恋愛小説

地味な私でも恋したい~短編恋愛小説


誰も私のことなんて見向きもしない。私は空気。存在しない。そう言われてる気分になる。

(笹野結香)「美音、あんた今日、一段と地味よ、少しは美に意識持ったら?」

笹野結香。幼稚園の頃からの縁。幼なじみ。ゆる巻きパーマに落ち着いた色の茶色の髪。透き通った白い肌。私とは真逆だ。

私は坂道美音。地味で目立たない性格。黒い髪に黒縁メガネ。


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(坂道美音)「結香は可愛いからそんなこと言えるんだよ」

結香は大きなため息をついた。

(笹野結香)「またそういう事言って。自分が変わろうと思えば誰だって変われるよ?」

(黒峰優雅)「何?何の話ー?」

(笹野結香)「話し中に入ってこないでよ、黒峰くん」

黒峰優雅。誰にでも話しかけちゃうタイプみたい。茶髪にゆるパーマ。身長高くて、スタイルよくてモデルみたい。

(黒峰優雅)「いいじゃん!もしかしてまた美音ちゃんの話?」

(笹野結香)「そうだけどそれが何?」

(黒峰優雅)「兄貴にさ、美音ちゃんの話したら、会いたいって言っててさ、美音ちゃん会わない?」

(坂道美音)「嫌だ」

(笹野結香)「あはは、即答!さすが美音!」

(黒峰優雅)「カットモデル、お金ははずむからさ」

お兄さんは美容師さん。前に言ってた。お金…

(坂道美音)「お金…」

(笹野結香)「おー、ゆれてる、美音がゆれてる!お金で!あはは!」

お腹を抱えて笑う結香。

(所沢隆)「やれ、そのうっとうしい前髪切れ」

(黒峰優雅)「お、隆もそう思うよな!」

所沢隆。クールでグレーの髪に金色のメッシュ。所沢くんも身長が高く、がたいが良い。

(所沢隆)「美音、やってもらえ、綺麗になったお前見たい。」

(笹野結香)「恥ずかしいことをさらりと言われてるよ、美音」

(坂道美音)「私に聞かれても…」

(里野春斗)「結香、おはよ。」

(笹野結香)「あ、おはよ。春斗」

里野春斗。結香の彼氏。爽やかで優しい、サラサラの黒髪が新鮮。

(坂道美音)「おはよう、春斗くん」

(里野春斗)「おはよう、美音ちゃん」

にっこり笑うと目が優しくなる。春斗くん…好き。

(里野春斗)「なんの話してたの?」

(笹野結香)「カットモデル、美音やらないかって話してたの」

(里野春斗)「そうなの?前髪もだいぶ伸びてきたし、気分転換に切ってもらったら?きっと可愛くなると思うよ?」

本気で思ってる?でも嬉しく思ってしまうのは好きになってしまった私が悪い。

(坂道美音)「私…やる」

(黒峰優雅)「お、じゃぁ早速、今日放課後良いか?」

(坂道美音)「うん」

(所沢隆)「俺も行く」

(黒峰優雅)「隆、何言ってんだよ、ま、いっか。カットとカラーとパーマだけどいい?大丈夫?」

(坂道美音)「パーマもかけるの?」

(黒峰優雅)「うん、でも、軽くだと思うから、初めて?」

(坂道美音)「…うん」

(黒峰優雅)「そっか、でも手入れ結構簡単だから安心して?」

(坂道美音)「うん、分かった」

(笹野結香)「気になるけど、私たちデートだから明日ね」

デート…

(所沢隆)「美音、俺がいる」

まっすぐな瞳が私を映す。私の気持ち気づいてる…?

