恋愛小説

気になる男の子~短編恋愛小説


初めての彼氏がたまたま格好良かった。

モテて私の自慢の彼氏だった。その隣を歩くのがなんとも言えない優越感で満たされた。だからフリーの今も好みのタイプが歩いていたら目で追ってしまう。

はぁ。今日の合コンもハズレ。食費浮いただけよしとしよう。

皆、自分の自慢話ばかりして作り笑顔作るのも疲れた。私はどんなに仕事が出来るとかどんな有名な会社に勤めてるとか興味はない。今を楽しく、一生懸命過ごしていればそれでいい。あとは…格好良いこと。

ここが私の欠点。見た目を重視してしまうところ。だからなかなか彼氏ができない。

(高校生女子1)「供枝くん、カラオケおごってよ」

(供枝海)「…」

(高校生女子2)「良いじゃん!供枝の家金持ちじゃん」

外はもう真っ暗で人通りも少ない広場で高校生が何か騒いでるのが聞こえた。

(高校生男子1)「俺財布忘れたから供枝頼むよ」

(高校生男子2)「お前さっきカンジュース買ってたじゃん!まぁ俺も払う気ないけどー、ははは!」

人数は5人。1人の男の子を囲んでばか笑いわする4人。


スポンサーリンク




私こうゆう人間一番嫌いなのよ。お酒も回っていた私はズカズカと高校生の間に割り込んだ。

(藤木結愛華)「お金無いなら大人しく帰ったら?」

(高校生女子1)「誰ー?この人」

(高校生男子1)「お姉さん関係ないんだから首突っ込んで来ないでくんない?」

(藤木結愛華)「君はどうしたい?」
真ん中の囲まれていた男の子に問いかけた。

(供枝海)「もう、お金は出したくない」

(藤木結愛華)「聞いたでしょ、そんなに遊びたいなら自分で稼いで遊びなさい。」

(高校生女子1)「こいつむかつくんだけど!」

(高校生男子1)「お前何様だよ!」

見た目は制服の乱れも目立たない。ごくごく普通の高校生。でも中身は今時ね。一人じゃきっと何も出来ないタイプ。人数がいるから突っ張る。強気でいれるのよね。

(藤木結愛華)「うるさいなぁ、その子お金出したくないって言ってるんだから諦めて帰ったら?」

あ、ちょっと待って。私は良いけどこの男の子は明日もこの子たちと学校で当然会う。何をされるか…。私はバックから財布を取りだし二万円を顔の横まで持っていき

(藤木結愛華)「今回はこれで納得してくれない?」

すると男女さっきとはうってかわり、盛り上がり私の手から半ば強引に二万円を受け取り満足そうに何処かへ消えていった。

(供枝海)「何勝手なことしてるんですか」

冷めた瞳。

(藤木結愛華)「あ、私二万円スリにあったみたい。まぁそんな日もあるよね」

そう言って笑うと

(供枝海)「めったにないですよ」

溜め息をつかれた。

(藤木結愛華)「それにしても…髪邪魔じゃない?」

目が隠れるまで長い前髪。

(供枝海)「…いいんです。お金は、今全額返せないので連絡先教えておきます。次会ったら必ず返します。じゃぁ」

連絡交換をして彼は早々と人混みの中へ消えていった。

スマホに視線を向ける。

“供枝海”海くん。何故あんな真似をしたのか、二万円はいたい。でも彼に引き寄せられる何かがあった。
“何か”は分からない。でも後悔はしてない。また彼に会いたいと思った。

私はそのあと酔いもすっかり覚め、まっすぐ帰宅した。


スポンサーリンク




翌日

(藤木結愛華)「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

カフェで働き初めてもう約5年。他の仕事に魅力を感じたこともあったけれど今はこの仕事に愛着を持っている。何より言葉遣いに気を使うようになった。あと、笑顔も。

始めは泣きたくなるくらい大変でいっぱいいっぱいだったけれど、今は教える立場にまで上がった。でもてんぐになってはいけないと自分に言い聞かせる。嫌みな人間にはなりたくないから。

カラン

(藤木結愛華)「いらっしゃいませ、1名様ですか?」

来た。海くん。

昨日の夜、“供枝です。待たせては悪いので明日お金返します。”

