恋愛・結婚SS

結婚と片思いの告白~恋愛ショートストーリー


もう40近くなって、周りの友人たちから次々と結婚や出産のお知らせが届くというのに、私はまだ恋に恋しているのか。いや、現実的になりすぎて、そこから乖離しただけか。

もう、分からない、自分という女が。

一途なのか、移り気なのか、純粋なのか、打算的なのか、私は一体どういう女なんだろう。

例えば、だ。

数年前に別れた元彼とは、別れる半年ぐらい前から抱かれても違う男性の顔が浮かんできてしまっていてダメだったし、事実、ほぼ乗り換えるような形で別れた。しかも、白状すると、交際中に数回浮気に走った事もあった。

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乗り換えた相手は、実はずっと好意を持っていた男性で、こちらの男性とも結局事情があって別れるのだが、最後の最後まで彼一途だったし、振られたわけでも振ったわけでもなく「大人の事情」というやつで別れたのだが、双方納得して別れたものの、しばらく立ち直れなかった。勿論浮気なんて絶対にしなかったし、抱かれれば自然と涙がこみ上げてくるほど愛おしかった。

この違いに我ながら驚く。

1人目は好きではなく仕方なく付き合っていたかというと、決してそんな事はなく、確かに告白されるまでは何とも思っていなかったが、人としては好きだったので快諾し、交際中も楽しかった。

楽しかったけれど、なんというか、節操がないような行動をとりがちだった。自分は浮気性で、誘われれば誰とでも寝るような女なのか、と自分に絶望した。

しかし2人目との交際中は、あまりにも一途な自分に驚いた。と、同時に安心した。

こんな赤裸々な話はやたらめったら人に言うものではないが、本当に心を許した親友に打ち明けると「結論、あんたは本当に好きな人と、ていうか、自分から好きになった人とじゃないとダメって事なんだよ」と分析された。

でも、自分から好きになると、それはそれで怖い。

自分が重い女になっているんじゃないかと常に不安で、相手の負担にならないようにという事ばかり考えて顔色を伺ってしまう。そうすると、相手をダメにする。

2人目と別れた理由はそこにあったような気がする。結婚相手として、全くお話にならなかったのだ。

金銭面で厳しく、プロポーズされた時点で、そのことは知っていたが「がんばって転職して、お金溜めて幸せな家庭を築けるようにがんばる」という彼の言葉を信じて一旦は受け入れたものの「無理しないで」とか「私ががんばるから」とか、そんな言葉で甘えさせて、結局私だけがボロボロになるまで働き、節約し、そんな娘の姿を見た両親の逆鱗に触れたのだ。

2人で何度も話し合って、好きという気持ちだけでは結婚できない、という事で別れるに至った。

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そんなすったもんだがあって、2年後、私は愛した彼と別れて立ち直れずにフリーのままだったが、いよいよ両親の「早く良い相手を見つけろ」というプレッシャーが大きくなってきて、重い腰を上げて相手探しに乗り出した。

とはいえ、高いお金を払ってまで結婚相手を探したいモードにはなっていなかったので、ひとまず女性は無料で登録できるマッチングサイトに登録してみる。

すると、次々に男性諸君からアプローチが来た。

正直驚きながらも、50代とか年収200万以下とか、そのような方々はごめんなさい、と思いながらスルーして、何人か諸々の条件が合う人たちと連絡を取ってみた。

人間とは上手くできているもので、100人を超えるアプローチから、連絡を取り合ってみた男性が20人、その中で「会ってみよう」という気になったのが3人、実際会って「この人なら良いかも」と思ったのはたった1人だった。

選り取り見取りで困っちゃう、などという事はなく、登録してからわずか1ヶ月でここまでトントンと辿りつき、なんだか不思議な感覚だった。

しかし問題なのが「この人なら良いかも」というのが、条件的にピッタリ合っていて、かつ、性格や考え方の相性も「悪くない」し、容姿は正直好みではなかったが、生理的に無理というほどでもないし、という程度だったのに対して、相手の方からは割と積極的なアプローチを受けた、というところだった。

