小説恋愛・恋活恋愛小説

パワーストーンで恋愛成就


本当に想いが届いて、本当に願いが叶ったって、なんか信じられないけど、現実に体験してしまったんだから仕方無いよね。
今の私は超ハッピー。やっと夢にまで見た彼氏ができたんだから。

やっぱり信じられないような気もするけれど、これは現実。
ほっぺをつねってみても、ちゃんと痛いんだから、間違いない。

手の中には小さなパワーストーンが大切に光ってる。
このパワーストーンのおかげで、この恋が実ったって、今ならそう思える。
恋愛成就のパワーストーンなんて、巷ではよく耳にするけれど、十代くらいの頃は「ホントかなぁ」と半信半疑で、特に興味ももたなかった。

でも、20代になって、出会いの機会がガクンと減って、学生の頃付き合っていた彼と別れてから、とんと恋人ができる気配すらなくなってしまった。

もう神様仏様に頼るしかないと思って、恋愛成就の神社に行ってみたり、おまじないを片っ端から試してみたり、あやしげな占い師にすがったり、色々やってみた。
自分でも、ちょっと必死すぎたかな、と今振り返ると苦笑い。

そんな中で、私の必死さを哀れんだ(?)親友が誕生日プレゼントにくれたのが、このパワーストーンのペンダントトップだった。


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パワーストーンといっても色々な種類のストーンがあるが、恋愛成就のパワーストーンといえば、言わずと知れたローズクォーツだ。淡いピンク色の鉱石で、和名は「紅石英」だが「バラ石英」と呼ばれることもある。石英がクォーツだから、バラ石英は、英名のそのままの訳になりそうだ。

その淡いほのかなローズ色から彷彿をさせるのは、恋心。ゆえに、愛や恋に効くパワーストーンとして絶大な人気を博している。

そんな、恋の成就のためには鉄板のローズクォーツに、私の誕生石であるアクアマリンを組み合わせた、かわいらしいペンダントトップを、親友は私に授けた。

3月の誕生石アクアマリンには、新しい船出とか、幸せな結婚という意味があるらしい。というか、「新しい船出」から結婚を連想させて、幸せな結婚のパワーストーンとなったそうだ。

「ピッタリな組み合わせでしょ?」と親友は得意気だった。

パワーストーンの効力にも期待したが、なによりも、デザインが可愛らしく大変気に入って、私は肌身離さずペンダントをつけて生活していた。

四葉のクローバーの葉の1枚がアクアマリン、その四つ葉の下に揺れるようにぶらさがった天道虫がローズクォーツでできていたのだ。子どもっぽくなく、しかし可愛らしいデザインで、20代の独身女性にはピッタリだと思った。親友のセンスに脱帽するしかない!と私は感激した。

もちろんパワーストーンの効果も信じていた。
まして、大の親友が私の事を想って選んでくれた代物だ。
これは効果絶大に違いない!と信じて、私はがぜん彼氏探しへの意欲を高めた。

それからほどなくして、私はパワーストーンの効果を実感する事になる。
本当に、そうなのだ。うさんくさいと思われるかもしれないが、事実なんだから仕方ない。

たまたま偶然、というだけかもしれないが、親友にペンダントトップをもらってから、びっくりするように私の周りを取り巻く世界が変わり始めたのだ。

まず、はじめに起こった出来事は、仕事の異動。
これは、しかし実際のところ、あまり良いとは言えない変化だった。

もともと入社した時に配属になった部署、つまり、そのつもりで入社した部署から、人手が足りなくなった別の部署に異動してくれという通達があり、ほぼ有無を言わせぬ雰囲気に、首を縦に振ってしまったものの、望んではいなかった。
引き換え条件として、今までの働き方はしないという承諾を得て、前までの部署と同じくらいの残業時間で仕事を振り分けてもらった。

ところが、私が異動になった部署はかなりの残業を強いられる部署で、あまり残業できない私には、重要な仕事はまわってこなかった。その上、ほぼ初心者、未経験状態だったので、責任ある案件もまわってこなかった。

