすんな」

(泥道雪子)「え?」

(茶菓友吉)「何でもねぇ」

体育時間
隣のクラスと合同。

(泥道雪子)「身体思いっきり動かせるー!」

(笹本恵美夏)「ふふ、雪子くらいよ、体育に熱はいるの」

(泥道雪子)「そう?恵美夏は今日大丈夫?バスケだけど」

恵美夏は運動が苦手。中学まで身体が弱くて入院と退院繰り返していたと聞いた。

(先生)「じゃぁはじめはシュートの練習からー」

(女子1)「はいらなーい」

(女子2)「キャッ、跳ね返ってきた!」

(先生)「次、泥道」

(泥道雪子)「はい」

しゅっ

(先生)「よし、次、笹本」

(笹本恵美夏)「…はい」

ポトッ

(先生)「全然届いてないじゃないか、もっと力入れて遠くに投げる」

(女子1)「ダサ」

(女子2)「笑える、はは」

(泥道雪子)「恵美夏!ホームは綺麗だったよ!」

(笹本恵美夏)「雪子…」

彼女は切なく微笑んだ。

(先生)「じゃぁグループ決めて試合しろー」

(笹本恵美夏)「雪子…」

(泥道雪子)「恵美夏はもちろん私と同じチームね!」

ホッとした様子の彼女に私は微笑みを返した。

(先生)「試合始め!」

(同じグループ女子1)「やだボール来た!」

(泥道雪子)「こっちにパスちょうだい!」

(同じグループ女子1)「うん!」

ここからならシュート入るかも!シュッ

(同じグループ女子1)「凄い!入った!」

(泥道雪子)「次もいれるよー!」

(同じグループ女子達)「おー!」

(泥道雪子)「恵美夏、大丈夫?無理はしないでね」

(笹本恵美夏)「ありがとう、でも大丈夫」

どこか元気がないように見えた。

(同じグループ女子2)「パスちょうだい!」

(同じグループ女子3)「はい!」

連携プレイで次々点をとっていく。

(同じグループ女子4)「笹本さん!」

(笹本恵美夏)「え」

(敵グループ1)「邪魔なのよ!」

ドンッと女子に押されて恵美夏が倒れそうになりとっさに私は彼女に駆け寄った。

(笹本恵美夏)「雪子!」

(泥道雪子)「痛っ、恵美夏怪我ない?大丈夫?」

(笹本恵美夏)「私のことより雪子、血…」

彼女は私の腕の中にスッポリ入っていて怪我してる様子はなかった。よかった…間に合った。でも足ひねったみたい。じんじんと鈍い痛みが襲う。取り合えず…

(笹本恵美夏)「どうして床にはいつくばってるの?」

(泥道雪子)「えーと…」

すると急に身体が浮いた。

(茶菓友吉)「こいつ借りる」

(泥道雪子)「え?!」

隣で男子がバスケしていたはずなのに。なのに私なんで茶菓くんにかつがれてるんだろう。


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(茶菓友吉)「痛いんだろう、脚。あと額から血出てる」

(泥道雪子)「うん…あ、血はたぶんヘアピンがぶつかっただけだと思う。だから大したことないよ、えーと…」

(茶菓友吉)「笹本は心配ない。樹が見てる」

(泥道雪子)「木ノ下くんが?」

(茶菓友吉)「ああ」

それなら少し安心かな。一人にするのは不安だったから。

(泥道雪子)「どうして気づいたの?」

(茶菓友吉)「…見てたから」

(泥道雪子)「見てた?」

(茶菓友吉)「…忘れろ、何でもねぇ、偶然だ」

そう言って自分の髪をワシャワシャとかきみだした。

