恋愛・結婚SS

結婚の縁の不思議~恋愛ショートストーリー


待てど待てども運命の王子様は現れず、そんな言い方すると自分はシンデレラコンプレックスと公言しているような自己嫌悪に陥り、運が無いのか、自分に問題があるのか、タイミングがまだ来ないのか、分からなくなってくる。

これが、35歳を過ぎると、もう本当に顕著で。
このあたりがボーダーなんじゃないかと、思っている。

30歳のボーダーラインなんてもはや可愛いもの。
まだアラサーと呼べる、28~32歳ぐらいなら、同じようなもので、実際独身のまま30代に突入した時には彼氏もいなかった女性がどこで出会うのか、どんどん結婚していく。

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しかし30すぎのラッシュはせいぜい34歳ぐらいまで、だろうか。
35歳あたりを境に、いいかげん身を落ち着けようとする女性と、突き抜けたように独身を謳歌する女性に二分するような気がする。

気がするだけで、私の感触なのだけれど。

独身を貫くと決めて、自由に恋愛を楽しむ人もいれば、恋や愛からは遠ざかってしまう人もいる。

私は後者だった。もう36歳になり、運命の相手にも巡り会えず、小さなワンルームマンションでひっそりと暮らす日々。結婚願望なんて、どこかに置き忘れたような、そんな気さえしていたが、それでも、ふとがらんどうの真っ暗な部屋で電気をつけると、この暗い部屋を明るくするのは私しかいないんだ、と無性に寂しくなった。

蛍光灯の光は冷たい。独り身には沁みる。

結婚は縁とタイミング、とは本当に耳にタコができるくらい色々な人に聞かされ、恋人がいても別れてしまった時には、タイミングが合わなかっただけ、と自分に言い聞かせてきた。

しかし最後の恋人と別れて早3年、その後、縁は無い。

もう少し言うと、出会いも、無い。

それなりに婚活とやらにも参加してみたものの、この人!という人に巡り会わずに、結局独り身のまま。
それでも、このままずっと独りか、と思うと、どうしようもない不安に襲われて、何かしないと、と焦るのだった。

どうしても「可能性」を断ち切ることができずに、だらだらと登録したままにしていた婚活エージェントの主催する婚活パーティーに参加してみる事にして、大して期待していない自分に気付いて苦笑いしながらも、気晴らしのつもりで出かけた。

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そのパーティーは、35歳以上55歳未満の年齢層が集まる、ターゲットの年齢を絞ったものだった。

女性は35歳を過ぎると本当に貰い手が少なくなるという。
確かに、普通に恋愛するわけではなく、知らない者同士で初めて出会って、20代の男の子と35歳の女性が恋仲になるのは、なかなかにハードルが高い。まして結婚という2文字が頭にちらついたら、なおさらだろう。

今回は女性が35~50歳、男性が35~55歳というしばりで集められたパーティーだったので、私はその中ではかなり若かった。

女性も男性も40代が目立っていた。

中には「え、この人が独身!?」と目を疑うようなルックスの方や、「30歳そこそこにしか見えない」という若々しい方もいて、しかし人生色々で、子持ちバツイチさんなども参加していたので、様々な背景をもった人が参加していたのだろう。

50代の方は流石に…と思っていたのだが、男性の参加率は高く、しかも50代にはとても見えない方が多かった。独身でのびのび自由に過ごしていると老けにくいのだろうか。

落ち着いた大人たちの集まりだった事もあり、始終なごやかに時が流れていた。

私も何名かの男性と話したが、なかなか良い印象だった。逆に「なぜこの人は独身なんだろう」と探りを入れたくなってしまう。それは、きっと皆が互いの事をそう思っているんだろうな、とも思い、それは皆がそう思っているらしく、割と積極的に「なぜ自分が独り身か」を語る人もいた。

そんな中に、妻に先立たれてしまって、と話してくれた46歳の男性がいて、彼は私に「どこか雰囲気が似ている」と言った。

「すみません、こんな場で前の妻の話なんてすべきではないのに…」と慌てて謝る姿が実直で、思わず「いえいえ、こんな素敵な方の奥様に似ているなんて、光栄です」と返してしまった。その時は気を遣ってとっさにそんな事を言ってしまったのだが、私のフォローを聞いて照れて恐縮している彼は、10歳も年上とは思えないくらい青年のような印象だった。