希望していない仕事、責任もまだない、自分が抜けても誰も困らない、これだけ条件がそろってしまうと、気持ち的にはいつでも辞められる状態である。
しかし、職場自体は嫌いではなく、一緒に働く仲間も好きだったので、しばらく様子を見る事にしていた。

一方で、ずっと私がやりたいと思っていた仕事のオファーがひょんなところから出てきた。
それは、高校の同級生だった。

私は趣味で語学を長いことやっていた。話せる言語は英語、イタリア語、韓国語、フランス語、そしてスペイン語とドイツ語を少々かじっており、ロシア語、中国語、タイ語、あとチェコ語も旅行会話程度なら知っていた。

大学ではイタリア語を専攻していた。

高校の同級生は私がイタリア語専攻で大学に進学したという記憶を掘り起こして、私にイタリア語を使った仕事をしないか、と声をかけてきたのだ。

正直なところ、イタリア語を生かす仕事といっても、通訳者も翻訳者も、依頼ベースで仕事をやる事が多いため、個人事業主で委託業務として働いていくしかない。
語学教室の講師と、通訳や翻訳の仕事をこなして、ようやくスケジュールが埋まるというもので、正社員として腰を落ち着けられるような会社はなかなか無いのだ。

それが、同級生によると、知人がイタリアと取引をする会社に勤めているそうなのだが、ちょうど現地とやりとりする窓口に立っていた人が退職してしまったらしく、代わりの人を探しているのだとの事。
面接して採用しても良いが、急ぎであるのと、人柄などが分かっている方が良いという事で、人づてに探しているところらしい。

今の仕事でも英語は使うので、そういう意味では語学を生かした仕事ではあるが、部署異動にともなって、その得意な英語も使う機会が減ってきてしまっていた。

これは渡りに船!という事で、私はさっさと転職した。

と、ここまでは人生に大きな変化があり、私は親友に教えてもらったアクアマリンの意味を思い出していた。
これはまさに「新しい船出」だわ!と。

結婚じゃなかったけれど、なんだか素敵な形で「新しい船出」効果があったのだ。
私はさっそく親友にその報告とお礼を伝えた。

どっちかっていうと、ローズクォーツとの併せ技で「結婚」につないで船出してもらいたかったんだけどな~と笑いながら、親友は転職に関しても勿論喜んでくれた。

「でもまだこれから更に効果があるかも!これからもずっと肌身離さず持ち続けるよ」
と伝えると、「良い人が現れるまでは信じ続けるのも良いかもね」と答えてくれた。


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新しい仕事は楽しかった。

長いことイタリア語から離れてしまっていたが、使いだすとすぐに記憶が蘇ってくるようで、久々のイタリア語が懐かしく、それを使って話したりメールしたりすることがひたすらに楽しかった。

現地との窓口という事で、現地窓口の方がイケメン独身青年とかならどんなに良いだろうと期待していたが、私よりも10歳ほど年上の女性だった。

ちぇ、と思いながらも、その女性はとてもフレンドリーで、スムーズに仕事ができたし、すぐに仲良くなる事ができた。冗談で「独り身なら良い男、紹介するわよ!」と言ってくれたので、こちらも冗談で「ぜひ!」とお願いしたが、冷静に考えて、海を越えての遠距離恋愛はあまり現実的ではないような気がした。

会社にもイタリア人は何人かいたが、現地から出張で来ていたり、駐在している職員も、皆既婚者でお腹がぽっこり出ているような、陽気なおじさんばかりだった。

日本人社員には若い方も沢山いて、もしかしたら、何かあるかなぁなどと期待したが、部署が違うため、話す機会はあまりなかった。

中途採用だったので何も期待していなかったのだが、ある日突然上司に「遅くなってしまったけど、歓迎会をやらせてくれ」と言われ、恐縮しながら「お気遣いなく」と言ってみたものの、結局有り難くその申し出を受ける事にした。
確かに社員の方とざっくばらんに交流する機会が一度くらいあった方が、今後の仕事にも良いだろうしな、と思ってのことだった。