保健室に着くとノックもせずにガラッとドアを開けた茶菓くん。

(茶菓友吉)「…誰もいないのかよ、脚出せ。冷やす」

そう言ってビニール袋に氷をいれて痛めた右足にそっとあててくれた。

熱をもった足首にはひんやり冷たくて気持ちいい。

(茶菓友吉)「…北川じゃなくて悪かったな」

(泥道雪子)「孝人?」

(茶菓友吉)「ああ、あいつ、試合中で気づいてなかった。お前ら付き合ってんだろ」

(泥道雪子)「え?!付き合ってないよ!友達だよ」

しゃがみこんで脚を冷やしてくれていた茶菓くんが固まった。

(茶菓友吉)「…は?」

(泥道雪子)「へ?」

(茶菓友吉)「ふ、樹にやられた。あいつでたらめ言いやがって」

(泥道雪子)「茶菓くんが笑った…」

(茶菓友吉)「!」

彼はこぶしで口元を隠した。

(泥道雪子)「どうしたの?」

覗こうとすると

(茶菓友吉)「!見るな!」

(泥道雪子)「びっくりした…。茶菓くん突然大きい声出すから。こんな声も出るんだね!」

すると何故か溜め息をつかれた。

(茶菓友吉)「お前なぁ」

ガラッ!勢いよくドアが開いた。

(北川孝人)「雪子!大丈夫か?!」

(泥道雪子)「孝人?!どうしたの?!汗びっしょり!」

(北川孝人)「雪子が怪我したって聞いて…茶菓ありがとう、あとは俺が側に居るから」

孝人の冷たい視線が茶菓くんに突き刺さっているように見えた。

(茶菓友吉)「今いいところだったんだけど」

そう言って私のおでこに優しく唇をおしあてた。

(泥道雪子)「茶菓くん?!」

茶菓くんの胸を両手で押した。

(北川孝人)「なにしてんだよ!」

孝人が茶菓くんの胸ぐらを掴んだ。

(泥道雪子)「孝人!何もされてないよ!茶菓くん孝人のことからかってるだけだよ!だから手放して?」

孝人は私の言葉に渋々納得してゆっくり手を放した。

(北川孝人)「怪我大丈夫?」

(泥道雪子)「うん、ちょっとじんじんするけど大したことないよ」

茶菓くんを見る目とは違って優しい瞳で私を見つめる孝人。

(北川孝人)「今日もバイトあるのか?」

(泥道雪子)「うん、このくらい平気だから出るよ」

(茶菓友吉)「バイトしてんの?」

今まで黙っていた茶菓くんが口を開いた。

(泥道雪子)「うん、半年前からラーメン屋でバイトしてるの」

(茶菓友吉)「バイト先まで送る」

(泥道雪子)「え、大丈夫だよ!」

(茶菓友吉)「送る」

なんだろう。まっすぐな瞳が私をとらえて言葉をつまらせた。

(泥道雪子)「…わかった、茶菓くんに送ってもらう。孝人心配してくれてありがとうね」

(北川孝人)「俺は何もしてないよ…」

彼は微笑んでいるのにどこか悲しげに私の瞳には映った。

コンコン
ドアにノックの音が聞こえたあとゆっくりとドアが開いた。

(笹本恵美夏)「失礼します」

(泥道雪子)「恵美夏」

制服に着替えた恵美夏が静かに中に入ってきた。

(笹本恵美夏)「…雪子大丈夫?着替え持ってきたよ。次の授業出られそう?」

(泥道雪子)「ありがとう。大したことないよ、授業は出られるよ」

私は笑う。辛いときも苦しいときも。いつもそうしてきたから。そうしないと私の周りには人は集まらないから。一人でいるのは怖い。周りでバカやってるほうがいい。自分という人格をころしてでも。でも…