奥様が亡くなって6年、あまりにも塞ぎ込むのを心配した、彼の兄と娘が、婚活をしろとしきりに勧めたらしく、最初は乗り気ではなかったが、家族を心配させるのも…と思い、参加したのだそうだ。

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私としては、その似ている奥様と比べられても困るし、10歳も年上だし、悪い気はしなかったけれど、何も無いだろうな、と思っていた。

それでも近くで話していた上に、なんだかんだ会話が弾んでしまい、色々と話題は移っていき、共通の趣味がある事が分かった。

それは、スキー。

私は毎年冬になるといそいそして、雪山に行きたくなるのだ。父がスノースポーツ好きで、小さい頃からよく連れていってもらっては親子で滑った。母もたまに同行したが、年に1回ぐらいで良いわ、と言って留守番している事も多かった。

私の趣味がスキーだと知って、彼の顔が輝いた。

「本当ですか?実は私もこう見えて、昔インストラクターをしていたんです」

それからスキーの話で一気に距離が近くなった。
それまで柔和そうではあったけれど、どこか上の空のような、一歩引いたような、そんな雰囲気だった彼に急に活気が戻ってきたようだった。

私は毎年仲の良い少人数のグループでスキー旅行を計画するのが楽しみだったのだが、今年はたまたま都合が合いそうになく、どうしようか、やめようか、一人でも行こうか、と考えあぐねていたので「今年もどちらかへ行かれるんですか?」という質問に、素直に「かくかくしかじかで、どうしようかと思っているんです」と答えてしまった。

「では、もし良ければ一緒に行きませんか?」

その誘いに、一瞬迷ってしまったものの、「あ、別にデートしましょうとかではなく、私も最近は一緒に行ってくれる人が居なくて、めっきり雪山から遠のいてしまっていたので」とすかさず続けて言ってくれたので「じゃあ…ぜひ」と誘いに乗る事にした。

奥さんもスキーしてたのかなぁ、亡くなってから行かなくなっちゃったのかなぁ、などと考えながらも、深く考えてもしょうがないと腹をくくり、1泊2日でスキーへ行く事にした。

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山のふもとのホテルを予約してくれたのは彼で、それぞれシングルルームで別の部屋を押さえてくれていた。
とことん真面目な人なんだなぁと感心してしまう。

スキー旅行は、とても楽しかった。

単純にスキーが楽しかったのはもちろん、流石もとインストラクターだけあって、色々な滑り方や、コツを教えてくれて、私の滑りが上達した。まさかこの歳にもなって腕が上がるなんて思ってもみなかったので、子どものようにはしゃいでしまった。

食事を一緒にして、お喋りも沢山した。彼と話していると、どこか安心するような、とても気が楽になるような、そんな気がした。彼も楽しそうに見えたが、つい、私の中に奥様の面影を見ているのではないかな、と思ってしまう。それが嫌なかんじでもなく、寂しかったり切なかったり、そういうわけでもなく、でもなんとなく澱のように胸に引っかかった。

彼の事を気にしてはいるのか、と思いながら、私が独りで気にしているのも変な話だと思い、あえて奥さんの話を振ってみる事にした。

「奥様とも、スキー、よく行かれたんですか?」

彼は一瞬驚いたような顔をしてから答えた。

「いや、妻は逆にスキーがダメで、一度も連れて行ったことはないんですよ。だから、あなたがスキーがお好きと聞いて、つい嬉しくなってしまって…」

あ、と合点がいった。
共通の趣味がスキーと分かった時、彼は何か言いかけたのだが、その言葉を飲み込んだのだ。

私の前で努めて奥さんの話をしないよう気を遣っての事だろう。

それに気付いた瞬間、彼の優しさが私の中にじんわりと広がって、何か特別な感情が湧いてきたような気がした。

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スキー旅行では、しかし特に何か進展があったわけでもなく、戻ってからも、しばらくやりとりを続けて何度か食事に行った。彼から連絡が来て私が乗る事が多かったけれど、どことなくお嬢さんかお兄さんがプッシュしているような、そんな雰囲気が漂っていた。

実際、彼の中にも迷いはあったのだろう。
揺れる心が手にとるように分かった。私も、彼を好きなのか、好きになって良いのか、仮に両想いになれたとして上手くやっていけるのか、同じように不安だった。