彼からラインが来た。カフェのシフトが明日は夜6時までだったからカフェの場所を教えて学校帰りに来てもらうことに。

“分かりました”と一言返事が帰ってきてやり取りは終った。

本当に来るか少し疑っていたがその必要はなかったみたい。

席まで案内する。

そして

(藤木結愛華)「お決まりになりましたらお呼びください」彼は直ぐに注文をした。オムライス。私は小さい声で(藤木結愛華)「食べ終わったら向かいのファーストフード店で待っててくれる?着替えたらすぐ行くから」(供枝海)「分かりました」

今日は暇な方。お客様がパラパラと出入りしあっという間に時間は過ぎ上がりの時間になった。
(藤木結愛華)「お先に失礼します。お疲れ様ですー。」

(店員数人)「お疲れ様です!」

着替えて軽くメイクを直して店を出た。

ファーストフード店

(藤木結愛華)「いた。お待たせ海くん」

(供枝海)「…下の名前で呼んでるし」

(藤木結愛華)「待たせてごめんね」

(供枝海)「そんなに待ってないですよ、二万円返します」

(藤木結愛華)「いらない」

(供枝海)「は?」

(藤木結愛華)「その代わり私に付き合って?」

(供枝海)「なんですか」

めんどくさそうに聞く彼に私は

(藤木結愛華)「変身して」

唐突な言葉を返した。

(供枝海)「何言ってるんですか」

これには流石に驚いたのか真顔の海くん。

(藤木結愛華)「海くんいじめにあってるでしょ」

すると彼は喉を鳴らした。


スポンサーリンク




(藤木結愛華)「絶対もうそれはさせない、その二万円で自分を変えるの。私、ある所に予約入れてるから早速だけど行こう?」

半ば強引に彼の手を引いてある場所へ向かった。

(供枝海)「ここって…」

(藤木結愛華)「うん、美容院。先ずはその髪どうにかしないとね」

(美容師香歩)「結愛華さんいっらっしゃい。待ってましたよ。今日は2名様でしたよね」

(藤木結愛華)「香歩さん久しぶり。うん、ペアぽくしたいかな」

(美容師香歩)「はい、ではこちらへお座りください…ちょっと前髪上げさせてもらいますね。切れ長の瞳に小顔、前髪切らずに切れ長の瞳をいかして横に流すようにパーマかけましょうか?」

(藤木結愛華)「それいいかも。私も彼と同じくらいの前髪の長さにして同じくパーマかけてほしいな」

(美容師香歩)「はい、仲良いですね。ふふ」

香歩さんは目を細めて微笑んだ。

(藤木結愛華)「いいでしょう?ふふ。あ、あと全体的に緩くパーマかけてくれる?私は巻き髪風にしっかりめで。カラーは彼と一緒がいいから…海くん学校規則ある?」

(供枝海)「特にはないですけど…」

流石に戸惑ってる様子だけどお構いなしの私。

(藤木結愛華)「アッシュ系のブラウンでお願いします。」

(美容師香歩)「はい、ではシャンプーからしますね」

数時間後

(美容師香歩)「終わりました。お疲れ様でした。」

(藤木結愛華)「流石香歩さん、今回もいい感じ」

(美容師香歩)「ふふ、ありがとうございます」

(美容師1)「お連れ様もブロー終わりましたー」

彼の方へ視線を向けた。

(藤木結愛華)「海くん…格好いい」

(供枝海)「冗談は止めてください」

切れ長の瞳が大人っぽくて色っぽい。髪を流すことで今風。顔がはっきり見えるから小顔が強調されて可愛らしさも見えがくれしている。ヘアカラーでお洒落感もでて魅力的になった。