(茶菓友吉)「うそくさい」

彼には敵わないんだ。彼はそう一言呟いてから保健室を出ていった。

恵美夏と孝人にも先に行っててもらい私は着替えてから保健室を後にした。その後も授業をうけ茶菓くんが応急処置をしてくれたおかけで脚の痛みはほとんど良くなっていた。


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下校時間

(茶菓友吉)「…かばん」

乱暴に立ち上がって近づいてきたと思ったら私の前まで来て手を伸ばした。

(泥道雪子)「このくらい持てるよ!はは、おおげさだなぁ」

(茶菓友吉)「うるさい、いいからかばん出せ。」

渋々かばんを渡した。

(茶菓友吉)「バイト先案内しろ」

(泥道雪子)「あ、うん」

バイト先は学校先から割りと近い。彼はけして隣を歩かない。けれど、私の歩幅に合わせて遠からずちょうど良い距離をたもってくれている。素直にうれしいと思った。心の奥がむずがゆくで、でも温かく感じた。

(泥道雪子)「ねぇラーメン好き?」

私の問いかけに脚を止めた。

(茶菓友吉)「突然なに」

(泥道雪子)「お礼にバイト先のラーメンおごらせて?」

彼は振り向いて

(茶菓友吉)「…ギョーザもつけろ」

そう言って微かに笑った。

(泥道雪子)「笑った…茶菓くんが笑った」

(茶菓友吉)「笑ってない」

そう言って前へ向きなおした。後ろ姿を眺め、なんだろう彼が何だか可愛く見える。
また距離をとってバイト先まで歩いた。

バイト先 ラーメン屋

(泥道雪子)「おはようございます!」

(店長)「おう!今日も元気だな!雪子ちゃん」

(泥道雪子)「それだけが取り柄なんで!あ、店長、この人にラーメンとギョーザ1つお願いします!会計は私持ちで!ちょっと怪我してそれでここまで送ってくれたんでお礼にと思って」