(坂道美音)「ありがとう、所沢くん」

彼はそのあと何も言わなかったけど、ただ私を見つめていた。

放課後

(黒峰優雅)「美音ちゃん、準備良い?」

(坂道美音)「あ、うん」

緊張する。美容院なんて何年ぶりだろう。

(所沢隆)「俺車呼んだ」

(黒峰優雅)「あー、隆お坊ちゃまだったね、車で行けるって楽だね」

(坂道美音)「うん、そうだね」

グレーの髪をかき上げる仕草に目が離せなかった。揺れる金色のメッシュ。…色っぽい。

(所沢隆)「美音ならいつでも車出す」

(坂道美音)「ふふ、ありがとう」

2人は突然静かになった。何も言わず私を見て固まった。

そして視線をずらしてから

(黒峰優雅)「ずるい…今の顔されたら冷静じゃいられなくなるじゃん」

(坂道美音)「え?」

(黒峰優雅)「美音ちゃんはしらなくていいよ、そろそろ行こう。遅れると兄貴にグチグチ言われる」

苦笑いを浮かべる黒峰くん。

(坂道美音)「うん、行こう」

美容院

カラン

(店員)「いらっしゃいませー…あ、優雅くん!久しぶり!友希くん呼んでくるね」

(黒峰優雅)「ありがとうございます」

(店員)「友希さーん!優雅くん来てますよー!」

(友希)「お、来たか。…君が美音ちゃん?」

(坂道美音)「あ、はい」

(友希)「やりがいあるなぁー。2人はそっちで待ってて、美音ちゃんはこっち」

(坂道美音)「はい」

お洒落な美容室…。

(友希)「綺麗な髪質だね、切るのもったいないくらい。でも前髪は揃えないとだな。髪型一つで雰囲気全然変わるよ、カットモデルとしてお願いしたから俺のイメージでカットしていくけどいい?」

(坂道美音)「はい」

可愛くなりたい。春斗くんに見てほしい…。そして新しい恋をしたい、きっかけが欲しかった。綺麗になりたい。

(友希)「美音ちゃん恋してるでしょ?」

(坂道美音)「え…はい」

(友希)「女性はいくらでもきれいになれる。もちろん美音ちゃんもね」

頑張りたい。良いきっかけかもしれない。私が変われるきっかけ。

パサ…パサ髪が床に落ちていく。くるくる髪を巻かれていく。ペタペタ髪を染められていく。

数時間後

(友希)「はい、お疲れ様。とっても似合ってるよ。写真撮らせてね、すぐ終わるから。」

(店員)「リラックスしてくださいね~」

(友希)「笑顔、笑顔」

(坂道美音)「は、はい」

何度か取り直してやっと終わった…。確認して見た。これが私?眉毛あたりで揃えられた前髪。ピンクブラウンの髪色。腰まであった髪は胸元までになりしっかり内巻きパーマ。待っていた二人の元へ向かった。

(黒峰優雅)「美音ちゃん…可愛い予想以上に」

(所沢隆)「良い」

(坂道美音)「なんか、恥ずかしい」

(友希)「美音ちゃん、メイクしたことある?」

(坂道美音)「ないです」

(友希)「ちょっとメイクしてあげてー」

(店員)「はーい!ナチュラルメイクなら誰でも出来るので教えますね」

(店員)「肌綺麗ですね、メイクしがいがありますね、ふふ。ピンクのアイシャドウと黒のアイライナー、マスカラとピンクのリップ、オレンジのチーク、これだけでずいぶん変わりますよ。じゃぁ始めますね」

不思議、皆こんなことしてるんだ。

(店員)「はい、終わりました!お疲れさまでした。」

(友希)「それ、プレゼントしてあげてー」

(坂道美音)「え?」

(店員)「はーい。じゃぁ袋にまとめますね。…はい、アイラインは最初は難しいかもしれないけどなれたら簡単なので練習してみてくださいね」

(坂道美音)「はい、ありがとうございます」

(友希)「今度はカットモデルじゃなく個人的に来てね。」

(坂道美音)「はい、来ます。ありがとうございました。」

美容院をあとにして、ドーナツを食べに行くことになった。

(黒峰優雅)「美音ちゃん甘いもの好きなんだね」

(坂道美音)「うん、特にドーナツは大好き!」

口元が緩む。すると黒峰くんの頬が赤く染まり、茶色のふわふわの髪をわしゃわしゃとかき乱した。

(黒峰優雅)「なんか、ずるい」

急にどうしたんだろう…

(所沢隆)「俺の分も食うか?」

(坂道美音)「もしかして甘いもの苦手だった?」

(所沢隆)「いや…今日はそう言う気分じゃないだけだ」

きっと私に合わせてくれてたんだろうな…。

(坂道美音)「ふふありがとう。いただきます」

(所沢隆)「お前は気が利く良い女だ」

何気ない話をして笑って楽しい時間を過ごした。

(坂道美音)「ちょっとトイレ行ってくる」

トイレ行って戻ろうとしたとき。

(男)「ねぇ君、可愛いね!ひとり?一緒にどこかに遊びに行かない?」

始めて知らない人に声かけられた。どうしよう…。

(坂道美音)「あ、あの友達待ってるのですみません」

(男)「いいじゃん!あとで謝ってさ、ぬけだそう?」

どうしたらいいの?