(美容師香歩)「ありがとうございました。またのおこしをお待ちしてます」

(藤木結愛華)「また来ます」

帰り道

(供枝海)「あなたはいったい何がしたいんですか」

(藤木結愛華)「結愛華、あなたじゃない」

(供枝海)「はぁ、結愛華さん」

彼は渋々私の名前を呼んだ。

(藤木結愛華)「ふふ、海くんを助けるの。いじめから。明日楽しみにしてて」

(供枝海)「は?…余計なことはしないでください。ほっといてください」

(藤木結愛華)「もう手遅れよ、私に出会っちゃったんだから。じゃぁ明日ね」

そう言って背を向けて歩いた。


スポンサーリンク




翌日学校

(海のクラスメート女子1)「え?!供枝くん?別人じゃん!」

(海のクラスメート女子2)「超タイプ!」

(海のクラスメート男子1)「マジかよ…」

(海のクラスメート男子2)「信じられねぇー…」

海の学年中がざわついた。

学校下校時間

(海のクラスメート女子3)「校門に誰かいない?」

(他のクラスメート女子1)「綺麗な人…」

(海のクラスメート男子3)「めっちゃ美人じゃん!」

私から少し距離をおいて囲んできた男女。

今日はメイクも髪型も気合いを入れてきている。彼のために。

(藤木結愛華)「ねぇ誰か供枝海くんくって知らない?」

(海のクラスメート男子3)「知ってます!同じクラスメートです!まだ教室にいると思います!2ーAです」

(藤木結愛華)「そうなのね、ありがとう」

にっこり笑顔を振りまいてから校内に足を踏み入れた。

(1年女子1)「誰?!」

(2年男子1)「お前声かけろよ!」

(2年男子2)「無茶言うなって!モデルでもしてるのかな。めっちゃスタイル良いじゃん!」

道を歩く度廊下中がざわつく。

(3年男子1)「ねぇお姉さん何のよう?」

いかにも女なれしてそうな男の子に声をかけられた。

(藤木結愛華)「ふふ、秘密。急いでるからじゃぁね」

スタスタと足を止めずに進んだ。

すると数人の固まりに目をやった。

(海のクラスメート男子1)「何調子のってるんだよ!」

(海のクラスメート女子1)「それで変わったつもりー?」

海くんが囲まれていた。

やっぱり。あのままじゃ終わらないと思った。

来て正解ね。

(藤木結愛華)「海くん」

(供枝海)「何で…」

(海くんのクラスメート男子1)「あのときの!」

(藤木結愛華)「私の海くんにもう酷いことしないでよ」

(海くんのクラスメート男子2)「何勝手なこと言ってるんだよ!」

(先生)「おいおい!何事だ!…お?藤木じゃないか。元気にしてたか?」

タイミングよく先生が入ってきた。

(藤木結愛華)「はい、相変わらず校則緩いんですね。私ここに入ってきても浮いてないですもん。ふふ」

(先生)「何を言ってる。第56回ミスコン1位のくせに。いまだに写真飾ってるぞ」

(海のクラスメート女子2)「うそ?!56回目ってバンドのボーカルと演技、ファッションモデルのポージングの課題をクリアして投票が多かった人だけがなれるっていう…」

(藤木結愛華)「そう。それで、ミスコン1位の言うことは絶対なの。無期限でね。ここの生徒なら知ってるでしょ?海くんを自由にしてお願い」

彼の周りにいた人たちは渋々離れていった。

(藤木結愛華)「海くん君は今から自由よ」

私は微笑んだ。今になってこんな特権が役に立つなんてね。

(供枝海)「結愛華さん、ここの卒業生だったんですか」

(藤木結愛華)「うん、4年も前だけどね。用はすんだから私帰るね」

彼は何も言わない。引き留めては来なかった。当たり前か。

またいつも通りの生活に戻るだけ。


スポンサーリンク




翌日

カフェ

(坂田智幸)「結愛華ちゃん雰囲気変わったね」

(藤木結愛華)「そうですか?髪型のせいかな?」

坂田智幸。同じカフェで働いている先輩。癒し系で茶色い髪に緩いパーマがよく似合う。

(坂田智幸)「そうかも。髪型よく似合ってる。…あ、そう言えばもうすぐ結愛華ちゃんの誕生日だよね、お祝いしないとね」