(店長)「そうか!兄ちゃんありがとな!じゃぁギョーザの分はサービスするよ」

(茶菓友吉)「…いえ」

(泥道雪子)「店長ありがとうございます!」

にかっと笑う店長は一言で表すとワイルド。歳のわりに若く見える。のりもいい。何より働いてて楽しい。

ラーメンとギョーザを茶菓くんはもくもくと食べているのをチラッと見たあと私はバタバタと働いた。

彼が私の働く姿を見つめていたなんて知らなかった。

結局彼は私の上がる時間までいて帰りも家まで送ってくれた。

(泥道雪子)「家までありがとう」

(茶菓友吉)「ああ、また明日な」

彼の大きな手が私の頭の上にのって離れた。今、頭ポンってされた?今日の茶菓くん変…。もやもやした感情が残ったまま夜を過ごした。

翌朝 学校

(笹本恵美夏)「おはよ、どう?脚大丈夫?」

心配そうな顔の恵美夏。

(泥道雪子)「恵美夏おはよ!もう大丈夫!平気だよ!」

(北川孝人)「雪子…」

何か言いたげな孝人。

(泥道雪子)「孝人、どうかした?」

(北川孝人)「いや、なんでもない」

どうしたんだろう。切なく笑う孝人が気になったけど何も言えなかった。何て声をかけて良いか分からなかった。

(笹本恵美夏)「孝人くん…」

恵美夏が孝人を見つめる瞳は透き通るように吸い込まれるように真っ直ぐで綺麗だった。

(泥道雪子)「恵美夏…」

(木村桃)「孝人くん!」

恵美夏に声をかけようとしたとき、声が重なった。木村桃。揺れるボブヘアーに甘い香りがツーンと鼻をかすめた。

(北川孝人)「木村さんどうしたの?」

(木村桃)「今日皆でカラオケ行こうって話になって孝人くんも行こう?」

どう自分が可愛く見えるか計算しているかのような仕ぐさと目線。

(北川孝人)「ごめん、今日は雪子達とカラオケ行くから」

(泥道雪子)「え?」

(木村桃)「じゃぁ泥道さん達も一緒ならいいよね?」

(北川孝人)「まぁそれならいいよ」

(泥道雪子)「孝人!何勝手に決めてるの!?」

(北川孝人)「いいじゃん、どうせ今日バイト休みの日だろ?」

(泥道雪子)「まぁそうだけど…」

(北川孝人)「笹本さんも行くよね?」

(笹本恵美夏)「雪子が行くなら…」

(北川孝人)「じゃ決まり」

私、木村さん苦手なんだけどな…。でも言えない。行きたくないなんて。嫌な空気作りたくない。

木村さんは微笑んでから自分の席に戻っていった。

昼休み

恵美夏と中庭でお弁当を広げて私は口を開いた。

(泥道雪子)「恵美夏、いつまで黙ってるつもり?」

(笹本恵美夏)「え?」

(泥道雪子)「孝人のこと好きなんでしょ?」

ぴたりと彼女の動きが止まり目を見開いた。そしてゆっくり口を開いた。

(笹本恵美夏)「気づいてたのね」

(泥道雪子)「うん、いつも孝人のこと目で追ってたしね。そりゃぁ気づくよ」

(笹本恵美夏)「そっか」

(泥道雪子)「応援するよ、今日のカラオケ楽しもうね!」

(笹本恵美夏)「そうね、ありがとう雪子」

目を細めて微笑む彼女はどこか遠くを見ているように切なそうで、でも何も言えなかった。


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放課後

(木村桃)「孝人くん行こう」

孝人の制服の袖をちょんと摘まむ木村さん。

(北川孝人)「おう、雪子達も行くぞ」

(泥道雪子)「あ、うん今行く」

急いで机の中の物をかばんの中に詰めこんで恵美夏と歩き出そうとした。

(茶菓友吉)「行くな」

(泥道雪子)「え?」

ざわつく教室内。私の耳にはっきりと届いた彼の言葉。

(木ノ下樹)「友吉、迎えに来たよ」

タイミングよく木ノ下くんが隣のクラスから出てきた。

(茶菓友吉)「どうしても行くなら俺も行く」

さらにざわつく教室。

(木村桃)「え!茶菓くんも来てくれるの?!行こ!行こ!」

(桃友達1)「どうしよう!茶菓くんも一緒とか嬉しいんだけど!」

(桃友達2)「これ絶対チャンスだって!」

(桃友達3)「私メイク崩れてない?!大丈夫?!」

(木ノ下樹)「何か騒がしいけどどうしたの?」

不思議そうに首をかしげる木ノ下くん。

(泥道雪子)「…皆でカラオケ行くことになって何故か茶菓くんも」

すると目を見開いたあと

(木ノ下樹)「なるほどね」

とにっこり微笑んだ。

そして

(木ノ下樹)「俺も参加して良いかな?」

木村さんに優しい瞳で問いかけていた。木村さんの友達がきゃーきゃー騒ぎだした。

(桃友達1)「桃!どうなってんの?!」

(木村桃)「私にも分からないよ!」

(木ノ下樹)「俺も良いんだよね?」

なかなか返事が返ってこないことにしびれを切らして木ノ下くんが口を開いた。

すると木村さんは

(木村桃)「あ、うん!もちろんだよ!」
と可愛くうなずいた。

カラオケ店まで歩くなか、気がつけば恵美夏は木ノ下くんと並んで話していた。良かった。

彼女は大人数でいるのが苦手だから。私が恵美夏と仲良くなったきっかけもいつも一人でいるのを見かけて気がつけば目で追うようになって思いきって話しかけてみたら魅力的な女の子だった。私は彼女が幸せならそれで良い。でも辛い思いをしているなら私は自分自身を殺してでも守りたい。助けたい。