頭の中で誰かの声が聞こえる。
「あー、これ、キケンなパターンや」

それが自分の声なのか、誰かご先祖様の忠告なのか、よく分からないが、多分、自分で気付いていた。
純愛や好きという気持ちを伴わない恋愛は、私には上手くできない、と。

しかし、では他に誰が、という現状を考えると、このあたりで身を固めておきたいと思う自分もいる。

もともと「結婚相手を探す」マッチングサイトだったので、付き合うのは両者合意の上で「結婚を前提に」だった。それが、なんとなく重くのしかかっているような気がして、私は悩んでいた。

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まだ、恋いしたいとか、好きな人と一緒になりたいとか、そんな事思ってるの?
好きな人と一緒になろうとして散々な目にあったの、忘れたの?

そう冷静に考える私がいる一方で、もう一人の私が囁く。

本当にこれでいいの?
もしこの人と一緒になった後、恋焦がれる相手が現れたら?
このままズルズル進んだら、また浮気に走るかもよ?

出会った人は、良い人だった。
でも、ただの、良い人だった。
私は彼に恋心を抱いたわけではなかった。

ぐらつく心。
どうして、こんなに揺れているのか。
他に、気になる人がいるというわけでもないのに。

そこで突如として私の脳裏に浮かんだのは、高校生の頃ずっと片思いしていた先輩の顔だった。

高校を卒業して、もう12~3年経つが、最近先輩とよく会う機会があった。
部活動が同じで、吹奏楽部だったのだが、大人になってもお互い吹奏楽団での演奏を続けていて、私が手伝いに呼ばれた楽団に先輩がいたのだ。

手伝いでお邪魔するだけなので、半年に1回の演奏会の少し前から数回練習に参加して、コンサートに出演して、また半年ほど間があく。

私と先輩は同じ楽器で、先輩が連絡係をしてくれていたので、やりとりする機会は多かったが、とにかくシャイな先輩で、「久々に再会したから一緒に飲みに行こう」、などという話は一切出なかった。

私は、高校生の頃、先輩に淡い恋心を抱いていた。
しかし、高校生の私は自分に全く自信がなかった。

今よりもだいぶ太っていて、10代特有のにきびが顔中を支配していて、おまけにビン底ぐらいの厚さのメガネをかけて、私服高校だったのだが、夏はTシャツにジーパン、冬はトレーナーにジーパンという、ティーンエイジャーにあるまじき格好で登校していたのだ。

お洒落に興味もなく、ひたすら楽器に熱を注いでいたのだが、こんなブサイクな私に好かれているなんて申し訳なく、先輩に片思いし続けて、結局告白も何もせずに、卒業していく先輩を送り出した。

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大学生になった私は、さすがに自分の見た目をどうにかしなければ、と思い立ち、ダイエットし15kgの減量に成功し、コンタクトにした上で、メガネもお洒落なデザインのものに新調した。健康的な生活を送るよう心がけてスキンケアも入念におこなうようになったらニキビも消えてなくなった。

かくして、ここに絶世の美女が誕生した、となれば良いが、元がそこそこなので、そこそこなルックスに落ち着いた。それでもある程度の容姿になると、化粧や服装にも気をつかう甲斐が出てきて、高校生の私を知っている人間が見ると軽い衝撃を受ける程度には変貌を遂げた。

おかげさまで、人に恋し、その想いを伝えられるようになったので、大学生になってから好きになった人には、わりと積極的に気持ちを告白してきた。
もちろん玉砕する事もあれば、受け止めてくれる事もあったが、片思いのまま静かに恋を終わらせる事はなかったのだ。

だから、その先輩にだけ、片思いし続けて、結局まだ想いを伝えられていない事になる。

もうそんな昔の事、とうに忘れて、片思いの気持ちもすっかり消えてしまったいるはずだった。

はずだったが、そういう、いわゆる「甘酸っぱい思い出」というのは、やたらと美化されるようで、10年以上ぶりに再会し、あまり変わっていない先輩の姿を見ると、あの頃の気持ちがよみがえってきてしまったような気がした。