(藤木結愛華)「あー、また1年歳とると思うと憂鬱ですよ。お祝いなんて大袈裟なことはいいです、普通に過ごします」

(坂田智幸)「じゃぁせめて欲しいものとかない?」

(藤木結愛華)「特にないですよ、気持ちだけで十分です。ふふ」

(坂田智幸)「結愛華ちゃんは欲がないなぁ」

そう言ってにっこり笑った彼の笑顔は爽やかで社員、バイトの子からモテるのもうなずける。

(藤木結愛華)「そんなことないですよ。あ、休憩終わるので先に行きますね」

先に仕事に戻った。

(藤木結愛華)「いらっしゃいませ」

(バイト女)「いらっしゃいませ2名様ですか?」

(客男1)「そう」

(バイト女)「ではお席にご案内します」

(バイト女)「ご注文お決まりになりましたらお呼びください」

(客男2)「ねぇ君、彼氏いるの?」

(バイト女)「あ、あの」

(客男2)「携帯番号教えてー」

(バイト女)「申し訳ありません、仕事中なので…」

(客男1)「良いじゃん!客そんないないし、暇でしょ?」

困惑している後輩に気がついた。

(藤木結愛華)「申し訳ありませんお客様、他の作業がありますので代わりに私が対応させて頂きます。何か失礼な点でもございましたか?」

目で合図しバイトの子を遠ざけて、代わりに私がお客様の対応になる流れに持っていった。

(客男2)「君じゃなくてさっきの子がいいんだけど」

(藤木結愛)「申し訳ありません、先程の者は他の作業がありますので」

深く頭を下げた。

(客男1)「君も美人じゃん。俺は君の方がタイプだなぁ」

(客男2)「じゃぁ君でいいや番号教えて」

(藤木結愛華)「残念ながらお二人様とも魅力的な男性だと思うんですが、今は仕事中なので余計なことしてしまうと給料減らされちゃうんです」

(客男2)「はは!君面白いね、気に入ったかも」

逆効果だったかも…たいがいはこれで乗りきれるんだけど。どうしようか悩んでいると

(供枝海)「すみませんお手洗いどこですか」

え?海くん? 私の側に立っていてまっすぐ私を見つめていた。

(藤木結愛華)「あ、はい。申し訳ありません、ご注文お決まりになりましたらお呼びください。失礼します」

頭を下げ海くんとトイレまで歩く。

(藤木結愛華)「ありがとう、助けてくれたんでしょ?」

すると目をそらして素っ気なく

(供枝海)「別に」

と返ってきた。


スポンサーリンク




(藤木結愛華)「それにしてもまた来てくれたんだね」

(供枝海)「結愛華さんが学校に来た日から自由になりました」

(藤木結愛華)「そっか、よかった。」

そう言って微笑んだら、彼は口もとを緩めて

(供枝海)「ありがとう」
とお礼を言った。

その顔が印象的でとうぶん忘れそうにないと思った。

(藤木結愛華)「私、仕事に戻るね。本当にありがとう」

(供枝海)「また会ってくれますか」

やっぱり綺麗な切れ長の瞳。私のタイプの男性像ではないのに彼が気になってしまう。

(藤木結愛華)「もちろん」

笑顔で仕事に戻った。

夜自宅

お風呂から上がると智幸さんからラインがきていた。

“(坂田智幸)来週の月曜日空けておいて”…私の誕生日。それとシフトも休み。

“(藤木結愛華)何でですか?”

そう返した。すぐに

“(坂田智幸)もしかして予定入ってた?”

そう返ってきた。

“(藤木結愛華)いえ、そういう訳ではないです”

“(坂田智幸)じゃぁ決まり。楽しみにしてて。おやすみ”

智幸さんは私が入ったときにはすでに働いていて色々教えてくれて私にとってお兄ちゃん的存在。思い起こせば毎年誕生日お祝いしてくれている気がする。
誕生日プレゼントをくれたり。何故か誕生日は彼氏がいなくてまるでその時は智幸さんが彼氏のような存在だった。

また携帯が鳴った。海くんからだった。

ラインで

“(供枝海)猫好きですか”

猫?

“(藤木結愛華)猫好きだよー”

“(供枝海)次休みいつですか”

“(藤木結愛華)明日だよ”

“(供枝海)じゃぁ夜6時に学校の近くにあるドーナツ屋に来てください”

会ってほしいってことだよね?

“(藤木結愛華)わかった。”