(茶菓友吉)「おい」

後ろから声がして振り返った。

(泥道雪子)「茶菓くんどうかした?」

不機嫌丸出しの茶菓くんが私を見ていた。

(茶菓友吉)「何で北川がお前のとなりにいる」

(泥道雪子)「孝人?遊ぶときはだいたい隣に並ぶよ」

(茶菓友吉)「…」

あ、

(泥道雪子)「瞳、前の時の怖いときみたい。駄目だよそんな瞳、茶菓くんには似合わない」

そっと頬に指先で触れた。

(茶菓友吉)「泥道…」

猫みたいに目を細めてなついてるように見えて私の心は高鳴った。

隣で歩いていた孝人が

(北川孝人)「雪子何やってんの?」

私の左手をぎゅっと握りしめて笑顔で問いかけた。孝人の笑顔に違和感を感じた。

けれど私は

(泥道雪子)「何でもないよ」
何もなかったかのように笑顔で返していた。

(北川孝人)「何でもないなら軽々しく男子に触れると誤解招くぞ」

(泥道雪子)「そういう孝人は私の手握ってるけど?」

(北川孝人)「俺は良いの」

(泥道雪子)「はは、なにそれ」

恵美夏の気持ちをちゃんと確認した以上こういうことはあまりしたくない。好きな人が他の女子と触れ合ってたら嫌だと思うのが普通だもの。

カラオケの室内に入って木村さんが孝人の隣を当たり前のように座ろうとしていたから木ノ下くんの隣が木村さんその隣が孝人、孝人の隣が恵美夏。恵美夏が少しでも孝人と話せるようにさりげなく席を誘導した。

そして木ノ下くんに耳元で

(泥道雪子)「今度奢るからなるべく木村さんの邪魔してくれない?」

彼はまっすぐ私を見つめたあとふっと笑みを浮かべ

(木ノ下樹)「笹本さんと関係してるでしょう?」
恵美夏の名前を出した。

(泥道雪子)「え…」

(木ノ下樹)「大丈夫、本人から話聞いてるから。俺ね、笹本さんに片想いしてて前に告白したんだ。その時、好きな人がいるからって振られたんだ。でも友達として仲良くしてほしい言ったら笑顔でうなずいてくれた。だから、今はだいたいのことは知ってるよ」

そうだったんだ…。


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(泥道雪子)「恵美夏から何も聞いてなかったから…びっくりしたけど、それなら話は早いね。私の言いたいことわかるよね?」

(木ノ下樹)「はは!泥道さん不適な笑みになってるよ」

(泥道雪子)「木村さんの邪魔をしてくれれば私は満足だから。あとは恵美夏の行動力しだいかな」

(木ノ下樹)「そうだね。笹本さんが言ったとおり泥道さんって友達思いだね」
目を細めて微笑む木ノ下くん。

(泥道雪子)「そうかな、恵美夏だから幸せになってほしいんだ」

(木ノ下樹)「そっか」

(泥道雪子)「うん」

二人で微笑み合った。恵美夏の反対側の隣に私、その隣に茶菓くんが座った。

カラオケに来たのに女子たちはなかなか歌う様子がない。男子たちに質問攻め。歌いに来たんじゃないの?歌う気ないなら私歌うよ?

イントロが流れる。

(桃友達1)「何?ロック?誰かけたの?」

(桃友達2)「私じゃないよー、えー誰ー?」

マイクを握り

(泥道雪子)「私ロック歌いまーす!」

立ちあがり、熱唱した。

チラリと孝人と恵美夏を横目で見ると楽しそうに笑っていてほっと肩の荷が下りた。歌い終わりすとんと腰を下ろす。

(茶菓友吉)「…おせっかい」

(泥道雪子)「何が?」

耳元で話す茶菓くん。それに答える私。こんなに話すの今日が初めてかもしれない。

(茶菓友吉)「笹本のこと」

(泥道雪子)「え?!知ってたの?」

(茶菓友吉)「さっきから泥道の言動見てたら丸分かり。それとロックはこうやって歌う」

そう言ってピッとリモコンで送信した曲は有名な曲だった。イントロが流れて歌い出した瞬間鳥肌が立った。低くて甘い声。本当に茶菓くんが歌っているのかって疑ってしまうほど夢中で聞き入った。