ずっと片思いし続け、しかし自分に自信が無かったがゆえに告白できなかった私。
自信はある程度ついた。そしてまだ「好き」という気持ちが心の中にくすぶっている。

これを伝えずに、どうやって次の恋へ進むことができようか。

などと考えてしまっている。

一方で、半分やけっぱちで始めたマッチングサイトで「良いかも」と思った相手からはアプローチが止まない。

一旦はっきりと「結婚を前提に付き合ってほしい」と言われて、しかしまだ出会って2週間足らずで自分の気持ちがまだ分からないから、と待ってもらっている。こちらも、ずるずる待たせるわけにいかず、1ヶ月考えさせてくれ、と言ってある。

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猶予は1ヶ月。
この1ヶ月で、自分の気持ちと向き合って、どうするのか、どうしたいのか、決めなければならない。

親友からの「あんたは自分が好きになった人じゃないと」という言葉。
高校1年生から、2年間、胸に秘め続けた恋心。

条件は文句なしで決して悪いところのない求婚者。
シャイで、私がちょっと好意があるのを見せても何も反応のない先輩。

しかも、先輩の仕事の詳細や価値観や、どう生きたいのか、結婚観や人生観、そもそも結婚願望があるのか、など、そんな事も知らず、なんとなく単刀直入に聞きにくく、果たして上手い事両思いになれても、結婚相手になってくれるのか、またその段階で破綻するのではないか、などうじうじと悩んでしまう。

私は、ダメだな。

苦笑して、人生を決められず路頭に迷う自分を嘆く。

どこかで「とりあえず先輩に告白して、上手くいかなきゃそれで、求婚者の方にいけば良いじゃん」という声が聞こえている。
でもなんとなく、それは失礼な気がして、逃げ道を作っているような気もして、嫌だった。

たまたまタイムリーに、待ってもらっている1ヶ月の間に吹奏楽団の演奏会があり、打ち上げの帰り道に、偶然先輩と2人きりになった。
想いを伝えようかどうしようか別れる直前まで迷っていたが、よし、言おう!と心に決める前に勝手に言葉がこぼれた。

「私は、先輩が、好きだ」

へ?という顔でこちらを見る先輩。

「あら、お気づきでなかった?」
言ってしまってから、微かに後悔しながらも、告白してしまったものは仕方無いと、流れに身を任せる事にした。

「いや、全然」

「うそ、鈍すぎです、先輩」

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先輩は本当にシャイで、彼女がいたという話は一度も聞いた事がなかった。
シャイというか、奥手なのだ。

醜男というわけではないが、ハンサムでもないので、アタックする女性もいなかったようで、年齢イコール彼女無し歴と、割とあけっぴろげに言いふらしていた。

「そんなのとは全然縁が無いと思ってたんで・・・」
と口ごもって、動揺する先輩を見て、頼りないけどやっぱり好きだ、と確信する。

「もう12年越しですよ。高校生の頃からずっと好きだったんですけど、あの頃は自分に全然自信がなくて、今はあるかと言われれば、そんな事はないけど、好きな人に好きって言えるまでには成長したんで!」

そう言うと「オレは全然ダメだなぁ」と泣きそうな顔になる。

「嫌じゃなければ、付き合ってみません?」

「ちょっと考えさせてほしい、かも」

「オッケーです。待ってますので」

そして、その日は解散し、私は待つことにした。
と、同時に、求婚してくれている彼に、正直に事情を話し、断った。

後悔はまったく無かった。
どうせ、好きと思えない相手と一緒になっても私はフラフラ道を外してしまいます。

やはし、私は、私が惚れた男にしか一途になれない。
受け身な恋愛は上手くいかない。

片思いを胸に永遠にしまい続ける事など、どだい不可能な事。
そう、私は、それでいい。
後悔の塵を気にしないで生きられるような人間ではないのだ。

先輩からの答えが、例えNOであっても、私は後悔しないだろう。
気持ちをぶつけて、もし可能性があるのならばアタックし続けて、振り向かせてみせる。
それでもダメならきっぱりと諦めて、心から好きと思える人を新たに探そう。

そう、一人で佇む駅のホームで心に誓った。

と、同時に高校時代の甘酸っぱい片思いの感情が再び私を包んで、なんともなしに、口角が上がってはにかんでしまった。くすぐったいような、ドキドキするような、そんな照れくさい気分を、私は十代に戻ったかのように大切に噛み締めた。

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