日中は何しようか。天気がよければ買い物に出掛けよう。

この日はぐっすり眠りに落ちた。


スポンサーリンク




翌朝

起きたら眩しい光りが差し込んだ。

今日は目覚めがいい。朝食を済ませシャワーを浴びて買いものに出掛けることにした。

天気はよくてもまだ少し肌寒い。

お気に入りのネイビーのワンピースを着て上からボルドーのカーディガンを羽織った。

海くんは変わった。前向きになった気がする。この短期間で。ご褒美に何かプレゼントしたい。

街中

部屋の模様替えしたい。大それたことじゃなくて小物使って雰囲気変えたい。

小さい観葉植物。アロマ加湿器。ソファカバー。写真立て。

両手一杯の荷物

気がつけば時間は夕方。急いで一度家に帰り荷物を置いてからドーナツ屋に向かった。

ドーナツ屋

カラン

(店員)「いらっしゃいませ」

きょろきょろ回りを見渡す。海くんを探す。

(供枝海)「いらっしゃい」

後ろから声がして振り返るとドーナツ屋の制服を着た海くんが立っていた。

(藤木結愛華)「びっくりした。ここで働いてるの?」

(供枝海)「はい、もう少しで上がりなんで待っててください」

(藤木結愛華)「うん、ドーナツ食べながら待ってるよ」

若い女性客多い。

海くんの働く姿が目にとまる。彼が気になる。年下なのに、タイプじゃないのに…。

まだ彼は高校生。分かってる。不釣り合いだって。

(供枝海)「お待たせしました」

その声に顔を上げると私服の海くんがいた。

黒のズボンにグレーのV字の長袖にブラウンのカーディガンを羽織っていた。はじめて見る私服。スタイル良いのが良く分かる。

(藤木結愛華)「ここのドーナツ美味しいね、また来てもいい?」

(供枝海)「いいですよ」

何故か口元を隠す彼に不思議に思ったけれど手を引かれ

(供枝海)「いきますよ」

彼の言葉で聞きそびれてしまった。

(藤木結愛華)「どこいくの?」

(供枝海)「猫まみれのとこです」

(藤木結愛華)「猫まみれ?」

(供枝海)「はい」

着いた先は…

(藤木結愛華)「ネコカフェ!」

(供枝海)「ここよく来るんです」

(藤木結愛華)「私初めて」

(供枝海)「中入りましょう」

(店員)「いらっしゃいませー消毒してからお入りください。ちょうど今からおやつタイム入りますのでご参加どうぞー」

(供枝海)「参加しますか?」

(藤木結愛華)「うん、おやつあげたい」

(店員)「カップお配りしますので手のひらにおやつをおいて、猫ちゃんの側に近づけてあげてくださいね」

紙コップにおやつが入っていてその中から二粒取りだし手のひらに置いてみた。

大変だ…

(供枝海)「ふっ、結愛華さん猫まみれ」

(藤木結愛華)「ちょ、ちょっと助けて!いっぱい集まってきて動けない!」

供枝海)「ふ、俺でもこんなに集まらないし」

時々出る彼のため口。距離が縮まった気がした。

こんな感情久しぶり。胸がきゅってなる。

(藤木結愛華)「笑ってないで助けてよー」

(供枝海)「大丈夫、菓子無くなったら離れてく」

(藤木結愛華)「それまでこのまま?」

苦笑いをすると

(供枝海)「そういうこと」
と笑った。

(藤木結愛華)「早くみんな食べてー」

(供枝海)「はは」

お腹を抱えて笑う海くん。無邪気に笑う姿はやっぱり高校生。

その後は猫じゃらしで遊んで時間を過ごした。

(供枝海)「そろそろ出るか」

(藤木結愛華)「うん」

(店員)「ありがとうございましたー」

外に出る。


スポンサーリンク




(藤木結愛華)「すっかり暗くなっちゃったね」

(供枝海)「家まで送る」

(藤木結愛華)「大丈夫、わりと近くだし、時間もまだそんなに遅くないから」

(供枝海)「俺が送りたいから」

まっすぐなすんだ瞳で彼に私は気がつけば縦に首を振っていった。

私の歩幅に合わせて歩いてくれる彼。
(藤木結愛華)「今日はありがとう。楽しかった」

(供枝海)「俺を変えてくれた…救ってくれたお礼」

(藤木結愛華)「大げさだなぁ」

(供枝海)「大げさじゃない感謝してる」