周りの女子達はきゃーきゃーとうるさかったけど彼の声に集中していた。

それからは徐々に皆歌い出し、盛り上った。

あっという間に解散の時間になった。

(泥道雪子)「孝人、恵美夏と途中まで方向一緒だよね、そこまで送ってあげてー。暗いしさ」

(木村桃)「私も…」

確か木村さんは方向違ったはず。

(北川孝人)「分かった。笹本さん行こうか」

(笹本恵美夏)「うん、雪子また明日ね」

(泥道雪子)「また明日。孝人ー、恵美夏のこと可愛いからって襲わないでよー」

(北川孝人)「お前なぁー、ふざけたこと言ってないでさっさと帰れ、お前も一応女なんだから」

(泥道雪子)「はいはい、じゃぁねー。」

ちらっと木村さんの方を見たら木ノ下くんが隣に立っていた。でも明らかに作り笑顔の木ノ下くん。そんなことにも気づいていないのか木村さん達は舞い上がっていた。

(茶菓友吉)「行くぞ」

(泥道雪子)「え?」

右手に温もりを感じて見上げると茶菓くんが私の横にいて真っ直ぐ前を向いていて、でも彼の左手は私の右手をしっかり繋いでいた。
また家まで送ってくれて、その間私たちは何も会話はなかったけれど不思議と気まずい気持ちはなかった。なんだか彼の手の温もりが心地よくて居心地よくて、不思議な気持ちだった。また昨日と同じく優しく頭を優しくポンと手をおいて背を向けて帰っていった。

夜 恵美夏から電話がかかってきた。

(泥道雪子)「もしもし?」

(笹本恵美夏)「雪子…私、さっき孝人くんに告白したの」

彼女らしくない動揺を隠しきれていない震えた声。

(泥道雪子)「そっか、孝人は何て言ったの?」

(笹本恵美夏)「気持ちだけ伝えたかったの。だから返事はまだしないでって言った」

(泥道雪子)「どうして?付き合いたいとか思わなかったの?」

(笹本恵美夏)「叶わないから」

(泥道雪子)「そんなことないよ。今日だっていい感じだったじゃん!」

(笹本恵美夏)「雪子には分からない!」

(泥道雪子)「なんで?!なんでそんなこと言うの!私は恵美夏のこと考えて言ってるのに!」

(笹本恵美夏)「そこが分かってないって言ってるの!」

(泥道雪子)「もういい!」

電話を切ってベットの上にうつ伏せになった。

どうして私が怒られるの?恵美夏のこと思って言ってるだけなのに!どうして分かってくれないの!

