恋愛・結婚SS

馴れ初め 結婚~恋愛ショートストーリー


今朝、同僚から聞いた話がなかなかに印象的で、その日1日ずっと私の頭の中から離れなかった。

同僚の友人が今度結婚するらしいのだが、相手の方がイタリア人の国際結婚だというのだ。

そのくらいなら大して驚きはしないが、その馴れ初めが「飛行機でたまたま一緒だったから」というもので、それもさほど驚かない馴れ初めのように聞こえるが、その「たまたま」が実はたまたまではなく、登場口で同僚の友人に一目惚れした彼が、わざわざ彼女のすぐ近くの席の乗客に頼み込んで席を替わってもらい、偶然を装って彼女にさりげなく声をかけたというのだ。

しかも最初からナンパだと明確に分かる雰囲気ではなく、友人になりたいと思わせるような素振りでアプローチし、彼女自身も最初は良い友達ができたと思って仲良くなったらしい。

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そして、イタリア人の彼は日本人の多くの女性が見るとハンサムに見えたようで、実際イタリア人基準ではどうか分からないが、少なくとも彼がアプローチした女性にとっては「格好良い」顔立ちとスタイルだったようだ。

格好良いイタリア人の男性が友人にいるなんて、それだけでも楽しかったらしく、2人は急速に仲良くなった。
そして、気付けば恋人同士のようになっていたのだという。

「特に告白するとか、そういう感じじゃなくて、仲良くなったなー、と思ったら、いきなりプロポーズされたんだって」と同僚は言う。

共通言語は、最初こそ英語だったらしいが、彼が日本語を猛勉強したらしく、彼女もイタリア語を少し勉強し、今では3言語入り乱れて会話しているらしい。

そんな出会いが実際ある事そのものに「本当にあるんだぁ…」とにわかに信じがたいような気分になり、さらにゴールインまでするとは、私にとってはとても考えられない事だった。

この日は仕事後、大学時代の学友と食事する予定だったので、早速私はこの話題を取り上げた。友人は多少驚きながらも「私の知り合いでも似たような馴れ初めの人いるよ」と言いだした。

通勤電車や通学電車でお馴染みの顔、となる人がいるのはよくある事だが、それを意図的に実行したという話だった。

これもきっかけは一目惚れ。

というか、いつも見かける女性の読んでいる本がことごとく面白そうなものばかりで、気になった上に、なかなかの美人で、お近づきになりたいと思い、ひたすら同じ時間の同じ車両に乗ってきっかけを探していたという。

結局付き合って結婚したらしい。読んでいる本に興味を抱くという事は、趣味嗜好が似たような傾向にあったようで、すぐに意気投合したのだそう。

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「で、その”きっかけ”は何だったの?」
と聞くと
「よく分かんないけど、ある時突然ふいに声をかけられたって。その本、おもしろそうですね。どこで買われたんですか?って」
と友人が答えたので、きっかけを探していても見つからなかったから、勇気を振り絞ったんだろうなぁとぼんやり思った。

その話をしてくれた友人は結婚しているので「ちなみにおたくの馴れ初めは?」と聞いてみる事にした。

うちは人に紹介されて、かな。
ちょうど良い年齢の時にお互いフリーだったもんで、相手探ししてたんだよね。

共通の知人が「歳も近いし、多分性格的にも合うような気がするし、一度会ってみたら?」と勧めるので軽い気持ちで会ってみたら、確かに話は合うし、何度かデートを重ねて、とりあえず付き合ってみようという話になり、そのままトントン拍子で話が進んだの。

そう言う友人を見て、やっぱり紹介は強いよなぁ、と思う。

昔の縁談なんていうのもそうだと思うが、その人を知っている人から紹介されるのと、今でいう婚活業者などに仲介してもらい、人となりがよく分からない異性といきなり会ってみるのでは、全くベースが違うような気がする。

「あなたたち、お似合いだと思う」と誰かに背中を押されると、安心もできる。

一方で、婚活に力を入れてお似合いの相手を見つけた友人が、私たち2人の共通の友人でいるのもまた、確かな事実だった。

スピード婚という言葉が相応しく、出会ってわずか3ヶ月で入籍してしまったというなかなかのカップルだ。
結婚してもう3年が経つが、子宝にも恵まれて、変わらず家庭円満らしい。