そう言って私の頬に手を添えた。

(藤木結愛華)「海くん?」

(供枝海)「と、とにかく気にしなくいいから」

自分のしたことに自分で驚いているようだった。私は嬉しかった。海くんの手の温もりが心地よかった。

(藤木結愛華)「ここのマンション。上がってく?」

(供枝海)「上がる」

(藤木結愛華)「日中買い物してたから散らかってるの。気にしないで」

五階の角が私の部屋。鍵を差し込む。

(藤木結愛華)「どうぞ」

ドアを開けて中へ入れた。

(藤木結愛華)「珈琲飲める?」

(供枝海)「飲める」

(藤木結愛華)「じゃぁ入れるね、少し待ってて。海くんお腹空いてない?なにか作ろうか?」

(供枝海)「オムライス」

即答。これには思わず笑ってしまった。

(供枝海)「何笑ってんの」

(藤木結愛華)「ふふ、何でもない。すぐ作るね、さきに珈琲飲んで待ってて」

出来立ての珈琲を注いだカップをテーブルに置いた。

そのあとオムライスを作り、海くんはそれをもくもくと食べはじめた。

(藤木結愛華)「美味しい?」

(供枝海)「上手い」

素っ気ない態度だったけれどお皿を見るとオムライスはほとんど残ってなかった。

(藤木結愛華)「それにしても今時の高校生はあんな珍しいところが流行ってるの?」

(供枝海)「あそこは俺が好きな場所。猫飼えないから。結愛華さんにも教えたかったし」

(藤木結愛華)「そっか、ありがとう」

微笑むと海くんは袖で顔を隠した。

(藤木結愛華)「どうしたの?」

(供枝海)「理性ぶっ飛びそう…」

(藤木結愛華)「え?」

気がついたら目線が天井と海くんの顔が私の目に映った。

大きめのソファーに二人並んで座ってオムライスを食べていた。

今、ソファーの上に仰向けになっている状態。

(供枝海)「ごめん、おさえきれない」

そう言って彼は私の後頭部に優しく手で引き寄せてキスをした。はじめは微かに触れるだけのキス。でも、私が彼の服を握りしめるとさらに深く、甘く、角度をかえてキスをした。

(供枝海)「結愛華さん、俺と付き合って」

吐息が色っぽくまっすぐ私を見つめて口を開いてわたしに告白をした。

(藤木結愛華)「私でいいの?海くん17歳でしょ?私22歳だよ。若い子の方が…」

(供枝海)「結愛華さんがいいんだよ。だめ?」

(藤木結愛華)「ううん、海くんと付き合いたい」

そう言って私の方から頬に軽くキスをした。

(供枝海)「…なにするんだよ」

照れる彼が愛おしい。

(藤木結愛華)「ふふ」

(供枝海)「もう少しキスしたい」

(藤木結愛華)「うん、私も」

彼の触れる手が心地よくて熱くて声が漏れた。

(供枝海)「そろそろ帰る」

(藤木結愛華)「うん、気を付けてね」

私は日中買った買い物袋の中から1つ取り出して彼の目の前に差し出した。

(供枝海)「なに?」

(藤木結愛華)「海くんに似合いそうだなって思って、良かったら使って」

(供枝海)「開けていい?」

(藤木結愛華)「うん」

彼はゆっくり箱を開けた。

(供枝海)「…時計」

(藤木結愛華)「うん、腕時計。」

(供枝海)「ありがとう、大切にする。まめに連絡するから。俺、学校とバイトであまり会えないかもしれないから」

(藤木結愛華)「うん、分かった」

海くんが帰った後も余韻にひたっていた。

夢みたいな1日だった。でも、今日から海くんは私の彼氏。また明日から仕事頑張れそう。楽しくなりそう。

それからまめに連絡を取るようになった。彼は学校で友達ができたそうで私は嬉しかった。今度うちのカフェに連れてくると約束してくれた。どんな男の子だろう。

カラン

(藤木結愛華)「いらっしゃいませ」

今日は忙しい。明日はやっと休みだけれど…

(坂田智幸)「結愛華ちゃんお疲れ様、休憩入って良いって。入ろう?」

(藤木結愛華)「はい」

私の誕生日であって智幸さんと過ごすことになっている。海くんは私の誕生日を知らない。でも、男性と二人で会うのって良くない気がする。休憩室で二人になったところで私は口を開いた。