そして、その数日後に、居酒屋で私の歓迎会が開かれた。

色々な人と話して、とても楽しいひと時を過ごしたが、20代で独身となると、おじさん、おばさん世代がお節介を焼きたくなるのはどこの国でも「あるある」で、「ほら、関口くんなんか、どう?」としきりに営業の青年を勧められた。

「関口くん」とやらは、営業職特有のノリで「僕なんかでよければぜひぜひ~!」と酔っ払って少し赤くなった顔でニコニコ笑っている。

完全に冗談で受け流そうという反応だったので、私も便乗して「いや~、こんな良い会社に入社できて、しかもイケメンさんまでいるなんて幸せ者です」と乗ってから、酔った勢いも手伝って「このパワーストーンペンダントのおかげかな」と付け加えた。

すると、当然のように「なになに」という空気になったので、私は親友からパワーストーンのペンダントトップをもらってから自分の人生が動き始めた事を話した。

上司はすっかりご機嫌で「こんな良い人材を導いてくれて、我々も感謝しなくちゃいけないな」などと言っている。

始終賑やかでなごやかな雰囲気の中で、宴会はお開きとなった。

私を「関口くん」とくっつけたがっていたおばさま社員に、関口くんは「ちゃんと送ってあげなさいよ~。送り狼になっちゃダメよ~」などと声をかけている。

ちょっと困惑気味の関口くんに「あの、ひとりでも全然大丈夫なんで」と声をかけると「どちらまで帰られるんですか?」と聞かれた。答えると、同じ方向だという事が発覚した。

「だったら折角なんて途中までご一緒させてください」と笑顔の関口くん。

さきほど散々はやし立てられたというのもあり、ちょっと照れくさいな、と思いながらも「そうですね、ぜひ」と返し、一緒に帰る事になった。

「そういえば、さっき、パワーストーンの話、されてたじゃないですか」
会話がふと途切れた時に、思い出したように関口くんが言った。

「ああ、あれ、ちょっと調子に乗っちゃって、うっかり口が滑ってしまっただけなんで、そんなに信じているわけではないんですけどね」と笑いながら、内心「めっちゃ信じてるし超感謝してるけど」とつぶやく。

「えー、そうなんですか?俺、結構そういうの、信じちゃうタイプですよ」
関口くんはそう言って「見せてもらっても良いですか」と聞いてきた。

ペンダントを見せながら、ローズクォーツとアクアマリンの説明をすると「アクアマリンって3月の誕生石ですよね?俺、3月誕生月なんですよ」と言いだした。

「え、同じじゃん!私も!」と思わずタメ語になってから、慌てて「そういえば関口さんっておいくつなんですか?」と聞くと、私の1つ歳下だった。

「だからってわけじゃないですけど、タメ語でも全然大丈夫ですよ」
と言うので「それなら、私だって、ここでは後輩なんだからタメ語でお願いします」と妙にかしこまって返してしまった。

関口くんは声に出して笑いながら、「仲良くしましょ」と小首をかしげた。
一瞬ドキッとして、顔が赤くなる。

そんな私の様子を見つめながら
「ローズクォーツの効果も、近日中に実感できるかもしれないですね」
とポソッと呟いたので、思わず「え?」と聞き返すと、
「僕なんかで良ければっていうの、あれ、ちょっと本気なんで」
といたずらっぽく笑った。

そしてちょうどこのタイミングで関口くんが降りる駅に到着してしまった。

「では、お疲れ様でした!考えといてくださいね~」
そう言って関口くんは軽やかに電車から降りていってしまった。

ちょっと軽いような気もしたが、その翌日、さっそく改まった関口くんから「昨日は、その、酔った勢いで、なんかすみませんでした。でも、俺、遊びとかじゃなくて、本当にいいなぁと思ってて…」という告白があったので、私はローズクォーツの力を信じて「付き合ってみよう」と申し入れた。

そんなこんなで心機一転、新しい職場で、新しい恋が始まった。

ああ、付き合うことになったんだぁ。
彼氏が、できたんだぁ。

そう思うと、私はとてつもなく幸せな気分になって、「夢じゃないよな」と思い切りほっぺたをつねってから、痛みを実感して安心し、それから親友からもらった大切なペンダントトップをぎゅっと握り締めた。


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