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このカップルの馴れ初めは、婚活の中でもちょっと特殊な、「シュミ婚」というやつで、特定の趣味をもっているという共通点のある人たちが集まって相手を探すというものだった。

彼女は類稀なるアニメ好きで、なかなか同じ趣味を持つ「結婚相手として相応しい」異性に巡り会わず、思い切ってアニメ好きという共通項を重視した婚活をはじめてみたらしい。

すると、一見アニメオタクには見えないようなタイプの男性で、しかし実はアニメに相当深い造詣をもっている知的な男性が複数名いて、その中でも特にウマの合った人と結婚した。

馴れ初めはカップルの数だけあるよなぁと思いながら、ただの見合い婚だと聞いていたうちの両親にも今度もう少し話を掘り下げて聞いてみようかな、などと思った。

「見合い」のひと言で済ませば楽だが、両者合意するまでの経緯や、決断した時のポイントなど、気になる。

そんな私は今は独り身だけれど、結婚願望もそれなりにあるし、誰か良い人と出会わないかしら、と思っている。
私の人生勉強のためにも、先輩達の話に耳を傾けるのも良いかもしれない。

それから数週間後、たまたま実家に帰る用事があったので、両親の馴れ初めを聞きだすチャンス!とばかりにそれとなく知人たちの結婚の話などをしてから、「2人は見合いって言ってたけど、この人にするって決めたのっていつごろ?」と聞いてみた。

「両親揃ってる時に聞くなんて」と母からは文句を言われたが、そういう事にあまり頓着しない父はのんびりと「俺は母さんの釣書と写真見て、悪くないと思ったから、先方からOKが出ればすぐにでも結婚する気だったよ」と答えた。

母は恥ずかしがって答えてくれなかったが、代わりに初デートの時に父が和装で現れて衝撃を受けたエピソードを話してくれた。

「見合い写真が着物だったからな」と父はふてくされていたが「普段から着物なんて着てるわけないでしょう」と一蹴されていた。

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なんだかんだで結婚して40年、こうして上手くやってきているという事は、相性も悪くはなかったのだろう。
見合いだって立派な馴れ初め。今のご時世、少なくなってしまったけれど、昔はこれで、上手くいっていたのだし、今の世の中だって、基本的に見合い結婚という国も沢山ある。

私は、どうなんだろう、と考える。

何か運命的な出会いを求めているわけではないが、このまま普通の生活を送っていたら、誰かと出会う気配はほぼ皆無な気がする。残念ながら一目惚れされるような容姿ではないし、そこは期待できない。

そうなったら、なにかきっかけを作って、自分からアプローチしたいと思える相手を探さなければならない。

ううむ、やはり婚活しか道はないのか。
そんな小さな悩みを抱える私に、以前食事を一緒にした友人が「紹介したい人がいる」と言ってきた。

まさかの展開に「お、これは私も憧れの”共通の知人の紹介で”ってやつか!?」と俄かに興奮する。

二つ返事で話に乗って、まずは友人夫婦と4人で食事に行くという事で話がまとまった。

そしていよいよ食事する当日、若干緊張しながら指定されたレストランへ向かう。
服装や髪型など、色々気になってしまったが、そんな事を気にかけていても仕方がないので「えいや」の気持ちで扉を開けた。

「あれ?」

馴染みの友人夫婦の隣に、どこかで見かけたような顔があった。
知人ではないけれど、確かに知っている顔…。

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「え?」
相手も私の顔を見て目を見開いた。

「あの…もしかして、朝よく同じ電車に…」
「そう、中央線の9号車の…」

「えー!知り合い!?っていうか顔見知り!?」
友人の方が驚いて声を上げた。

確かに目の前にいる男性は、通勤中の電車でよく見かける顔だった。

「やだー!この前私が話した知人の馴れ初めと同じじゃない!」
友人は笑いながらそう言った。

友人の夫も「こんなことがあるもんだなぁ」と驚いている。

「こんな繋がりがあるもんですね」

「そうですね」

と私たちも多少ぎくしゃくしながらも、どこの駅から乗って、どこで降りるのかなど、話すきっかけができてそこからスムーズに仕事の話などに進める事ができた。

友人の夫と、彼が「この前話した知人の馴れ初め」について知りたがったので、その話をしたところ、友人の夫が「え、じゃあどちらかが…」と言いだしたので、慌てて「いやいやそんな、ストーカーじみた事は…」と答えた。彼もまた「僕もそんなつもりじゃ…。ただ、本当に偶然なんです」と弁解じみた雰囲気で返した。