(藤木結愛華)「あの、智幸さん」

(坂田智幸)「うん?」

(藤木結愛華)「私、彼氏できて、明日二人で会うのは…すみません、なかなか言うタイミングが掴めなくて」

すると彼は少し間をとってから

(坂田智幸)「そっか、じゃぁ彼氏さんと過ごすの?」

(藤木結愛華)「いえ、彼はバイトがあるので」

(坂田智幸)「じゃぁ早めに切り上げるから、ね?」

誕生日一人で過ごすのも寂しいか…

智幸さんなら安心だよね。

(藤木結愛華)「はい、わかりました。」


スポンサーリンク




翌日朝

目覚ましの音で目を覚ました。

シャワーを浴びて昨日のうちに選んでおいた服に着替えた。

髪型、メークを終わらせて待ち合わせ場所に向かった。

彼はすでに待ち合わせ場所にいた。待たせてしまったかな。

(藤木結愛華)「智幸さん」

小走りで彼のもとへ近づいた。

すると彼は私に気づき笑顔を向き

(坂田智幸)「早いね」
と言った。

(藤木結愛華)「智幸さんの方が早いじゃないですか」

(坂田智幸)「はは、楽しみにしてたから」

恥ずかしいことをさらっと言ってしまうのが彼だ。

有名なパンケーキ専門店に連れてってくれた。

(藤木結愛華)「ふわふわ…美味しい」

(坂田智幸)「そっか、良かった。あ、渡したいものがあるんだ。」

そう言って小さい箱をそっと私の手に握らせた。

(坂田智幸)「開けてみて」

丁寧に開けてみると中に、

(藤木結愛華)「ネックレス?」

(坂田智幸)「うん、気に入ってくれた?」

小さいハートがついたピンクゴールドのネックレス。

(藤木結愛華)「綺麗…」

(坂田智幸)「誕生日おめでとう」

(藤木結愛華)「ありがとうございます」

二人でお店を出て歩いていると思わぬ人物と再会した。

(藤木結愛華)「元樹?」

(元樹)「結愛華…?」

私を見て驚いた様子の彼は元彼の元樹。そして私の隣に立っている智幸さんを見て顔をこわばらせた。

(元樹)「結愛華!ちょっとこい!」

なかば強引に腕を引かれ、人通の多いところに入っていく。

(元樹)「あいつと付き合ってるのか?」

(藤木結愛華)「付き合ってないよ」

すると元樹は何故か安堵のため息をついた。

(元樹)「そうか、良かった。あいつは絶対駄目だ。危険すぎる、俺がお前と別れることになったのもあいつに脅されたからなんだよ」

(藤木結愛華)「何言ってるの?智幸さんは優しい人だよ?」

(元樹)「結愛華の前だけだ、気を付けた方がいい」

そう言って背を向けて人混みの中へと消えていった。私は信じられない気持ちのまま智幸さんのもとへ戻った。

(藤木結愛華)「急にいなくなってすみません」

(坂田智幸)「気にしてないよ。さ、家まで送るよ」

(藤木結愛華)「ありがとうございます」

(坂田智幸)「ネックレス出来れば毎日身につけてくれると嬉しいな」

(藤木結愛華)「あ、はい。」

この日から智幸さんと偶然が重なるようになった。一人で出掛けに行くと偶然会ったり、それでお茶したりする流れになることもあって。この前は帰宅中にちょうど家の前に現れて、流石に部屋には入れなかったけれど段々不信感がわいてきて、海くんが家に来たときに相談した。