(所沢隆)「俺の女に何かようか?」

(黒峰優雅)「嫌がってるでしょ、俺達の大切な子なんだけど、喧嘩売ってるの?」

(男)「何だよ、男連れかよ」

そう言って去っていった。

(坂道美音)「二人ともありがとう」

(所沢隆)「これから心配だ」

(黒峰優雅)「うん、そうだね。美音ちゃん彼氏作る気ない?」

(坂道美音)「え?彼氏?」

(所沢隆)「好きな奴でもいるのか」

好きな人…

(坂道美音)「…いる。叶わない夢だけど。」

うつむく私に所沢くんが私の顎を持ち、上に持ち上げた。

(所沢隆)「人を好きになるのは自由だ。恥じることはない。」

涙がこぼれた。否定されると思った。良いんだ。好きでいても良かったんだ。緊張の糸が切れたかのように涙が止まらない。

(黒峰優雅)「ずっと苦しかったんだね…もう大丈夫だよ。俺がいる…俺たちがいる。」

そう言って頬に残った涙を親指で拭った。所沢くんは優しく頭に手をおいた。2人の温もりを感じた。


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翌朝

学校

何だろう…クラス中がざわついているきがする。

(笹野結香)「美音!可愛いじゃない!メイクもしてるの?メガネは?」

(坂道美音)「うん、練習してメイクした、あと、コンタクトに変えたの変じゃない?」

(笹野結香)「変じゃないよ!可愛いよ!」

良かった…頑張って練習したかいがあった。

(里野春斗)「美音ちゃん?」

春斗くん…

(坂道美音)「春斗くん、話があるのちょっといい?」

(里野春斗)「あ、うんいいよ」

(坂道美音)「結香…」

(笹野結香)「いいよ、かしてあげる」

校舎の裏庭まで来た。

(坂道美音)「春斗くん、好きでした。…ずっと前から」

目を見開いて驚いた春斗くん。

でも、そのあと優しい顔をして

(里野春斗)「ありがとう、でも、結香が一番大切だからごめんね」と言った。

(坂道美音)「うん、こちらこそありがとう、これで新しい恋ができる。これからも結香を大切にしてね」

教室に戻り、結香の元へ向かった。彼女は私に気づき真っ直ぐ私を見つめた。

(坂道美音)「結香、春斗くんに告白した。ごめん」

(笹野結香)「美音が春斗のこと好きだったこと知ってた。知ってて私、春斗と付き合った。私、美音を攻めるしかくないの…」

(坂道美音)「でも、お互い好きで付き合ったんでしょ?」

(笹野結香)「うん」

(坂道美音)「両想いには適わないもの。私、新しい恋見つける。結香達以上にラブラブな日常を過ごすよ。ふふ」

(笹野結香)「美音ならきっと叶うよ」

(所沢隆)「俺がいるだろ」

(黒峰優雅)「俺でしょ?」

いつの間にか側に2人がいて驚いた。

2人からは優しさが溢れている。ずっとずっと春斗くんしか見てこなかったから気づかなかったけど、これからはきっとときめいたり、ちょっとした仕草にドキドキしたりするだろう。