モヤモヤした気持ちのまま夜を過ごした。


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翌朝 学校

(クラスメート女子1)「雪子ちゃん、おはよー」

(泥道雪子)「おはよ!」

(クラスメート女子2)「泥道さん今日も元気だねー」

(泥道雪子)「ご飯いっぱい食べてきたからね!」

(クラスメート女子1)「はは!雪子ちゃん単純!」

(泥道雪子)「へへ」

ふと教室の入り口で恵美夏が入ってくるのが見えて声をかけようと口を開いた。

(泥道雪子)「恵美夏おはよ」

(笹本恵美夏)「…」

彼女は何も言わず自分の席についた。

(クラスメート女子1)「何今の。感じ悪っ」

(北川孝人)「俺のせいか?」

後ろから声がして振り向いた。

(泥道雪子)「孝人、ううん違うよ。だから気にしないで」

笑顔で答えた。でも苦しかった。嘘をついているようで…。

(茶菓友吉)「何があった」

気がつけば目の前に茶菓くんがまっすぐ私を見つめていた。それがなんだか嬉しくて涙があふれた。

(茶菓友吉)「こっちにこい」

そう言って手を引かれ屋上まで足を進めた。

(茶菓友吉)「何があったか話せ」

低く、でも落ち着いた声が私の耳に優しく響いた。私は昨日のことを泣きながら途切れ途切れ、でも一生懸命話した。

(茶菓友吉)「北川のことマジで気づいていないんだな。そんなに泣くな」

そう言って袖で不器用に私の頬についた涙を拭った。

(泥道雪子)「もう何がなんだか分からないよ…」

うずくまる私に彼はゆっくり話始めた。

(茶菓友吉)「俺、恋とか嘘臭いと思ってた。ただの自己満足だろうって。俺の母親も親父を裏切って他の男を選んだ。けど、ある日偶然女が告ってるとこでくわした。男は興味無さそうな素振りで振っているのを見て俺はなんとも思わなかった。でも男が立ち去った後、泣きじゃくる女の元にお前が…
泥道が慌てて駆け寄ってきて抱きしめて言った
“頑張ったね、よく頑張った。今の気持ちは無駄じゃない。人を好きになることは素敵な事だよ。”
そう言って今まで見たことない優しい顔で微笑んでた。教室でバカみたいに笑う笑顔じゃなかった。その姿が忘れられなかった。恋にまっすぐなお前が気になって仕方がなかった。それからずっと見てきた。ずっとだ。…好きだ。」

そう言って私に優しく微笑んだ。

いつか茶菓くんの笑顔を見たいと思っていた。こんな形で見ることになるなんて思いもしなかった。一本一本絡み合った糸をほどくように彼を近くに感じるようになって私は“友達”とは違う感情を抱いていたのかもしれない。

でも今は恵美夏とちゃんと向き合いたい。
大切な友達だから。話し合いたい。

(泥道雪子)「茶菓くん、ごめん。今は私…」

(茶菓友吉)「分かってる。笹本のとこ行ってちゃんと話し合ってこい。返事はその後でいい」

(泥道雪子)「うん!」

私は屋上を飛び出した。

(泥道雪子)「恵美夏!」

教室で自分の席で視線を落として座っていた彼女の名前を叫んだ。驚いたあと悲しそうに私の名前を呼んだ。

(笹本恵美夏)「雪子…」

(泥道雪子)「恵美夏は私のこと嫌いになった?」

(笹本恵美夏)「そんなことない!」

(北川孝人)「笹本さんは俺の気持ちを知っているんだよ」

横から孝人が自然と話に入ってきた。

(泥道雪子)「孝人、どういうこと?」

(北川孝人)「俺ずっと雪子が好きだったんだよ。それを知ってても笹本さんは気持ちを伝えてくれたんだ。でも俺は気持ちは変わらない。だけど雪子もいるだろ?想ってるやつ」

孝人が私を?ずっとなかのいい友達だと思ってた。どんな思いで側にいたの?叶わないと分かっていて側にいて辛くなかったの?

(泥道雪子)「孝人は私を憎まないの?いっぱい傷つけてきたんだよ。知らなかったとはいえいっぱい…辛かったでしょ?」

孝人は困ったように笑って

(北川孝人)「雪子はバカだなぁ。全て俺が望んだことだよ。これでいい。雪子の気持ちは雪子の自由だろう?」

(笹本恵美夏)「雪子、さっきは無視してごめんね嫉妬したの。誰からも好かれて、何でも出来て。私にないもの何でも持ってて…雪子といるとみじめに感じるときがあったの。でも一緒にいるとき時の雪子も好きでやっぱり雪子が好き。側にいたい」

彼女は涙をこぼした。

(泥道雪子)「恵美夏、恵美夏は私にとって大切な友達だからね。」

笑顔で返した。

(笹本恵美夏)「ありがとう…」

涙でぐぢゃぐちゃの目を細めて微笑んだ。

(北川孝人)「雪子のこと待ってる奴いるだろ行ってこいよ」

そう言って笑った。

(泥道雪子)「うん!」

私は走り出した。屋上に向かって。

バン!勢いよく扉を開いた。

(泥道雪子)「茶菓くん!」

彼は優しく微笑んだ。


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