「じゃあもう運命なんじゃないの?いいじゃん、お似合いだよ、2人」。

少し酒が入った友人がそんな風に言うのを苦笑しながら聞き流し、「それにしても毎日会っていたなんて不思議な気分ですね」という話に花が咲き、仕事帰りに食事に行きやすいという事に気付き、食事の約束をするまでの流れが自然にできた。

食事の約束をしたのは良いが、実際のところ、彼とはほぼ毎日顔を合わせているわけで、別れ際に、「また明日もお会いしますよね」という話になった。

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ここで不自然に時間や車両を変える事もないだろう。
しかし今まで完全に他人だった者同士が突然知り合いになって、しかも約1時間もの距離を一緒に移動するというのは、なんだかとても変な気持ちだった。

翌朝、同じように彼の顔を見かけた時、変にドキッとしたり、緊張する事なく「おはようございます」と笑顔で、なんだかホッとしたように話しかけられた自分が少し意外だった。

彼もまた、笑顔で挨拶を返してくれた。

通勤電車の中は、実はやる事だらけ。
メールのチェックや、SNSのチェックなど、この時間を利用しておこなっていた。
それに満員電車の中で会話をする人は少ないので、両者とも挨拶を交わしただけで、自分の世界に入っていった。

それでも、なぜだろう、私は内心ニヤついている自分に気付いてしまった。昨日までただの他人だった人と、挨拶を交わして、食事の約束もしているなんて。

なんだかいつもの通勤時間が特別な時間になったような気がして、わくわくした。

日を改めて2人で会うと、友人夫婦がいない分、彼と落ち着いて話をすることができた。
共通の趣味があるわけでもなく、仕事も全く違う分野で、家が近いこと以外特にこれといってピッタリはまるようなものは無いのだが、一緒にいて妙に居心地が良かった。

友人が紹介したいと言ったのはきっとそういうところに目をつけたのだろう。
私たちは、纏っている空気感がよく似ていた。

それはなんとなく自覚できて、一緒にいても疲れない、自然体でいられる、そんな相手を見つけられた事に、私は内心感謝していた。

彼は私の事をどう思っているのか、そこだけが少し気がかりだった。

「あの…こうやってお食事にお付き合いいただいているわけですけど、もしご迷惑だったら言ってくださいね」
と恐る恐る聞いてみると、
「いえいえ迷惑だなんてとんでもない!どうせずっと独り身で、このままいくんだろうなと思っていたので、今僕は実はかなり嬉しいんですよ。あまり、そういうの、表現するのが得意でなくて、すみません」
と返ってきた。

ほっと胸を撫で下ろして「じゃあ、これからもちょくちょくご飯、食べにいきましょうか」と笑顔で誘ってみると「ええ、ぜひ」と答えてくれた。

これから先、私たちがどうなるかは分からないけれど、今は、食事の時間を一緒に楽しむ事ができる相手と巡り会えたことが嬉しくて、楽しくて、引き合わせてくれた友人に感謝するばかりだった。

恋なのか、まだ分からない。でも、なんとなく恋の予感のようなものは感じていた。彼は大人しいし、引っ込み思案だったから、私からアプローチする事になるのかなぁとも、同時にぼんやり思っていた。

受け身派だった私にも、こんな機会がやってくるとは…と思いつつ、ひとまず今はこのわくわくする気持ちを楽しもう。

これが数年後に「私たちの馴れ初めはね…」と語れるようになるか、はたまたそうではない結末が待っているかは、まだ分からない。

でもこんな面白い馴れ初めなら後世まで語れるな、と内心ほくそ笑む私がいるのだった。

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