それでも、会うたびに次も会いたくなり、ずっと一緒にいたいな、と思うようになり始めていた。

ある日、彼が思い切った顔で、今度娘に会ってくれないか、と言いだした。
いきなりの展開に驚きながらも承諾し、彼の自宅にお邪魔することになった。

お嬢さんが出迎えてくれて、リビングに通されてまず目に入ったのが家族の写真だった。
奥さんは、顔立ちこそ私には似ていなかったが、確かに言われてみれば雰囲気というか、表情というか、分からなくもないような気もしつつ、変な気分だった。でも、やはり嫌な気はしなかったし、むしろ興味津々で眺めてしまった。

「それが妻なんだけど…」と口を開く彼を制するように、「ちょっと話がある」と言ってお嬢さんが父を追い出した。

お嬢さんはもう21歳で大学生。今は一人暮らしをしているが、今日のために実家に戻ってきたらしい。
とても良い子だった。私と15歳離れているので、娘という感覚はなく、妹のような感覚で接してしまったが、お嬢さんも「そうしてほしい」と言ってくれた。

「お父さん、リビングの家族写真やお母さんの写真、隠そうとしたんだけど、私が止めたの。お母さんの存在を受け入れてくれないような人じゃダメだよって言って、あえてそのままにしておいたの。ご不快な思いをさせてしまったらごめんなさい」

なんてできた子だろう。

私は決して不快な思いはしなかった事、むしろ興味がある事、ただ、彼が私と奥さんを比べて、失望してしまったらどうしよう、とだけ少し不安に思っている事を伝えた。

「あ、それは大丈夫。実際、お父さんはあなたの事を、ちゃんとお母さんとは別の女性として見てるよ。最初こそ雰囲気が似てると思ったんだろうけど、お母さん、スキーも嫌いだったし、話してみると全然違うもの。だからそこは大丈夫」

ユーブライド(youbride)で婚活・結婚。

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「雰囲気、やっぱり似てる?」

そう聞くと「うーん、確かに第一印象は。なんだろう、不思議だね。どことなく、ってかんじ」と返ってきた。

不思議なもので、実際は違う人間でも雰囲気が似る事があるのだろう。
それが2人の縁を取り持つきっかけになったのならば、この不思議な共通項に感謝しなければならない。

「あなたと出会ってから、お父さん、本当に生き生きしてきて楽しそうなの。お母さんも、きっとそれを望んでる。だから、これからも父をよろしくお願いします」

最後にお嬢さんにそう言われて、私は急激に安心した。
何か、心にひっかかっているものがスウッと解けたような、そんな感覚だった。

その後、彼も交えて暫く談笑し、家を後にした。
私はとても晴れやかな気分だった。

そしてそれからの彼も少し変わった。
きっとお嬢さんに背中を押されたのだろう。「迷い」が感じられなくなった。

ある時私は思い切って「奥さんの話、したい時にすれば良いからね。私はむしろ知りたいと思っているぐらいだし」と伝えた。
その時の彼の反応が予想外に大きくて、ずっと心に引っかかっていたんだな、と思った。
私のこのひと言も彼を安心させたのかもしれない。

それからほどなくして、プロポーズされた。
実直な彼らしく、ロマンチックとかサプライズとか、そんなものとは縁のない、堅苦しいプロポーズだったが、それが無性に嬉しかった。

私の両親を納得させるのに苦労したといえばしたが、もともと娘の結婚を諦めかけていたという事もあり、最終的には祝福してくれた。

私たちのキューピッドになってくれた彼のお嬢さんは、私の娘になるわけだが、最初に会った時よろしく、ずっと私の妹のような存在でいてほしいと伝えたし、お母さんの事はお母さんと呼び、私の事は名前で呼んでもらう事にした。何よりも、結婚の報告をした時に泣きながら喜んでくれたのが私にとっても嬉しかった。

お嬢さんと同じく彼の事を心配してあれやこれや世話をしていたお兄さんも、心から喜んでくれた。

運命の王子様という言葉は正直似合わず、「不思議な縁」という言葉の方がよほどしっくりくるこの出会い、人生なかなか捨てたもんじゃないな、と思いながら、温かな幸せに包まれている。

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