(供枝海)「それ完全にストーカーだから。しかも俺、誕生日聞いてなかったんだけど」

(藤木結愛華)「ごめん、やっぱりストーカー部類に入るのか」

(供枝海)「何で位置情報までわかるんだ。結愛華さん何かもらった?」

(藤木結愛華)「あ、これ」

首から下げてるネックレスを見せた。

(供枝海)「何プレゼント身につけてんの。たぶん、それにGPS埋め込まれてる」

(藤木結愛華)「え…」

(供枝海)「そいつの顔分かるものある?」

(藤木結愛華)「あ、飲み会の時に撮った写真なら…」

収納ケースから取り出して見せた。

(藤木結愛華)「この人、真ん中の」

(供枝海)「なるほどね、じゃ今から出掛けるか」

(藤木結愛華)「え?」

(供枝海)「ついでにそいつの今日のシフトは?」

(藤木結愛華)「たぶん、休み。だいたい私とかぶるから。」

(供枝海)「それわざとかぶらせてるだろ」

そう言って手を差し出した。私はぎゅっと彼の手を握った。少し不安が緩和されていく気がした。

(藤木結愛華)「今日は随分ゆっくり歩くんだね」

(供枝海)「見せしめだから」

(藤木結愛華)「見せしめ?」

(供枝海)「そ。」

(藤木結愛華)「見つけた。結愛華」

(藤木結愛華)「うん?ん!…」

唇に温かく柔らかい感触。キス。人前では恥ずかしい荒々しいキス。

(藤木結愛華)「はぁ…どうしたの?急に」

(供枝海)「今に分かる」

その意味をすぐに理解することがおこった。

(坂田智幸)「結愛華ちゃん!」

人混みを掻き分けて現れたのは

(藤木結愛華)「智幸さん…」

(坂田智幸)「こんな恥を知らないやつと一緒にいたら俺の結愛華ちゃんがだめになっちゃうよ、俺のところへおいで、ね?」

笑顔の智幸さんに恐怖を感じた。

(供枝海)「だめだ、お前なんかに結愛華は渡さない。そもそも選ぶ権利は結愛華にあるし。どうしたい?」

私に訪ねる海くん。考える理由もない。

(藤木結愛華)「海くんに決まってる」

彼の頬にキスをした。そしてネックレスを外した。

(藤木結愛華)「これ、お返しします」

(坂田智幸)「ばれていたんだね、GPS。捨てていいよ、そんなもの…」

(供枝海)「行くよ」

(藤木結愛華)「…うん」

振り返ったら智幸さんはまだいて、立ち尽くしていた。

(供枝海)「これでいいんだよ。結愛華さんが罪悪感背負うことない」

(藤木結愛華)「…うん」

次の日から智幸さんは仕事に来なくなった。


スポンサーリンク




カラン

(藤木結愛華)「いらっしゃいませ」

今日は前に言ってた海くんの友達と海くんが来ることになっている。どんな子だろう。想像を膨らます。

(バイト女)「結愛華さん!ちょくちょくここにくる高校生の男の子、今いるんですけど超可愛い女の子と一緒ですよ!彼女かな?」

え、友達って女の子?

(店長)「結愛華ちゃん4番テーブル運んで」

(藤木結愛華)「あ、はい!」

今は仕事に集中。

4番テーブル…海くんだ。本当に女の子もいる。

(藤木結愛華)「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」

(供枝海)「結愛華さん、こいつ、」

(藤木結愛華)「今忙しいから」

そう言って逃げた。可愛い子だった。黒髪のショートヘアに色白の肌。目が大きくて、顔が小さくて…。海くんとの時間はあの子の方がきっと長い。自信がなくなった。

その日の夜

海くんからの電話にでなかった。それから3日が経った。

朝携帯が鳴った。海くんからだ。今回は何度もかかってくるあきらめて電話に出た。

(藤木結愛華)「もしもし」

(供枝海)「やっと出た、今日仕事?」

(藤木結愛華)「ううん休み」

(供枝海)「支度して今から言うところに来て」

そう素っ気なく言うとすぐ電話が切れた。

約一時半後。言われた場所に行くと海くんと知らない男の子が一緒にいた。

(供枝海)「こいつ性別どっちに見える」

(藤木結愛華)「え、男の子に見える」

(供枝海)「そ、この前一緒にいたのこいつ」

(藤木結愛華)「え?そうなの?」

(春)「すみません、僕春っていいます。趣味で女装をします。海、やきもち焼かせたかったみたいです。まさかこんなに怒らせてしまうなんて思わなくてすみませんでした。」

深く頭を下げる男の子。

(藤木結愛華)「海くん、何でにやけてるの」

(供枝海)「別に、ふっ」

(藤木結愛華)「今笑った」

(供枝海)「結愛華さん以外の女興味ないし」

(春)「はは、結愛華さんは愛されてますね。学校では海はいつもつまらなそうにしてますよ、こんな海見たことない」

(藤木結愛華)「そうなの?」

(春)「はい。そんなことより、こんど一緒に買い物行きませんか?洋服選んで欲しいんです女性ものの」

(藤木結愛華)「うん、私もいつも一人だから楽しそう」

(供枝海)「駄目だ」

(春)「海は心が狭いなぁ」

(供枝海)「駄目なものは駄目だ」

すねてる海が愛おしい。

(藤木結愛華)「じゃぁ3人で行こう」

彼とは運命のいたずらで
思わぬ出逢いをした。

でもその出逢いはとても温かくて
胸が苦しくて
居心地がいいものに繋がっていった。

私は幸せもの。海くん、大好きよ。


スポンサーリンク




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です