(笹野結香)「目の前に2人もいるんだからどっちかと付き合っちゃえばいいのに」

(坂道美音)「え?」

(所沢隆)「俺を選べ」

(黒峰優雅)「俺を選んで」

2人が見つめてくる…。2人とも魅力的。でも今はよく分からない。時間が欲しい。

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あれから数日後。

(男子生徒)「坂道美音さんですよね?」

トイレから出て教室へ戻る途中声をかけられた。

(坂道美音)「はい、そうですけど…」

(男子生徒)「やっぱり!一緒に写メとっても良いですか?」

突然何…。

(黒峰優雅)「ごめんね、俺のお姫様だから、それはちょっと止めてくれる?」

(男子生徒)「す、すみません」

走って行っちゃった。

(黒峰優雅)「俺にも責任感じるなぁ。」

(坂道美音)「え?」

(黒峰優雅)「カットモデル、美音ちゃんと距離縮められるチャンスだと思ったんだけど、予想外なことおきてちょっと後悔。」

そう言って茶色の髪を無造作にかいた。

(坂道美音)「私は前向きになれたよ。綺麗になる楽しさを知ったのも黒峰くんのおかげだよ、感謝してる。ありがとう」

(黒峰優雅)「…美音ちゃんよく笑うようになったよね」

(坂道美音)「そうかな?」

あまり意識したことなかった。

(黒峰優雅)「自然と笑えてるんだね」

目を細めて微笑む彼。あ…そっと手を伸ばし髪に触れた。

(黒峰優雅)「…え?」

(坂道美音)「髪の毛跳ねてた、ふふ。やっぱりこうやって笑えるのは黒峰くんのおかげだね」

すると突然ふわりと香水の香りと同時に温もりに包まれた。抱きしめられてる…?周りの生徒達がざわつき始めている。

(黒峰優雅)「俺だけの物にしたい…美音ちゃん好き。本気だよ、俺と付き合って」

(坂道美音)「ご、ごめん…すぐには返事できない」

(黒峰優雅)「そうだよね、じゃぁ明日返事待ってる。」

そう言って背を向けて歩いていった。

初めての告白…

教室へ戻った。

(笹野結香)「美音!黒峰くんと抱き合ったんだって?!噂になってるわよ」

(坂道美音)「え?…抱きしめられたけど、抱き合ってはいないよ」

(笹野結香)「似たようなもんでしょ…まぁどうせ告白でもされたんでしょ?黒峰くん、優しいし大切にしてくれるんじゃない?」

(坂道美音)「うん…」

(所沢隆)「俺は認めない」

いつまにか私の隣に所沢くんが立っていた。

(坂道美音)「所沢くん?」

(所沢隆)「俺の気持ちはどうなる、俺だってお前が好きだ。誰かのものになるなんて考えたくない。俺を見ろ、俺だけを見ろ美音」

真っ直ぐな瞳。吸い込まれそうな瞳。鼓動が速まるのを感じる。所沢くんはいつでもまっすぐだ。きっとあやふやは嫌いで、嘘も嫌い。自分に素直なんだろうな。

でも私は…2人に好かれるような人間じゃない。自分に自信ないし、特別可愛いわけでもない…。どうして私なの?

翌朝

私は黒峰くんを屋上に呼び出した。

扉が開く音がして振り向くと

(坂道美音)「何で…」

黒峰くんじゃなく…所沢くんが立っていた。

(所沢隆)「美音?」

所沢くんも驚いている様子だった。そこに…

(黒峰優雅)「隆?…そういうことか…俺振られたんだね、でもこんな振り方さすがにきつい…」

(坂道美音)「待って!違うの!」

追いかけようとした。でも私の手首を所沢くんが掴んだ。

(坂道美音)「放して!」

(所沢隆)「嫌だ、行かせたくない。あいつを選ぶのか?」

何でそんな顔する…。

私はどちらも傷つけたくない…だからどちらも選ばない。そう決めたの。私の気持ちは閉じこめるって決めたの。でも苦しい。こんな感情、初めて。胸が苦しくてもやもやして泣きたくなる。何、この感情…。

(所沢隆)「泣くほど俺といるのが嫌か」

気がついたら泣いていた…。

(坂道美音)「私は!どっちも好きじゃない!黒峰くんも!所沢くんも!好きじゃない!私は誰も好きじゃない!」

(所沢隆)「美音、落ち着け。攻めてるわけじゃない」

(坂道美音)「皆大嫌い!…そんな私自身も…お願い1人にして」

(所沢隆)「わかった」

静かになった屋上で私は声を上げて泣いた。どうしていいか分からない。言葉にできない分を涙に変えた。そろそろ帰ろうと階段を下りようとしたとき階段を踏み外した…。女子の悲鳴が遠く聞こえる。痛さで動けない。転がり落ちた?…眠たい…。意識が遠のくなか、ふわりと身体が浮いた気がした。

つーんと薬品の臭いがする。目を開くと病院?

(笹野結香)「美音!大丈夫?!」

(坂道美音)「結香?痛っ」

(笹野結香)「バカ!階段から落ちるなんて…黒峰くんがいったん保健室まで運んでくれたんだよ」

え?黒峰くんが?

(笹野結香)「さっきまでいたんだけど…、所沢くんも」

(坂道美音)「え?」

(笹野結香)「俺のせいだって言ってた、そしたら、黒峰くん所沢くん殴って…あ、美音!どこ行くの?」

(坂道美音)「2人のとこ!」

体中痛い…でも今2人に会いたい。伝えたいことがある。…居た。待合室。2人とも居た。

(坂道美音)「黒峰くん!所沢くん!」

(黒峰優雅)「美音ちゃん!」

(所沢隆)「美音!」

(坂道美音)「2人に伝えたいことがあるの。
       私2人のおかげて変われた!笑えるようになった!毎日が楽しくなったよ!最高の友達ができたと思った。
       でも特別な感情も生まれた…
       所沢くん。いつも真っ直ぐで嘘が無くて温かくて…好きだよ。
       黒峰くん、ごめんなさい…でも自分に嘘はつきたくなかったの」

(黒峰優雅)「何となくそんな気はしてたよ。でもこれからも友達だからね」

(坂道美音)「うん…ありがとう」

黒峰くんはやっぱり優しい。

(所沢隆)「大切にする美音。俺の彼女になって」

(坂道美音)「うん!なる!」

不器用な恋かもしれない。

地味な私が恋をしました。


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